二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 小さな書庫の騒動【短編集】 ( No.45 )
日時: 2013/10/04 18:57
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: pND9SC4/)

前回までのあらすじ

時は大ギルド時代。
魔道ギルド『ヴォルケンリッター』はひょんなことから空から降りてきた少女、八神はやてを拾う。
そして帝国ギルド『オーラム』と暗黒ギルド『冥王星』と激しい戦いを繰り広げながらも、ついに伝説と謳われていた天空の城『エンジェランド』を発見したのであった。
しかし、安息も束の間、ラーズ率いる『オーラム』軍団に追い詰められる。
今、天空で最後の戦いが繰り広げられようとしていたのであった。









鉄を擦り付ける音が静寂に包まれた天空の城に響き渡る。
リインフォース、シグナム、シャマル、ザフィーラ。そして八神はやては愛用の武器を取り出し、戦闘体制をとる。

「来やがったか!」

「ヴィータ。相手は帝国一のギルドだ。油断してるとやられるぞ」

テンションが上がり気味なヴィータを制す様にシグナムが言う。
やがて大群は足音を更に大きく、その姿をリインフォース達に大きく映し出した。
圧倒的な軍事力。その言葉を肌身で思い知りながらももう退く事は出来ない。ここで退いたり、負けたりしたら天空の城は帝国のものとなってしまう。
第一彼女らも、負ける気は毛頭無い。

「ほんなら、開戦の狼煙を大きく上げへんとな。——白銀の剣兵、夜天を切り裂く矢羽となれ……バルムンク!」

魔道書を広げたはやてが杖を掲げ、魔法を唱える。
白銀の剣が上空に展開し、杖を降ろすと剣が一斉に軍に向かって射出される。一発一発は大した事はない。だが、その剣が雨霰と降り注ぐ。しかも階段を上がる連合軍にとっては辛い物だった。
同時にヴィータとザフィーラが連合軍の中心に飛び降りる。

「守護の拳!」

「テートリヒシュラーク!」

ザフィーラの拳とヴィータのハンマーが空を裂き、連合軍を吹き飛ばす。

「穿空牙!」

「ナイトメア!」

更に続いたシグナムとリインフォースの追撃。
小規模の砲撃と斬激が更に連合軍の兵士を倒す。

「そんじゃまぁ、ここで冥府軍もいきましょうかねぇ!」

『出番だ出番だ!!』『焼き尽くしたらぁ!!』

『おらおらどけやぁ!』『邪魔だ邪魔だ!』『肉食い放題だぁ!』

ハデスが高らかに声を上げると同時、冥獣ツインベロスとヒュードラーが空を飛んで魔道師達に牙を立てる。
ツインベロスはザフィーラとシグナムに、ヒュードラーはヴィータとリインフォースの行く手を阻む様に前に立つ。

「数が多すぎる……!」

本来戦闘慣れしていないシャマルでさえも戦闘に参加せざるを得ない数を相手に、逆巻く嵐で周囲に近付いている敵をなぎ払う。
はやてはシュベルトクロイツにしか開けられない扉を開ける為に集中しているので戦闘に参加できない。
だが、先頭の激しさに不安に思ったはやてが振り向いた瞬間、口に布が押し当てられてしまう。
苦しみながら何とか後ろを振り返るとディアマント親子、更にラーズや親衛隊の数人までもがいた。裏を書かれてしまったらしい。

「う……うぐ……ん……」

「無防備とは感心しませんね。姫様?」

睡眠薬でも混ぜられていたのか、はやての意識が徐々に遠のいていく。
そして眠ったことを確認するとバルマはやや強引にはやてを引っ張りそのままラーズと共にそのまま窪みのある石版へと向かっていった。

「!!はやてっ!!」

『どこに目をつけている!!』

一瞬の隙を突いてシグナムがはやての元に向かうが、それより早くヒュードラーの右首が遮る。
その様子を確認したラーズが窪みに奪ったシュベルトクロイツを当てる。

「ついに来た……!この瞬間がやってきたのだ!!この世界を私の物にする歴史的瞬間が!!」

剣十字が填められた扉が溝を光で満たす。
するとどうだろうか、一瞬激しい地鳴りが襲ってきた。
流石にギルド員は先頭をやめ、収まるのを待つ。
冥獣も異様な地鳴りに危機感を察して戦闘を止める。
地鳴りは激しさを増し、やがて扉が開き、中枢へと続く階段が姿を現した。

