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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 風任せの青年 ( No.58 )
- 日時: 2013/05/30 20:27
- 名前: 盾無桃李 (ID: IZZB0RhE)
何気なくボーっと外を眺めていた。
見える物はアスファルトやコンクリートしかないが、内を見たってつまらないものだ。
黒々とした色しかない。
多分クロノエが届けてくれた大きいタオルを暑いが身にまとう。
今日はもう、蝉の声はしなかった。
っというか近くでは聞こえない。
遠い遠いどこかでは鳴いている。
そんな気がした。
俺ってこんなに寂しがり屋だったか?
何も無くなってぽっかり穴が開き、すきま風が幾度となく吹き荒れているような感覚だ。
せめて、元家族交流の場ではなく自室へ居よう。
そうすれば1人なのは当たり前だ。
ゆっくり身体を起こして立ち上がった。
二階へと足を運んだ。
階段はギシッギシッといやな音を立てた。
いつ壊れてもおかしくはない感じだ。
「耐えろよ。せめて、思い出にぐらい浸らせてくれ。」
一言。
階段へつぶやいた。
独り言は寂しさを際立てる。
けれども言わなくてはならない。
本当に駄目だったら二度とここには行けなくなってしまう。
無事に二階へたどり着きホッとした。
自室へ向かうべく二の足を踏んだ。
その瞬間片足が床に落ちた。
階段より廊下が駄目になっていたようだ。
「お願いだ!思い出ぐらい浸らせろ。」
気を強くして本気で願った。
苛立ちと悲しみが入り混じりここへは来るべきではないともう一人の自分が叫んでいる感覚に陥った。
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