二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ギルティクラウン-Everlasting every days- ( No.10 )
日時: 2012/11/08 07:12
名前: ウルフラム (ID: QxIgp5vM)





「コッ、コッ、コッ」


眩しすぎない太陽の影響からか、アスファルトが微かに灰色に光る。
集はその上で白杖を小刻みに上下させ、自分の今現在いる位置を確認しながら、歩く。
その歩幅は、4、5年前に初めて目から光を失った時よりは桁違いに広くなってはいるものの、以前のように、王の力を持っていたあの時よりは、速度は緩やかだった。
しかし、あの時と比べて今は、しっかりと歩みを地面につけることが出来る。昔のように弱腰ではなく、しっかりと。


「そろそろ、着いたかな」

集の目の前には、見えるはずの高層マンションが存在するが、今は見えない。

いつも落ちつくために行くことが多いあの海辺のベンチから、春夏とともに住むマンションまで、ざっと1時間程度。昔はこんな短い距離は、歩いて10分もあれば済む話であったが、目から光を失った当初は、歩くことすらままならなく、50m進むのでも30分も時間を費やしてしまっていたことが多かった。しかし春夏と一緒に毎日毎日、歩を進める練習をしたおかげで、最初は30分も費やした時間を今は1分もかからず進むことができる。3年程前までは春夏と一緒でないと歩くことの恐怖心が起き、前に進めなかった。しかし、今となっては、春夏が自分の時間を割いてまで集が歩く事が出来るよう手伝ってくれたし、颯太達も歩く練習に何度か参加してくれこともあり、誰かが傍に居なくても、歩くことに、迷いはない。

「…………」

集は自分の足があるであろう場所に盲目の目を向け、下唇を噛む。


それでも。
傍に誰かがいないとしても。
自分を信じ、愛してくれた人にはずっと。





そばにいて……、ほしかった。


集は顔を元のように前方向へ向け、マンションに設置されているエレベーターまでの黄色い補助ブロックに白杖を叩きながら、更に前へと進んだ。