「さぁ!いざ歴史を創造する時!」

そのままラーズはガレアス親子と親衛隊数名と共に扉の奥へと向かっていった。
シグナム達も向かいたいが、冥獣やハデスの存在が邪魔をする。

「貴様らは行かないのか?」

「そんなんに期待するよりも今を楽しまなくっちゃ。人生楽しんだ者勝ちでしょ?」

口調こそ軽々しいが醸し出されるオーラは半端なものではない。








「セレスチャルアロー!」

「おらぁ!!」

「女神の裁き!」

突如、降り注ぐ無数の矢がオーラム軍や冥獣の肉体に突き刺さる。
更に何者かの攻撃でツインベロスを吹き飛ばし、更に巨大な光が騎士団を飲み込んだ。

「本当に派手な登場だねぇ〜パルテナちゃんにブラピ君」

「お望みでしたらあなたも派手に消し去ってあげる事も出来ますよ?」

互いに皮肉を言い合う冥府神と女神。
そう、漸くホーリーロードのギルド員と合流を果たしたのだ。
ツインベロスを吹き飛ばした人物、マグナはヴォルケンリッターの5人に巨大な剣で大声で叫ぶ。

「ここは俺たちが引き受ける!お前ら、あの小娘を頼んだぞ!」

5人はマグナに「すまない」と礼を言って駆け抜ける。
その後を追おうとする冥獣とハデスだったが、そこにパルテナとブラピが立ち塞がる。

「散々やられた借りだ。今ここで全部倍返しにしてやるよ!」

「あらら、こりゃまた……」

やれやれと首を横に振るハデス。
と、そこへマグナが紫色の短剣をシャマルに投げ渡す。

「こいつを持って行け。必ず役に立つ」

「これは……?」

「ヴァッフェントレーガー。ガイナスがら渡された物でな。これとシュベルトクロイツ、そして夜天の主の力を合わせりゃこの城を制御できるって聞いた」

さらっと説明し、戦闘態勢に入るマグナ。
とにかく持っておいて損は無い。マグナに礼を言い、行く手を阻むものを薙ぎ倒しながら階段を駆け上がる。

「だーもー!鬱陶しい!エクスプロージョンシュート!!」

壁となる騎士団やギルド員がピットの放った巨大な砲弾に吹き飛ばされ、爆煙が晴れると残ったのは無傷の階段だけ。

「皆さん!早く!」

「サンキュな、ピット!」

そのまま奥の階段まで一直線。
見かねたハデスが火球を放とうとするが、パルテナの撃剣に妨げられる。

「ちょっとちょと。邪魔は無いんじゃない?」

「久しぶりの神様同士の会合です。お開きは早いんじゃないんですか?」

冥府神の悪態を軽くあしらう女神。
その表情はあくまで余裕を保っていた。
その光景を尻目で確認したリインフォースはギルドの仲間を引き連れて深遠へと消えて行った。

天空の城エンジェランド 最終章:その2 ( No.46 )
日時: 2013/10/04 19:02
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: pND9SC4/)

中枢へと続く城の内部は、歴史の残骸であった居住区とは違い、あちこちに自生した苔、しかもヒカリゴケが淡い光を発していた。
幻想的な世界であったが、今の彼女達はそんなのは眼中に無い。

「!止まれ!」

「ザフィーラ?」

先頭を走っていたザフィーラが急に立ち止まり、崩れて出来た壁の隙間から隣の部屋を覗く。
リインフォース達もその隙間から覗く。
するとそこにはガレアス親子とラーズ親衛隊の兵士が広いお盆の様な部屋であらゆる財宝を漁っていた。

