二次創作小説(映像)※倉庫ログ

祝福の風は一陣の風となりて:その1 ( No.3 )
日時: 2012/12/05 20:23
名前: ブレイジング・フレア・ドラゴン (ID: mznU1Olg)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode

もう12月なので、一番印象に残っているアニメを元にした作品の小説です。

・百合表現注意。

・ネタバレ注意。

・映画イナダン公開記念です。

異常注意書きでした。



広いホールに、雷門イレブンと新生イナズマジャパンのメンバー。そして、ダンボール戦機wのチームが集められた。
彼らだけでない。この作品の作者のBFDが扱うヴァンガード、リリカルなのはポータブルのキャラ達も集められている。
全員が集められた所で、モニターから作者のBFDが映り、声を上げる。

『デハ皆サン、映画イナダン公開記念パーティヲ開始致シマス。大イニ盛り上ガッテ下サイ!』

モニターが消えると、テーブルに並べられた料理(主にエミ、シュテル、はやて達が作った)に舌鼓を打つ者。配置されたDキューブでLBXバトルに火花を散す者。別ホールでサッカーを心おきなく楽しむ者と様々だ。

「凄い人気だね」

「全くだ。作者もかなり楽しめたと聞いた」

そんな事を言うのはフェイ・ルーンと自称雷門イレブン監督のクラーク・ワンダバット、通称ワンダバである。
彼らは2人でベンチに座り、黄昏ていた。歳としては割に合わないが。

「あれ?あの人は……」

ふとある方向を見ると、少し離れた場所で銀髪の女性が賑わいを見守るように微笑んでいた。

「リインフォースさん、どうしたんですか?」

「フェイか。なに、あの冬の事を思い出してな…」

隣に座るフェイに続いてワンダバも座る。
暫くその賑わいを見ていると、フェイがワンダバに小言で会話する。

「そう言えば、その時だよね。この世界で『リインフォースさんが生存する世界』にインタラプトが変更されたのは」

「あぁ。そして『同時に闇の書本来の力を失ってしまった』。私も興味があるから、本人に聞いてみたらどうだ?」

本来、アニメでは小さな欠片となった祝福の風を主であるはやてに託して、彼女は旅立った。
だが、この世界ではその時点で分岐点(インタラプト)が発生しており、彼女はここにいる。
気になったのか、その事を彼女に切り出してみた。

「その事か。今でも私の記憶に鮮明に焼き付いている」

「詳しく話してくれませんか?」

「あぁ。いいだろう」

一息吐き、祝福の風はその時の会話を始めた——。



降り積もった雪が鳴海市を銀世界に染める。
街を一望できる丘で、消滅の儀式の魔方陣の中央に立つリインフォース。
彼女の旅立ちを見守る守護騎士達。
そして、彼女を挟む様に杖を構えるなのはとフェイト。
全ては闇の書の頁を閉じる為に、闇の書の悲劇を終わらせる為に——。

『Ready to set.』

『Stand by.』

少女の持つ杖、レイジングハートとバルディッシュから音声が発せられる。

「あぁ…。短い間だったが、お前達にも世話になった……」

『(気にせずに)』

『(良い旅を)』

レイジングハートもバルディッシュも、声では解り辛いものの、彼女の旅を祝福しているようだった。

「あぁ……」

リインフォースの表情は、どこにも心残りは存在しなかった。

「リインフォース!!皆ぁ!!」

静寂に包まれた丘に、少女の声が響く。
声の主は、必死に車椅子を走らせる夜天の主、八神はやてだった。

「アカン!やめてぇ!!リインフォースやめて!!破壊なんかせんでええ!!私が、ちゃんと抑える!大丈夫や!こんなん、せんでええ!!」

必死に叫ぶ幼き主。
短い沈黙の後、リインフォースが口を開く。

「主はやて…。もうよいのですよ…」

「良い事無い!良い事なんか、何もあらへん!!」

「随分と長い時を生きてきましたが……、最後の最後で、私は貴女に、奇麗な心と名前を頂きました。騎士達も貴女の傍に居ます。何も心配はありません」

「心配とか、そんな……」

「ですから、私は笑って逝けます」

再び起きた沈黙。
涙を浮かべたはやては、小さく呟いた。








「リインフォース、ちょっとこっちに来てくれへん……?」


ここからインタラプト。

祝福の風は一陣の風となりて:その2 ( No.4 )
日時: 2012/12/05 20:26
名前: ブレイジング・フレア・ドラゴン (ID: mznU1Olg)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode


