二次創作小説(映像)※倉庫ログ

天空の城エンジェランド 第2章:その1 ( No.15 )
日時: 2013/02/04 10:14
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: E1WQRXsj)

今回から八雲として活動致します。




——ドゴォォン!

森の中で轟音が轟き、豹型の魔物が木に激突して動かなくなる。

「よっし、次!」

少女、ヴィータが愛用のハンマーを一振りする。
昨日拾った少女、はやては残りの2人は配達クエストついでの情報収集として炎の街へ向かっている。そこは連盟を組んでいるギルドの拠点だからだ。
因みに現在この森に居るのはザフィーラとヴィータとシャマルの3人。
彼女の倒し損ねた豹型の魔物が詠唱をしているシャマルに迫る。

「コメートフリーゲン!」

だが、その前に何所からか取り出した鋼球に直撃して吹き飛ばされる。

「逆巻く嵐!」

シャマルが自分に迫る魔物に両手を向け、竜巻状の風をぶつけて吹き飛ばす。
タイミングを合わせたヴィータが、ハンマーで殴り飛ばしてトドメを指した。
刹那に生き残った魔物がヴィータに水流を放つ。

「裂鋼牙!」

だが、両者の間にザフィーラが割り込む。

「これで全部ね」

「だな」

周囲を一瞥して、討伐した魔物の数を一瞥してクエスト完了の言葉を放つ。
そしてシャマルはヴィータの治療の為に彼女とザフィーラの近くに寄って治療を始める。

「それにしても、よく似合ってるわよ、ヴィータちゃん」

「うるせぇ」

そっぽを向くヴィータは『のろいうさぎ』と言うぬいぐるみを飾りとして付けた赤い帽子を被っていた。
いつもはそれを被って無かったのに、とシャマルがクスリと笑う。

「ったく…。——!」

ふてくされたヴィータが急に立ち上がってハンマーを構える。
刹那、崖から白い甲冑の人間が数人飛び降り、ズン…!と着地する。

「オーラム…!」

「少女を確認した。即刻確保に移れ」

「「了解」」

後ろのオーラム員の言葉に、シャマルとザフィーラにひとつの疑問が生まれる。

(シャマル)

(ええ、確かに変だわ。天空の城に行きたいんだったら真っ先にはやてちゃんを狙う筈。関係ないヴィータちゃんを狙う理由なんてないわ)

小声で会話する中、ヴィータがオーラムギルド員に叫ぶ。

「おい、テメェらの目的ははやてだろ?なら何でここに居るんだ?」

「その少女は公爵からのクエスト対象だ。ガレアス公爵の一人娘、ディアマント令嬢を連れ戻せというな」

「!!」

1人のギルド員の言葉にヴィータが眼光を鋭くする。

「……んな」

「ヴィータちゃん?」

ハンマー、グラーフアイゼンを握る力を強め、片方をピック、もう片方を3基の推進気を取り付けた姿、ラケーテンフォルムに変形する。
小さなヴィータの呟きに、はやては思わず後ずさる。

「ふざけんなああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ごあぁ!?」

激高した叫びと共に推進気が火を噴き、一番前に居たオーラムギルド員を吹き飛ばす。
が、直後に魔力の輪が彼女を拘束する。

「バインドッ!?」

「まず一人。——さぁ、帰りますよ。ロート嬢」

「ふざけんじゃねぇ!!あたしはそいつとは赤の他人だし、帰る場所は守護の騎士だけだ!!!」

バインドを力付くで解こうとするヴィータが叫ぶ。
1人のオーラム員が彼女を連れて行こうと手を伸ばした瞬間、風の刃がその手を襲う。が、直前に手を引っ込めて難を逃れた。

「ヴィータちゃんから離れなさい!」

風の刃を放った本人、シャマルが敵意を込めた目でオーラム員を睨む。
ザフィーラも、人間形態となって拳を構える。

「——女と獣人を排除しろ。殺しても構わない」

「「了解」」

クエストの邪魔と判断したオーラム員が、杖や剣を構えて襲い来る。
ザフィーラは剣を構えたオーラム員を籠手で防ぎ、反撃に彼の腹に想い一撃を見舞う。
シャマルは3つの小さな竜巻を出す『風の足枷』で牽制しつつ、風属性の下級魔術で援護する。
だが、オーラム員達も統率の取れた連携で徐々に劣勢になって行く。

「強い……!」

「大人しく投降する事を勧めます。抵抗しなければ危害は加えません」

「いーだ。ギルドの仲間を易々渡すと思いますか?」

「——なら、貴方達を排除対象に決定致します」

一旦シャマル達に投降するよう呼びかけるも、当の本人達は強く反発する。
そして、再びオーラム員が剣を構えた時、空から一つの光が落ちる。
それが地面に着いた刹那、










ドゴォォォォォォォン!!!!!

「のわぁ!?」

「きゃああ!!!」

「うわぁぁ!!」

大爆発が発生し、近くに居た全員が吹き飛ばされた。
その強すぎる衝撃で、ヴィータの結界魔法が粉々に砕け散る。

「だ、誰だッ!?」

衝撃の余波で多少のダメージを負ったオーラム員がよろめきながら立ち上がる。
その時、一人の——あの時オーラムの飛行船を襲撃した天使が崖の上から着地し、前口上を立てる。

「帝国ギルドに住まう悪どもよ、音にも聞け!頭を洗え!聖堂への道ピット!ここに、推参!!」

「…………は?」

「だぁもう!何でこんなリアクションするんですか揃いも揃って!」

見てるこっちが恥ずかしくなりそうな決め台詞に、予想通りと呼ぶに相応しくドン引きしたザフィーラに憤慨するピット。

「お前も邪魔をする気か?」

「当然!こっちはからの依頼だからね!修羅道の刀鍛冶『修羅道のブラックスミス』からの依頼だからね!」

「修羅道の…、奴らからの依頼か!」

ザフィーラが何かを理解したように呟くと、乱入してきた天使と共にオーラム員に立ち向かう。

天空の城エンジェランド 第2章:その2 ( No.16 )
日時: 2013/02/04 10:15
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: E1WQRXsj)

