二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 天空の城エンジェランド第4章:その1 ( No.39 )
- 日時: 2013/07/26 22:23
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
『こちらピット!オーラム所有飛行船『ダイソンスフィア』を捕捉!物凄いスピードで接近中!このままじゃ3分も持ちません!』
「ピット!今すぐこちらへ来て下さい、対策を考えます!」
連絡管からパルテナの声に従い、ピットが船室に飛びこんだ。
「ピット、状況は?」
「最悪ですよ!とんでもない数の兵士と爆筒です!」
「マトモに正面からぶつかったら確実にこちらが全滅しますね」
ざっくりとパルテナが酷な現状を伝える。
こちらはざっと10人と備え付けの爆筒が数本。
対して向こうは2つの巨大ギルドの連盟に加え、支援者の貴族の抱える兵士もいる。
この現状は確かにパルテナの言う通り、まともに戦ってもこちらの勝ち目は皆無に等しい。
だからといって降伏するという選択も、彼女達のプライドが許さない。
「ひとつ、策はある」
運転席を離れ無かったチャリオットの言葉に、一同の表情に僅かに輝いた。
だが、ホーリーロードの3人の表情は暗いままである。
「この方舟には『バリィ』と言う2人乗りの小型の魔道飛行船がある。それを使えば逃げれるだろう。
この船を捨てればな」
「そ、それってチャリオットさん達も見捨てろって事とちゃうの!?」
はやての驚きの籠った声にもチャリオットはまるで他人事のように頷いた。
確かにこの方法ならピット達とはやて達なら助かるだろう。
だが、それはチャリオットと2頭のスターダストユニコーンの命を『見捨てる』のと同意だ。
しかし、別の策を使っても、エンジェランドが悪用されるのは目に見えている。
何か他に、全員が助かる様な策が無いか考えるはやてがふと縄に目をやる。
「この縄は?」
「星の方舟と光の戦車を繋ぐ縄だ」
ブラピがそれがどうした?と言わんばかりの表情で答える。
それを聞くとはやてはブラピに質問を重ねる。
「2つええか?1つ目は星の方舟に他の動力があるか。2つ目は方舟抜きやとあの2頭はどれくらい速くなるかや」
「前者の答えはNOだ。これ単体はただの船。そいつら以外の動力は無い。後者は今と比べ物にならない位、それこそ流れ星に匹敵するほどの速さになる」
ブラピの返答に少し考える様に俯くはやて。
そして、何かを閃いたはやての顔に希望が充ち溢れる。
「これや!これやったら皆助かる!」
「何か良い案でも?」
「はい!実は…………」
†
一方、はやて達が船内で作戦を練る間にも、ダイソンスフィアが短い橋が掛かれば繋がる距離にまで接近していた。
「第1部隊、第2部隊、共に乗り込め!」
ハデスがレバーを降ろして梯子を掛けると同時、陣頭指揮をとるバルマ子爵の指示で大人数の兵士が乗り込む。しかし、肝心のバルマ子爵はブリッジで指揮を執るのみだが。
一気になだれ込み、方舟と戦車の境目の場所にまで乗り込むと、操縦していたチャリオットが十字弓を手に待ち構えていた。
「動くな!もうこの船は我等の物である!大人しく投降すれば、命くらい助けてやってもいいぞ」
「……愚かな。うわべだけの言葉に乗せられると思ったか?」
「なんだと!?」
チャリオットの挑発に乗せられた一人の兵士が槍を構えて今にも突進しそうな所をもう一人の兵士に止められる。
その間にもチャリオットは十字弓に矢を装填する。
「馬鹿め!そんな武器でこの数を相手にするというのか!」
「否。それ以前に一戦交える気も無い」
チャリオットの言葉に兵士達が「え?」と間の抜けた声を上げた瞬間だった。
手にした十字弓を真横に向けて放ち、縄を切断する。
鞭の様に唸って兵士達を怯ませチャリオットが光の戦車に乗り込む。
同時に方舟の船底から何かが飛び出した。
それは、空中を高速落下していく内に翼を広げる様に変形。上昇気流を捉えて一気に上昇する。
残る翼を失った方舟は、多くの兵士を乗せて成す術無く雲海へ沈んでいった。
「後はお願いします!」
「承知」
