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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ギルティクラウン-Everlasting every days- ( No.7 )
- 日時: 2012/11/05 20:52
- 名前: ウルフラム (ID: zx5jjBXL)
「ピーッ」
歌い手の声色に耳を済ませていると、突如として右耳のイヤホンから奇妙な電子音が流れ出し、静かな歌声がかき消される。
「うっ…。……何だろ。調子悪いのかな、このイヤホン…」
このイヤホンのタイプは、右耳のみに着装するものであり、左耳のイヤホンとの併用が出来ず、片方のイヤホンに異常がでても、もう片方のやつで聴こう。とはいかないタイプとなっている。
そのため集は仕方なく、義手の右手で右耳のイヤホンを外し、端に出っ張る電源スイッチを押し、ONからOFFに変更する。
義手の手探りでスボンのポケットを見つけ、それを適当にその中に。
顔を海辺があるであろう場所に向け、大きく深呼吸する。
視界にはなにも映らない。
しかし、そのことに関して後悔など毛頭していないし、それよりか感謝さえしている。
あの時、最期に彼女が残してくれた「罪」を自分が背負うことが出来た。ウイルスにより体がキャンサー化され、視界が真っ暗になってもなお、自分を想い、守り、信じてくれていて、自分に言葉を伝えてくれ、自分の傍に居てくれ、そして今でも居続けてくれている。
そんなことを考えていると、海辺から吹きつける心地よい海風や、草木が揺らめく音を感じるだけで、自然と頭の中にその風景が具現化される。
「さてと…。行こうか…、母さんのとこに」
集はベンチにかけているであろう愛用の白杖を義手の右手で取り、それに重心を乗せてすっとベンチから立ち上がる。
家までゆっくり行こうか。
何せ、時間なら幾らでもある。
あの時とは、違うんだから。
集は白杖で海辺に設置されている柵まで一、二歩で歩くと、杖を持っていない左の手で、太陽に照らされた黒光りする柵をつたい、次なる一歩を踏み出した。
これからの
更なる罪へと。
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