同刻、炎の街。
採掘や陶芸、鍛冶などが盛んなクレーターを利用して作られた街の一角で——。

「誰か居るか?」

建物に入るリインフォース、シグナム、はやての3人。
だが、彼女らの呼びかけに応える者はいない。

「……留守やね。どう見ても」

「依頼だとしても、ギルドマスターも居ないなんて妙だな」

無人のギルドのロビーを見渡していると、3人の後ろからしわがれた声が響く。

「なんじゃ、ギルド会合はまだじゃろう?」

振り向くと、そこに巨大な鍛冶用のハンマーを担いだ老人が3人を訝しげな眼で見ていた。

「ディントス、丁度良かった」

リインフォースが事情を説明する間、はやてがシグナムに訊ねて来た。

「なぁシグナム。あのおじいさんは誰なん?」

「彼は鍛冶及び傭兵の混合ギルド、修羅道の刀鍛冶のマスター、ディントスだ。神器神とも呼ばれる神らしい」

「神様がギルドマスター?なんか、凄い所やね〜」

老人の正体にほえ〜、と唖然とするはやて。
すると入口から大鎧を纏った人と巨大な剣を持った屈強な男が現れる。

「オイ爺さん、一体何事だ?」

「久しいな、2人とも。その子は新入りか?」

「こ、この人達は?」

「鎧の人物がガイナス、大男がマグナ。どちらもここのギルドで傭兵をしている。マグナ、ガイナス、この子は昨日拾ったようなものだ。正式なメンバーではない」

「拾ったって、物やあるまいし…」

「お主ら、ちと来てくれ。マグナとガイナスもじゃ」

強ちあってないけど…、と苦笑するはやて。
直後に一通り事情を聞いたディントスが、今帰って来た2人と共に彼らの居るテーブルに座るよう促す。

「オーラムの事は知っている。数日前奴は帝国の意向を無視し、単独で行動を起こしたのじゃ」

そしてはやてを拉致したと言う訳か、リインフォースが相槌を打つ。

「奴は帝国ギルドに援助をしている貴族、ガレアス侯爵と子爵ととんでもない奴らと結託し、計画を進めているようじゃ」

ガレアス・ディアマント公爵とは、帝国に属するギルドに援助する貴族の一因だが、援助の代わりに高い地位を受け、その地位で息子のバルマ子爵共々人を見下す事で悪い評判の噂が絶えない貴族だ。一族は皆サファイアの様な青い目が特徴らしい。

「とんでもない奴ら?」

「あぁ。『冥王星』じゃ」

ディントスの言葉に3人は顔色を驚愕の色に染める。
冥王星と言うのは、死んだ者の魂を素材として創られた魔物、冥獣を率いて戦争の介入、本来ならギルド依頼に指定されない要人の暗殺、違法武具の売買などを取り行う闇ギルド——帝国から解体命令を出されているにも拘らず活動を行っているギルド——の中でも特に危険なギルドだからだ。

「そこでわしらは先手を打ち、オーラムの所有する飛行船を襲撃、その姫を保護するよう依頼したのじゃ」

一旦相槌を打った後、リインフォースとシグナムが『ん?』とある疑問が産まれる。

「ちょっと待て。今何て言った?」

「なんじゃ。その首飾りを見ても気付かなかったのか?そのシュベルトクロイツに使われる素材は『夜天の光』と呼ばれ、採掘すると一瞬でその光を失ってしまう。じゃが一説ではアンジェラと呼ばれた天空の城に住んでいた一族の子孫が身に着けていればその淡い輝きは失う事は無いと言われている」

「は、はやてが王族だなんて聞いてないぞ!?服もそんな感じはしてなかったし……」

「ま、平民の暮らしを見たいが為に、臣下に頼んで買わせたんだろ。城を抜け出すお転婆娘にゃ姫なんて言葉、似合わなねぇしな」

「直で言われると、ちょお傷つきます…。でも、私がアンジェラなんて初耳ですよ?根拠無しにそんな事言われても…」

「尤もらしい根拠はお前の名だ」

そこにガイナスがメモ帳を取り出し、あるページを見ながら説明する。

「お前の名前、『八神はやて』を平仮名に変え、更に古代天空語に1文字づつ変換。そして『やてがはなやみ』に替え、それをそのまま読むと『リオファルナ・ウル・アンジェラ(天空の後継者)』。つまり、正式な後継者だと言う事だ」

「……突拍子とはいえ、幾つか辻褄が合うな」

「さて、長居しちまったな。爺さん、俺らはもう行くぜ」

一通り会話に付き合ったマグナが腰を上げる。

「何所か行くのか?」

「わしらは別の場所から奴らを叩く為に、冥王星と共同した証拠を集めておるのじゃ。他のギルドメンバーも、その為に出払っておる」

「なるほど。それは失礼した。私達も帰ろう」

「なら、わしが送ってやろう。転送の奇跡!」

ディントスが手を翳すと、3人の足元に魔方陣が浮かび上がる。

「転送先、ギルド都市ナハトヴァール。設定完了。行くぞ!」

「ついでに持って行け。もし本当に天空の城があった時役に立つと思う」

リインフォース達が転送される直前、ガイナスが先程のメモ帳をリインフォースに投げ渡した。

「——転送!」

手を翳した直後、魔方陣が輝き、光が収まった後には魔方陣もリインフォース達も消えていた。



続く——。