光の戦車だけになったフラッシュとシルバーが再び力強く嘶いて、先程とは比べ物にならない速度で爆筒の弾を全て華麗に避ける。
バリィに乗ったリインフォース達も散り散りに、オーラムから逃げる。
「はやて!光は!?」
「あの雲の中をずっと指してるで!」
はやてのシュベルトクロイツからの光はまっすぐ東を、そう、巨大な積乱雲の中を指している。
その形はまるで雲の城の様に幻想的であると同時に、自然界には無いと言いたくなる位巨大で、圧倒的である。
おまけに近くの雲が触れた途端飲み込まれて消えてしまう程の乱気流付き。
「まさか、あれに飛びこむなんて言わないよね……?」
シグナムの背中にしがみ付くシャマルが顔を蒼くして僅かな希望に縋る様に問う。
あんな乱気流まみれの雲の中に突っ込むのは、自殺行為に等しい。
だが、今彼女達はオーラムに撃墜されるか、僅かな希望を胸に積乱雲に突っ込むかの2つに1つだ。
「——行くぞ!」
覚悟を決めたリインフォースとはやての乗るバリィに続き、ザフィーラとヴィータ、シグナムとシャマルの乗るバリィが乱気流に突っ込んだのであった——
- 天空の城エンジェランド第4章:その2 ( No.40 )
- 日時: 2013/07/26 22:20
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
積乱雲の中に突っ込んだ6人を待ち構えていたのは、闇と雷、横殴りの豪雨と暴風、そして吹き飛ばされそうな衝撃のオンパレード。
「ぐぅぅ……!!」
「……ッ!!」
今は自分のバリィを操縦する事のみに全神経を集中させる。何所が上でどこが下か、少しでも手を緩めば、瞬く間にこの10年分のゲリラ豪雨に翻弄されてしまうだろう。
仲間が今どこに居るのかも気にしていられない。
だが、彼女はまっすぐ進むしかない。自分を信じてくれている人がその身を自分に預けているのだから。
「!!リインフォース、あそこ……!!」
「……!あれは!」
その時、光が指した。
はやての言葉の先に光が指した。
その光を信じてエンジンをフルスロットルにしてその光を目指す。
するとまるで光に取り払われた様に豪雨も、雷も、闇も後方に流れる。
——雲の中から現れたのは、巨大な城。
中心に聳え立つは遮蔽する雲も無く直接日光を受けて異常なまでに成長した大樹。
歴史を表す様な瓦礫と、高度な文明が栄え、そして消えた跡が生々しい街の跡。
ヴォルケンリッター本部の建物がある街、『イングヴァルト』の数倍はあるだろう。
「「おーい!」」
エンジェランドの圧倒的な荘厳さに目を奪われていると、上空と真横からの声で我に返る。
はやてとリインフォースが慌てて辺りを見回す。
そして上空からザフィーラとヴィータが、真横からシグナムとシャマルが乗ったバリィを発見する。
「無事やったんやね……」
「流石に、少し肝を冷やしたよ……」
仲間が無事だったことに安堵した2人は残る4人と合流し、大樹の根元近くへ着陸したのであった……
†
「うわぁ……」
バリィを隠し、内部を探索するはやてが感嘆の声を漏らす。
外の装飾も圧倒的だが、内部も、大樹の根が侵蝕しているが、それと同等以上の荘厳さを醸し出していた。
これで廊下なのだから中はきっと更に凄いに違いない。因みに、真っ先に目に入った大樹を初めとする木々や植物の光合成で息苦しさを全く感じていない。
「ここは……秘書室か?」
周りの壁に何かの文字が刻まれた部屋に移動した一行。
そのほかの特徴を上げるとすれば、机の横に積み重ねた石板と草が生え完全に動かなくなった人型の機械が目に入る。
「あ、シグナム、リインフォース。ガイナスさんから貰った手帳って何やったんや?」
「アレの事か?実は方舟の中で調べたのだが……ここの文字を現代に直したものだな」
「だったら私が解読してみるわ。この手の事には一番知ってるから」
シャマルがそう言ったので、リインフォースはガイナスから渡された手帳を受け取り、解読を開始。ヴィータを置いて残るメンバーは散策の為に別々の場所へ移動した。
- 天空の城エンジェランド第4章:その3 ( No.41 )
- 日時: 2013/07/26 22:20
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