「ガレアス公爵、バルマ子爵!先程からギルドマスターラーズのお姿がお見えになりません!」

「ついに本性を現しましたね。お父様」

「あぁ、我らディアマント一族が世界を手に入れる時だ!ロートと奴を大罪人に指摘する!ロートに加担したヴォルケンリッターと言うギルドも壊滅だ!」

勝手な言い分で部下に指示を飛ばす。
シグナムが視線を降ろすと、ヴィータが今にも彼らを叩きのめしに向かいそうな目をしていた。
この壁はかなり脆く、多少の衝撃でも崩れそうだ。
だがシグナムはヴィータの肩に手を置いて落ち着かせる。
はやてが居ない以上ここに用はない事を理解しているヴィータを最後尾に過ぎ去ろうとした瞬間、声が響き渡った。

『ようこそ、私の新世界へ』

再び視線を壁の隙間に向けると、いつの間にか部屋の空中にラーズと縛られ、猿轡をされたはやてがいた。
いや、身体が半透明だから映像なのだろうか。
ラーズの非常な行為にシグナム達は怒りを隠せないでいた。

「な!?くく、空中に浮くなんて……凄い技術だな!」

『虚構とは情けないな。ディアマント親子に私の精鋭だった者よ。まぁ折角の機会だ。新世界誕生の祝砲を見るがいい!』

ラーズはシュベルトクロイツを手に石版に掲げる。
それを横に滑らせる様に動かすと、石版は銀色の輝きを放つ。
そして壁に新たに画面が映し出される。そこはこの真下にある大海原だけが映っていた。
が、エンジェランドから発射された光が海原に突き刺さり、ドーム状の爆炎を上げた。
リインフォース達の住む帝都ナハトヴァールを一瞬で飲み込んでしまう位の規模の大爆発のシーンを見せ付けられ、ディアマント親子は勿論、リインフォース達ですら息を呑む。

「……は、ハハ、ハハハハハハハハハハ!素晴しいよラーズ君!君は英雄になったんだ!」

突然狂った様に笑い声を上げるガレアス。その後ろでバルマが空中に浮かぶラーズとはやてを指し、同時に親衛隊が一斉に矢を放つ。
だが、今居る彼らは映像。当然すり抜けてしまう。

『君達のアホ面には心底うんざりさせられた。ここでお別れだ。死ねぇぇーーーーッ!!!』

掌を返すが如く冷たい口調で言い放ち、シュベルトクロイツを石版に向けた。
部屋に取り残されたディアマント親子と親衛隊はただガタガタと身体を震わせている。
その時、突如壁の悪魔の頭の装飾の目が光り、口を開ける。
底から放たれるは、灼熱の業火。

「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!」

『HAHAHAHAHAHA!見ろ、人がゴミの様だ!』

画面越しに焼き尽くされるガレアス達を見て嘲笑うラーズ。
だが、漸く猿轡を自力で外したはやての体当たりを受けてよろめき、剣十字を口に咥えられて奪われてしまった。

『な、ま、待て!』

『これ以上人を……皆を殺させへん!!』

その様子は隙間から覗いていた5人にも伝わっていた。尚更急ぐ必要があった。
改めて助け出す決意を胸に、5人は少女の元へと急いだ。





薄暗い廊下を必死に走るはやて。
腕は縛られたままなので碌に走れないが、ここで立ち止まってしまえば再びラーズに捕まり、今度はリインフォース達を手に掛けるだろう。
それだけはさせないと壁が崩れ、散乱した破片を避けながら必死に逃げていった。

「……パイロシューター!」

「きゃぁっ!!」

業を煮やしたラーズが炎の魔力弾を数弾放ち、はやての足元で爆発したはやてはとうとう道端に倒れてしまった。

「鬼ごっこは終りかい?大人しくその剣十字を渡せば、命だけは助けてあげよう」

「冗談やあらへん!リインフォース達を……皆を絶対に殺させへん!」

「その点なら安心したまえ。私の邪魔さえしなければこちらも手を掛けない。そう……」

言いかけたラーズが首を横に傾ける。
その瞬間空を切り裂きながら硬球が壁にめり込んだ。
彼の背には————






「邪魔さえしなければ、ね……」

「リインフォース!皆ぁッ!」

そこには先程の硬球を放った、明らかに殺気を持った少女。
表情からは伺えないが、力を込めた拳で敵意がはっきりと解る獣人。
静かな怒りを目に宿し、敵意を向ける女性。
ポニーテールにした桃色の髪を揺らし、愛刀を静かに抜く剣士。
そして、真紅の短剣を構えた、銀髪紅眼の女性。

「追いついたぞ……!」

「ほう、たいしたものだな」

殺意を胸に抱く女性の言葉を、ラーズは皮肉で返す。ある意味不気味だ。
だが眼中に無いリインフォースは本題を切り出した。

「その子を返して倒されるか、倒されてその子を返すか。どちらか選べ」

「月並みな台詞だが、どちらも断ると言ったら?」

「ならば決めてやる……!」



決戦前まで。

天空の城エンジェランド 最終章:その3 ( No.47 )
日時: 2013/10/04 19:11
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: pND9SC4/)

決戦!



