二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【魔法少女】嗚呼、きっとそれは【まどか☆マギカ】 ( No.47 )
- 日時: 2013/06/11 12:46
- 名前: おなかへった ◆scEpNWmRjQ (ID: TI5XYu0n)
ホームルームの終わりは、授業の始まりでもある。
幾ら天気が良くても、嫌いな教科がなくても、生徒の殆どは憂鬱に感じるこの時間。必ず学生に付き纏う学問の時間。しかし今日は生徒の中に若干の期待が入り混じっていた。
そうさせているのは暁美ほむらという一人の存在だった。謎に包まれている彼女がどのような人物なのか、能力はどれほどなのかが計り知れるからだ。たとえ黙々と授業に臨んでいたとしても真面目な美少女と噂されるだろうし、問題を当てられ発表をするときは尚更ほむらの知識を伺うことができる。
「——じゃあこの問題は暁美にといてもらおうか」
いよいよ明らかになる時が来た。来たのはいいものの、これでは分からないに等しかった。何せ問題が難解過ぎる。
見滝原中学校は比較的学力が高く、偏差値の高い高等学校へ数多くの生徒を輩出している。だからそれ相応のレベルの高い発展的なカリキュラムを組んでいるのだが、今回の数学の問題は誰もが解けそうもないものだった。
——可哀想だなあ。
誰しもがほむらに同情の視線を送った。転校初日から皆の前に立ち、赤っ恥をかかされるのだから、当然の反応だ。
(大丈夫かなぁ・・・・・・)
まどかも心配そうに、ほむらを見やっていた。
「はい」
当の彼女は最初と変わらないトーンで返事をし、ボードの前に立つ。そのまま微動だにせず、生徒も傍観を決め込み、教師の回答を待つだけかと思われたが。
クラスメイトと教師は、別の意味で彼女を見つめていた。
ペンを手に取った彼女は、淡々と、そして確実にホワイトボードを黒色で埋めていったのだ。動きには、戸惑いなど一切ない。、まるでそれを解りきっているように・・・・・・否、完全に理解し、次々と複雑な文字の羅列を表示させていたのだ。途中で手を止めることもなく、彼女は最後まで式を書いてゆく。
「・・・・・・これでよろしいでしょうか」
ほむら以外の人間は皆、そのまま絶句していたという。
彼女が秀でているのは、勉強面だけにとどまらなかった。学問を得意とするので苦手だと思われがちな体育も、難なくこなしていたのだ。前言撤回。難なく、と表すには語弊があるかもしれない。
体育の授業は陸上競技が行われた。一度目の授業であることから、最初は四つの種目——長距離・短距離走、走り高跳び、ハンドボール投げ、走り幅跳びをそれぞれ体験し、自分に見合った種目を選択して取り組むようだ。
その見極めのため、試しに記録を測ることになったのだが、ここでもまたほむらが人目を引いていた。
「次、暁美ほむらさん」
「はい」
呼応し、合図のために腕を上げたのは高跳びの記録を測るためだ。ほむらは綺麗な前傾姿勢で助走距離を駆け抜け、段々と加速していく。彼女の身長より高いバーに吸い込まれるように近づき、その距離も僅かとなったときに踏み切り、跳躍。背面をバーに向けて、黒髪を少しかすめながら宙に浮く。柔らかいマットレスに身を沈めたと同時に、女子生徒の黄色い声が一斉に湧いた。
「け、県内記録じゃないの・・・・・・?」
体育教師は顔を引きつらせ、驚愕の意を示していた。
「すごいですわね・・・・・・あんなに高いバーを容易に越してしまうだなんて」
「そう、だね・・・・・・」
次々と生徒がほむらの元に集まるのを、まどか達は一定の距離を置いて眺めていた。彼女らは卓越した身体能力を持つほむらには近寄りがたいようだ。
「・・・・・・」
人だかりの中心に存在する転校生がまどかに視線を投げる。それに気づいた本人は小さな声を上げながら、さやかを盾にするように後ろへと隠れた。
「それじゃ、今日はこれで授業を終わりまーす」
時を重ねると共に、明白になるほむらの姿。本日あらわとなった事実は少なかったが、これだけははっきりと言えよう。
暁美ほむらという少女は、正に文武両道と称するに相応しい、と。