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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ギルティクラウン-Everlasting every days- ( No.42 )
- 日時: 2012/12/26 22:08
- 名前: ウルフラム (ID: mVHy..WT)
午後4時17分29秒。
ハイテク化され、高速で走れるように改良された車椅子をツグミにやや強の強さで押されながら、篠宮綾瀬は自宅である海辺に接する高さ40階建ての高層マンションの前まで来ていた。所々の窓にはほんのりと明かりが灯っているが、辺りはまだ暗くなるにはじばし早く、少女達が連れ立って歩いていても申し分無い時間だった。
「ふーーーっ。……少しかかっちゃったね、時間。」
ツグミは自分の両手が握っている車椅子の取っ手から一度右手だけを放し、光沢のある長い黒髪のセットが壊れていないかどうか軽く指と指でクルクルとチェックしながら、上目で言った。
「うん」
それに綾瀬も微笑を浮かべながら端的に答える。しかし、その瞳はツグミを合わせてはおらず、眩しい西日で軽く照らされたアスファルトを静かに目視し、その顔はどこか物憂しげな、寂しそうな表情をしていたが、隣で髪のチェックをしているツグミには気付かれていない。
その事に綾瀬は一抹の安堵感を感じ、軽く溜息をつくが、表情は以前として、回復することはない。
「部屋、上がろっか……!綾姉ぇっ!」
髪のチェックが終わったのか、艶やかな黒髪をまたびかせて綾瀬の顔を覗き込ませている、笑顔のツグミが言う。
「そう、ね……」
綾瀬の視界殆どが、可愛らしい黒髪の丸顔で覆われ、一度目を丸くしたが、一枚咀嚼されることはなく、またもや両頬を微すかに横に引っ張りながら短く、答えただけだった。
ただそれでも、ツグミにとって綾瀬の今の心情を窺うのには、余りにも充分過ぎる程に、明白だった。
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