「ふぅん…。はやてちゃんが…」

「インタラプトが発生したのは、間違いなくそこだろう」

フェイトワンダバがリインフォースの話を聞きながら、インタラプトの発生点を探る。

「続けていいか?」

「あぁ、どうぞ」



「リインフォース、ちょっとこっちに来てくれへん……?」

か細い声で呟くはやて。
最後の我儘なのだろう、祝福の風は微笑みながらゆっくりと彼女に近づき、片膝を付く。

「なんで…?これから、やっと始まるのに……。これから、うんと幸せにせなアカンのに……!」

「大丈夫です。私はもう、世界で一番、幸福な魔道書ですから」

はやての方に、リインフォースは優しく手を添えた。
その瞬間、はやてがリインフォースに飛びついた。

「っ……!?」

不意打ち同然に受け止め、尻もちをつくリインフォース。

「はやてちゃん……?」

彼女の行動に、杖を構えながら目を丸くするなのは。











「逃げるんか…?」

涙に混じってよく聞こえなかったが、リインフォースだけにはその言葉がはっきりと届いた。

「逃げるんか…?せっかく、せっかく幸せになったってのに、一緒に悲しい時を生きてきた騎士達や、貴女を救ってくれたなのはちゃん達……、それに…、












それに…好きな人も置いて、逃げるんか…!?」

「え……?」

届いた声に、目を丸くするリインフォース。
彼女だけでない、その言葉はなのはやフェイト、ヴォルケンリッターの面々にも届いていた。

「ど、どう言う意味ですか?我が主」

「あの時、闇の書の中で出会った時に変な気分になって…。それで今日までその気分が抜けないままになってて…、今日の夜でまた出会えた時、また会えた嬉しさと、皆を失ってしまった悲しみがごっちゃになってて……」

「はい。その事は、よく知っています…」

「貴女の暴走を、私が止めて、明ける事の無い夜は明けた…。色々あってごっちゃになってて、言えなかったけど…言わせてくれへん?」

「……はい」

彼女のその心はあの時、闇の書の深層世界に入った時に起こった。
最初はそれが何かと分からないが、ただ彼女かのために頑張りたいと思った。
事件でその気持ちを理解する暇がなかったが、今では言える。

リインフォースも、幼き主が深層世界に来た時は驚いた。
闇の書の過去を知って、少女は激しい怒りと悲しみを露にした。
その後に楽しい話をして。別れた時に彼女だけを救ってやりたいと思った。
暴走した時も、騎士達を、主を止められなかった時に涙を流し、悲しんだ。
そして、祝福の風、リインフォースの名前を授かった時、本当に嬉しかった。
その2人の感情を表す言葉は、一つ——。









「好きや、リインフォース……」

「私も、その名を授かる前から、お慕いしていました…」

それは、紛れもない告白だった。
だが、リインフォースはその言葉に主が望む言葉を返せない。

「ですが、闇の書の頁を閉じるには、悲劇を終わらせるにはこの方法しか——」

悲しみの言葉を紡いだが、そこから先の言葉は言えなかった。










そう、リインフォースとはやての唇が重なったのだから。



次回ラスト。

祝福の風は一陣の風となりて:その3 ( No.5 )
日時: 2012/12/05 20:28
名前: ブレイジング・フレア・ドラゴン (ID: mznU1Olg)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode

ラスト。
最後のワンダバの行動はどう思う?