「ならば決めてやる……!」

空いた片手に魔力を纏わせ、短剣を持った片手をラーズに向けた。
許せない。許すことなど出来ない。
今まで自分の野望の為だけに多くの命を奪っただけでは飽き足らず、神聖なるこの城を荒らし、挙句はやてを悲しませた。

「今ここで……償え!!ブラッディダガー!!」

「HAHAHA!焼き尽くせ!バーンスプレッド!」

無数の短剣を放つリインフォースだが、ラーズを中心に展開された魔方陣から上がる炎に全て焼き尽くす。
だがそれは囮で本命が飛び上がる。真紅の少女と紫炎の女剣士と蒼き獣。

「テートリヒ・シュラーク!」

「紫電一閃!」

「牙獣走破!」

「ぐおぁ!……許さんぞ、貴様らぁぁぁぁぁぁ!!」

激しい攻防が展開された。
その傍ら、シャマルがはやての元に辿り着き、彼女を縛っていた縄を解く。
だが、戦闘力がほとんど無いうえにはやてはバルマに捕まった際に本を奪われてしまい、何もする事が——



(ううん、魔道書が無くても記憶してある魔法なら……!)

そう思ったはやてはシャマルにアイコンタクトを取る。
シャマルもまた彼女の真意を読み取り、ラーズに感付かれない様に詠唱を開始する。
初めは不意打ち気味の連携で優勢に見えた4人は徐々に追い詰められていく。

「喰らえ!クロックボム!」

「うわっ!……何だこれ?」

ラーズの破掌を受けたヴィータの足元に紋章が取り囲む。
だが気にする暇も無く至近距離の掌低破も受けて引き下がる。

「ヴィータ、大丈夫か?」

心配したシグナムが彼女を支えようと近付き、ザフィーラとリインフォースもラーズの攻撃を受けて引き下がった。
だがその時、時間が達し紋章が爆発する。

「「ぐあああああっ!」」

「「うあああああああ!」」

所謂時限爆弾の様な技だったらしい。
ラーズにまんまと填められ、シグナム達は爆風を間近で受け、立てない。
不気味に笑うラーズは更に追い討ちを掛ける。

「塵と化せ!エクスプロージョン!!」

「はやてちゃん!」

「うん!ヘキサブルバリア!!」

災いを灰燼と化す業火がシグナム達を焼き尽くす前に現れた、はやてとシャマルが形成した堅固なる盾によって弾かれる。
舌打ちして振り返ったラーズの視線には、シャマルとはやてが。

「大人しく高みの見物をしていれば良いものの……!どうやらユー達も消さなければならないようだな!」

「させるか!コメートリヒ・フリーゲン!」

2人を標的にしたラーズの背後にヴィータの放った鉄球が迫る。
事前に防御体制に入っており決定打とはいえなかったが、足止めとしては十分だ。
更にザフィーラの守護の拳とリインフォースのナイトメアが決まる。

「一気に決める!駆けよ、隼!シュトゥルムファルケン!!」

強敵ラーズを相手に一気に畳み掛けようとシグナムが鞘と刀を合わせる。
すると弓に変形し、業火を纏った矢がラーズめがけ空を裂く。
だが、ギルドマスターは全く動じず、対抗するかの様に掌にエネルギーを溜める。

