二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【カゲプロ】人間冷凍ショコラ【オリジナル】短編リク募集! ( No.94 )
日時: 2012/11/14 10:44
名前: noeru (ID: 9Nj1G85t)



昔何度も通った道が見えてきた。ここまで来ればもう少しだ。ふいに腕を強く引かれたような衝撃に引きずられて、再び0と1の世界に連れ戻される。身体は動かないけど、何故かアイツは追いかけてこない確信があった。眼の前を通り過ぎていく情景は見たことがあった。

酷く暑い夏の日。すれちがいそうになった価値観。私はその手を伸ばしてる。泣き叫びながら、必死にその手を握ろうとする。それは空を切って届かずに、風景は紅く染めあがる。


「———この夢も、悪くないかな。」


大嫌いだったその情景を前に、こんなに冷静になったのは初めてだろう。たとえ君が決まってそこから飛び降りてしまっても、君の笑顔を永遠に忘れないだろう。眼の前でいなくなった君を。だから……


「      」


口を開こうとした。でも誰かに手を掴まれる。驚いたけど、それが誰か見なくても解る。右手、左手、別の2人。いつも私の傍に居てくれた人が、私の手を優しく包んでくれる。涙が流れた。ずっと懺悔してきたのを、やっと許されたのだ。それでもまだ謝りたい。違う、私は———


「ありがとう……」



ふっと意識が戻った。ついさっきまで走っていた十字路に戻っている。アイツが追いかけて来ている。今度こそ軽くなった足で街を疾走する。もう追い付けない、追い付かせない。目を開く。赤くなっているだろうけど、気にしない。人間恐怖症だとか、そういうのも全部投げ捨てて走る。あの頃の私は自由になりたくて、無我夢中で走っていたんだ。でも今は楽しくて会いたくて走ってる。それが嬉しくて。

見えてきた。大好きなあの場所が。もうすぐ会える。同時にアイツが迫って来てる。案外チープな言葉が脳裏を掠めるのを捕まえて、振り返る。揺れる黒いコードが見えた。ニヤッと笑うと、アイツが動揺したのが手に取るように分かった。


「ほら、お前が望んだ合言葉だろ?」


視線を戻せばすぐそこに見える。少しだけ、前を向ける。


「残念だったね、ユウキ。」



‐GAME OVER‐


もうそれは、すぐそこに。