「ここが……私のご先祖様が住んでたお城……」
はやてが心ここにあらずと言った感じで玉座の間を見渡す。
廃墟となった今でも、積み上げた歴史は変わらない。
「先祖がここで何をしていたのか想像してたのか?」
「あ、うん。それもあるけどもう一つあるんよ」
同行していたリインフォースがはやてに聞く。
その答えに頷いたはやてが更に言葉を続ける。
「どうして私のご先祖様達は、住んでた人達を追い出してまでこのお城を空へ飛ばしたんやろ?」
「ん?何故そう思う?」
「だって、こんな立派なお城や国も、人が居なければただの廃墟同然や。人の居ない国や城なんて、何の意味もあらへんよ」
胸中にある疑問をリインフォースに当てもなくぶつける。
リインフォースは到底彼女が、ヴィータ位の少女だと思えるのが信じられないと
胸中でそう呟いた。
それと同時に、こう思った。
(この子は、こんなに幼いのにもう国の事を考えているのか……ある意味王の素質があると言う訳か……)
「……ん?なんやこれ?」
ふと天井を見回していたはやての足が何かに当る。
頭が丸いネジの様な部品だ。
(これ、何の部品やろ?こんな所に機械なんてある訳ないし。この材質はどう見ても鉄や)
「はやて、次へ行くぞ」
リインフォースに呼ばれ、あまり気にも留めずにポケットに入れて次の部屋へ向かう事にした。
†
同刻、宝物庫。
廃墟とはうって変わって莫大な宝物が無造作に並べられた部屋。
穴のあいた日の光が反射し、太陽様な眩しい光が起きている。
シグナムとザフィーラが手をサンバイザーの様に翳して漸く眩しさが抑えられる程だ。
「まともに歩けない……」
「足下に気をつけろ。所々穴が空いて……うおぉ!?」
「ザフィーラ!?」
碌に前が見えない状態で自然と視線が足下に集中していたや先にザフィーラの足下が崩れ落ちた。
慌ててシグナムもザフィーラが落ちた穴に飛び降りる。
「自分で言ってる傍からこの有様か……」
「人ひとり乗っただけで崩れる位に脆くなってるとはな。……!?」
「……どうした?」
降り立った途端我が目を疑う様に表情を引き攣らせたシグナムに疑問を抱きつつ起き上がるザフィーラ。
何事かとシグナムと同じ方角を見ると、一瞬でその理由を理解した。
「これは……!」
「どうやらこの城は、とんでもない物をお抱えの様だな……!」
笑い事じゃないと言わんばかりにそれから目が離せない。
(皆、解読が終わったわ)
シャマルの魔力通信で漸く我に返ったシグナムとザフィーラを含め、4人ともシャマルの居る書記室へ帰って行く。
†
「シャマル、どうだ?」
「この石板も壁に刻まれた文字も、文章から察するに記録みたいね」
「記録?」
「正確には日記見たいなものだけどね。全部は無理だったけど」
メモを手にシャマルが文字を示す。
何故この人形が文字を刻んだのかは不明だが、聊かその内容が気になる。
「何て書いてあるんや?」
「待って。一番興味のある物を2つ用意するわ」
はやてにせかされ、シャマルは2枚の石板の内容を語り出した。
- 天空の城エンジェランド第4章:その4 ( No.42 )
- 日時: 2013/07/26 22:23
- 名前: 八雲(元BFD) (ID: w/wSfXM1)
「じゃあまずこっちから」
そう言って机の右側の石板を手に取り、解読した文章を読み上げる。
エンジェランドが天に浮かんでどの位過ぎたのだろう。
国王の命令で民と息子夫婦を同盟を結んでいる他の国に任せ、国王とその一族、そして国を護ると誓い、生涯を捧げた騎士達と私が夜天の光を巨大な一個のクリスタルに変え、天へ飛ばした。
誰もがこの計画の重大性を解っている。
住む者が私だけとなった今もなお、王の墓石から通じる部屋のクリスタルは輝きを損なわない。
少なくとも千年は浮かび続けて少しも光を失わない事に驚いた。
だが、永遠にこの城が浮かび続けている訳では無い。輝きが失った時、この城が落下した時、世界が終焉を迎えるのだ。
国王が死んだ。
騎士達は嘆き悲しみ、王妃は悲しみに押し潰されそうな現実にも、嘆かずに気丈に振舞った。
王は遺言で、自らが亡くなった時は私の身体を腐敗させず、クリスタルを護る鍵にしてくれと願った。
騎士や一族達でその技術に秀でた者が技術を結集し、王の亡骸を錠に、義眼を鍵とした仕掛けを製造した。
