二次創作小説(映像)※倉庫ログ

風任せの青年 ( No.59 )
日時: 2013/05/31 23:08
名前: 盾無桃李 (ID: 6AakIVRD)

 なんとかして、自室へと辿り着いた。
 それでもやはり虚しさは変わりなかった。
 ただ何にもない、残っただけのこの空間は果たして残していて良いものか不安になる。
 でも、残っていないとなんだか忘れそうで寄りどころがなくて、それはそれで悲しくて悔しい。
 空っぽに開いた窓枠はただ蒼い空を映し出していた。
 まるで、こんな綺麗に模様は染まっていたんだと主張しているようだ。
 そこへ一羽の小鳥がその描写を横切った。
 変化のない空に生き物が通るとその窓は一気に現実の状況を悟ったかのように平凡でしか見れなくなった。
 そんな残念そうな窓へぶち壊してくれた小鳥が舞い降りた。

 「レニィか。またクロノエからか?返事ー。」

 返事と俺が聴くといつものように野生なのに人前では絶対に鳴かない鳴き声で応答する。
 また、友人に頼むなんて反則だぞ。
 俺の立場がないではないか。
 なんの立場なのかは、分からんが。

 「ご苦労様。こんな炭だらけのところにわざわざ………」

 そう、かつては暮らしていた家だったものは全て灰か炭へと変わり果てていた。
 原型は留めているもののもう、何もないのだ。
 本来なら壊さなくてはならない。
 そこは無理を押し切ってバイトや営業で稼いだ金でなんとか残してある。
 ここは、唯一無二の俺の居場所だからだ。
 もう何もない。
 無いんだ…………
 ……………………

 『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ。 』

 誰だ!せっかくシリアスに思い出へ浸っていたというのに邪魔する奴は!
 驚きと怒り混じりに窓へ飛びつく。
 近くの大型建造物からなにやら人が飛び出してきた。
 なにかあったんだ。
 まさかだが、夢がこんなところで出て来ないよな?
 窓から乗り出してみるも中までの状況は分からなかった。
 確認だけでも行ってみるか?
 いいや、夢を気にかけているのなら行かない方が妥当だろう。
 俺には監視として小鳥がついている。
 いかがわしい行動を取ればクロノエが駆けつけてもしかしたらそれこそ夢とデジャヴする。
 せめて、
 せめてだが。
 あいつが、リムが別のところに居る事を願う。
 それが俺にできる唯一の事だった。