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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ギルティクラウン-Everlasting every days- ( No.16 )
- 日時: 2012/11/14 07:13
- 名前: ウルフラム (ID: rc1iwi.s)
「そっちの書類、「上」に提出しといて。今日中に、宜しく頼むよ」
男の上司から命令が部下の一人である春夏に届く。
つい先程まで科学者としての仕事を身を粉にしてやっていただけあり、この上司に対して春夏が多少なりとも苛立たない術はなかった。また、彼が自分よりも年下、おおよそ30代前半ということもそれに重なり、春夏は苦笑いし、右の頬を引き攣らせながら承諾の言葉を述べる。
「は、は〜い……」
春夏は半ば渋々、上司のデスクの端っこに置いてある100枚程度の書類の束を両手で一気に持ち上げる。
彼が技術部で女性である春夏を荷物運び係に無理やり利用し、他の男性社員を利用しない理由は幾つか思い当たるが、一番は春夏自身の異例中の異例と言うべき昇進であるだろう。
シンクタンク(研究所)としての役割が多い企業であるロストでは、シンクタンクの中では珍しくフェローや、主幹研究員などの役職は存在せず、通常の次長課長といったようなものが、それとして採用されている。現在、春夏は班長という役職に区分されていて、さっきの上司が課長代理、という役職であった。彼が10数年かけてやっと掴んだ上司としての地位が、まだまだ一年目のただ綺麗というだけで取締役からの厚意を受けている新米の春夏に抜かされてしまうかもしれないとなると、苛立ちを覚えるのも止む無しと言えるかもしれない。
言えるかもしれないのだが、
「雑用は、女性に押し付けるものじゃないでしょ。…全くっ……」
愚痴を言いながら歩くと、またややこしいことになる。
もう少し速足で、行きますか。
何事も問題なく、ある意味平穏な日常だった。
現在時刻、3時58分59秒を経過。
だが。
それ以上、ロスト本部内で、時計の針が時を刻むことは、皆無であった。
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