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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ギルティクラウン-Everlasting every days- ( No.33 )
- 日時: 2012/12/05 21:33
- 名前: ウルフラム (ID: mVHy..WT)
集は茶色の古風なセーターを着たまま、リビングのソファ付近にある縦長の服たてに手探りで左手を延ばし、黒単色の腰までのコートをガッチリと掌で掴むと、驚異的なスピードでそれを羽織り、リビングの白壁に手を当てながら玄関口へと急ぐ。
「うっ……、寒」
白杖を右手にはめ革靴を履きドアを開くと、秋終盤のこの季節には珍しく、黒コート越しにも伝わるような肌寒い風が吹いた。
「マフラーも…………。いや、これでいいか」
集は羽織っている黒コートを左手で軽くたなびかせ、ズボンのポケットに無造作に入っているある物に手を延ばし、それが在るということを手だけで確認すると、家の扉の方に向き直り、3秒間静止する。
現在では、もう既にコンピューターによる顔認識の扉の開け閉めと、アナログな鍵による開け閉めの併用は一般化されおり、集と春夏の住むこのマンションの一室でも、そのシステムが採用されている。集が盲目になってから、鍵穴に鍵を差し込むことによる扉の開け閉めが困難になって以来、春夏の提案により設置されたこのシステムのおかげで今となっては、春夏が傍についていなくても一人で外出できるようになり、なにより「自由」になったのが一番の感謝すべきことだったのかもしれない。
「ロックが……完了、しま、し、たガッーーーー……」
電子式の扉からエラー音が鳴り響く。そうして、静寂が訪れ。
「……………………前の鍵、持って来てよかった……」
集はそう今の状況を楽観視しながら、溜息を深くつき、扉の前から離れた。
次に帰れるのはいつ頃だろうか。
そう思いながら集は盲目ながらに、右足を大きく踏み出した。
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