「き、キスぅ!?」

キスシーン話した所でフェイが思わず声を上げた。
殆どの人物が声を上げた本人に振り向くと、フェイはどうか気にせずにと苦笑してその場を逃れる。そしてその人達が再びパーティを続けた。

「それ、本当にしたんですか…!?」

一先ず落ち着いた処でまだ信じられないフェイがその質問する。
その質問にリインフォースは無言で頷いた。

「それで、どうなった?」

続きを促したワンダバに、リインフォースは話を続けた。




リインフォースとはやての唇が重なった光景に、リインフォースは勿論、なのはとフェイト、ヴォルケンリッターすら目を丸くして固まった。
はやての唇がリインフォースの唇を離れると、はやてはリインフォースを強く抱きしめた。

「あ…、ある…、じ……?」

「これが、これが私の精一杯の気持ちや…!だから消えるなんて言わんといて!私は今までつらい時も悲しい時も、戦ってきた。正面から向き合ってきた!もし貴女が闇に堕ちそうなったら、私が——ううん。私だけやない。騎士達も、私の友達も、この手を差し伸べて貴女を光へ導いてあげる!だから……








だから生きたいって言ってや!リインフォース!!」

嗚咽を噛み締めながら叫ぶ夜天の主。
ドクン、一瞬作られた心臓の奥が高鳴った。

(私は、本当に愚かだ。主の幸せを思って消えようと思っていたのに…。結局……、結局、自分のことしか考えていなかったではないか……!)

こんなにも自分の事を想ってくれる主は、今までいただろうか。
こんな主を置いて、私は逃げようとしてたのか……?

「我が…、主……。こんな私でも……こんな、穢れた翼を持った私でも……、貴女達と同じ空を、はばたいて宜しいのですか…?」

目に涙を溜め、自分の言葉を、自分が望む言葉を待つ。
そしてはやては、言葉を紡ぎだす。

「夜天の主の名において命じる……、











汝、騎士達と共に、主と共にこれまで犯した罪を……生きて、償うのです」

その言葉に、リインフォースは優しくはやてを抱きしめた。

「ありがとう…、本当に…ありがとう……!」

悲しみと喜び。その2つの感情が主従の契約を交わした2人の中で渦巻き、風船が破裂したように、泣いた。

「…もういいよね?レイジングハート」

『(はい。彼女の幸せを、消す訳にはいきません)』

「ちょっと無駄足だったかな?バルディッシュ」

『(いいえ。彼女の祝福を見られたから、無駄ではありません)』

いつの間にか構えを解き、同時に魔方陣が消滅した。
なのはもフェイトも、ふっきれた様に清々しい表情に満ちていた。

「名前の通りになってしまうとはな」

「え?」

「どう言う意味だ?」

ふと呟いた列火の将シグナムに、疑問符を浮かべる風の癒し手シャマルと紅の鉄騎ヴィータ。
答えたのは蒼き狼ザフィーラだった。

「強く支える者、幸運を追う風。祝福の風(しゅくふくのエール)。その名はの通り、主に祝福を届けてくれたのだ」

「そうね…。確かに、今のはやてちゃんもリインフォースも、凄く幸せそうよ」

ザフィーラの説明にシャマルも頷く。
その時、一陣の優しい風が吹き抜けた。

「風だ…」

「この風も、主とリインフォースを祝福してくれるのだろうな」

ヴォルケンリッターの守護騎士も、吹き抜けた風の行く末を見る表情はどこかスッキリした様に見えた——。



「これで私の話は終わり——って、どうした?」

「「なんか、色々と御免なさい……!!」」

話し終えて彼らの方を見ると感動を抑えているようにしているフェイトワンダバが。

「ホント、いい話だなって思って……!」

「はやての気持ちが骨身に染みた…!」

今にも爆発しそうな感動を、片手で抑えているようにも見える。

「泣ける…!これは泣けるぞ…!」

「で、闇の書のシステムはどうなったんですか?」

嗚咽を噛み締めるワンダバはほっといて、フェイが闇の書のシステムの顛末を尋ねる。

「後でクロノやユーノから聞いたのだが、どうやら莫大な魔力ダメージのショックで、闇の書の大半のシステムが防衛システムに移されてしまったらしい。今はもう修復の仕様がないがな」

「その魔力をぶつけた方、本当にありがとうございます!!!」

顛末を語った直後、ワンダバが誰にも無く土下座して感謝の言葉を叫んだ。
それを見たリインフォースとフェイは苦笑したのは言うまでも無い。


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