王は夜な夜な嘆いていた。
もし我が血を受け継ぐ者が、悪意ある者だとしたら、この城を飛ばしてまで民や世界を守った意味がなくなる。
仮に入ったとしても、あのクリスタルから造られたシュベルトクロイツとヴァッフェントレーガーが1つになり、それら2つと王の息子夫婦の子孫の力が1つにななければ、この城の力を我がものとする事は不可能だ。
「これがその石板の内容か」
シグナムの言葉にシャマルは小さく、はっきりと頷いた。
「でも、世界が滅ぶってどう言う意味だ?デカい爆弾が積まれてるわけじゃあるまいし」
「そのデカい爆弾に該当するものなら、先程私とザフィーラが見つけた」
「爆弾に該当する物?」
「宝物庫の地下で、戦争に使われたと思われる様々な兵器を見つけた。爆薬らしうき物も大量に見つかった。それにこれらの兵器を使う様な戦争と言えば……」
「!聖皇戦争ね!あれは書物でも百年は続いた激しい戦争だって記されていたわ……」
「戦争に使われた兵器と巨大な夜天の光……世界の一つや二つが吹き飛んでも可笑しくない内容だな」
「にしても、義眼っていったい何なんだ……?」
「あ、ひょっとして……」
頭を寄せ集めて考えている5人にはやてが思い出したようにポケットに入れた義眼を取り出そうとした時だった。
ドガァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
城全体を揺るがさん勢いの震動に襲われる。
「なんだ!?……まさか、オーラムが!?」
シグナム達が咄嗟に武器を構えて城を見渡せる場所へ急ぐ。
その場所でヴィータが取り出した双眼鏡を見ると、ラーズとガレアス、バルマ、ハデスを乗せたダイソンスフィアからウジャウジャと兵士や冥獣が降り立っている。
「……あれは!」
更に目を凝らして見るとピットやブラピ、パルテナが縄で縛られていた。
「あらら?あの子達先回りしてたみたいだよ?」
「そうか、ならば一気に兵を向かわせろ!」
「あいよー!」
それと同時にハデスは挙手して合図を送る。
するとダイソンスフィアから丘で一戦交えた冥獣とツインベロス、ヒュードラーと共にガーゴイル型の冥獣が着陸し、エンジェランドへ進行する。
その傍ら、捕えられたピット達の近くに一人の甲冑の騎士が歩み寄る。
「おい、マスターラーズの命令だ。お前達は本隊と合流してこの城の捜索にあたれ」
「何?そんな命令は受けてないぞ?」
他の兵士2人がそんな命令を受けていないと反論する。
だが訊ねた兵士は「そうか?」と聞き返す。
「いや、絶対にそう言われたぜ」
「何でそう言いきれるんだよ?そうそう、今思い出したが、こんな事も言ってたぜ」
両手剣に体重を乗せ、杖の様に立てる兵士がその体制を直し、いきなりピットの後ろに剣を突き立てた。
「「なっ!?」」
「テメェらをブッ飛ばせってな!!」
言うが早いが、その兵士は両手剣を地面に叩きつけて巨大な竜巻を作り、オーラム兵を吹き飛ばす。
「ま、まさか……」
ピットが信じられないと言った表情で兵士の指を刺す。
そして、指された兵士はその正体を明かす為に兜を脱ぎ棄てた。
「よぉ。随分無様な補まり方じゃねぇか」
「マグナ!!どうしてここに!?」
「あの爺さんからの依頼でな。もしもの為に俺をこいつらの中に紛れこませていたのさ。案の定こうなっちまったか」
「うるさいなぁ!助けに来たならそう言えよ!」
「そりゃ悪かったな。んな事よりこいつらぶっ飛ばして、とっととあの嬢ちゃん達と合流するぞ!」
マグナが再び衝撃波を放って背を向けて親指を指した。
その標的は、遥か建物の上のシグナム達。
「マグナ……感謝する」
金属混じりの足音、翼を広げ空を羽ばたく音、そして獣のような唸り声。
様々な効果音が入り混じった音の発生源である大群から目を離さず、シグナムは腰に差した刀を抜刀し、シャマルは指輪に魔力を注いで戦闘モードに入り、ヴィータはハンマーを2、3度振って戦闘意欲を示し、ザフィーラは静かに拳を構え、リインフォースは愛用の短剣を構え、はやては自衛用に魔道書を取り出した。
「総員に告げる。何が何でもこの城を奴らの手に渡すな。そして……絶対に誰ひとり死ぬな!!!」
「「「「「了解!!!」」」」」
——————つづく。