「喰らえ!パイロブラスター!」

突き出す様に出した掌から、超高熱のビームが繰り出され、シグナムの矢をあっさりと破る。
そして威力を衰えず、足元に被弾した直後に大爆発がシグナム達を襲う。

「ぐあああああああああああああ!!!!」

「があああああああああああああ!!!!」

「うわああああああああああああ!!!!」

「うあああああああああああああ!!!!」

「皆!」

「待ってて、今治癒術を——」

「穿て!バーンストライク!!」

「「きゃあああああああ!!」」

無慈悲なるラーズの火球の弾丸をシャマルとはやてに落とす。
被弾と共に爆発し、2人はシグナム達に吹き飛ばした。
これで全員が一箇所に集まってしまい、ラーズからすれば纏めて始末する絶好のチャンスとなる。

「……ぐっ……負け、るか……!」

「しぶとさだけは人一倍だな。我が臣下にしたいものだ」

「誰が貴様らの臣下になど……!」

消えない怒りを眼に宿したリインフォースとシグナムは立ち上がる。
だが、己の力に絶対的な自信を持つラーズは全く動じていない。
かと言って引く気も毛頭無い。












——これとシュベルトクロイツ、そして夜天の主の力を合わせりゃこの城を制御できるって聞いた。







「お前達、立てるか……?」

「立てるに……決まってんだろ!」

「俺もそこまで柔じゃない……!」

「皆と比べたら、私なんてまだ良いほうだわ……」

「私も、まだまだ……や!」

全員が術やラーズの炎を直撃したものの、全員まだいけそうだ。
悟ったリインフォースはマグナがくれたヴァッフェントレーガーをはやてに渡す。

「!貴様!それを一体どこで!?」

手渡された物の招待を悟ったラーズがここで青ざめた。

「はやて。その2つを手にして祈れ。

























——この城を崩壊させるって!!」

反響するリインフォースの声にはやてとヴィータとシャマルは勿論、シグナムやザフィーラ、はてはラーズですら眼を白黒させてしまう。
だが、リインフォースの真意を理解したはやては何の躊躇いも無くシュベルトクロイツをヴァッフェントレーガーのくぼみに填め、両手を握り締めて祈りだした。

「や、やめろ!」

ラーズも彼女の考えを理解したらしく、はやてを襲う。
だが、その攻撃をシグナムの刃が受け止めた。

「行くぞ……!獅子次:葬炎!」

「ぐぉあ!?」

刹那、腹部が鮮血が吹き出すと同時に斬り裂かれていた。
だが、ギルドマスターの実力は半端なものではない。
何とか踏ん張って大技を出し終え、更に多大なダメージから隙だらけのシグナムを狙う。

「死ね、ゴミが!」

「させないっ!!」

直後、ライトグリーンのワイヤーがラーズを縛る。
直後にザフィーラとヴィータが攻撃を放つ!

「縛れ!鋼の軛!」

「轟天爆砕!ギガントシュラァァァァァァーーーク!!!!!」

拳を地面に打ちつけた直後に銀色の巨大な棘がラーズを拘束する様に貫く。
続くヴィータがハンマーを高く掲げると、胴部が伸び、頭部が数十倍に巨大化する。
その幼い身体からは想像出来ない力で振り下ろし、ザフィーラが出した軛ごとラーズを叩き潰す!!

「来よ、夜の帳……ハァァァァ!」

トドメにリインフォースが地面にめり込んだラーズに魔力を溜めた手を叩きつける。
そこから闇の魔力が膨れ上がり、乱気流の様な空間に閉じ込められる。

「撃ち抜け……夜天の雷!」

Re: 小さな書庫の騒動【短編集】 ( No.48 )
日時: 2013/10/04 19:15
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: pND9SC4/)

「撃ち抜け……夜天の雷!」

「うおおおおぉぉおぉお!!まだ……終わらん!」パイロブラスター!!!

ラーズが最後の抵抗として力の限り高熱のビームを放つ。

「これで……終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「ぬぁおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおああああああああああああああぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!」

最強魔法のラッシュからの紫電の轟雷は、灼熱のビームを呑み込み世界の頂点に君臨しようとしていた偉大なギルドマスターをそのまま吹き飛ばす。
幾多の柱を貫きながら、壁に叩きつけられて静止する。
力なく、糸の切れた操り人形の様にへたりと地面に崩れ落ちた。

「勝っ……た……」


5人が深い呼吸をしながら肩を落とす。
が、今度は後ろから凄まじい振動が起こる。
息つく暇も無く振り向けば、力の制御に苦しむはやての姿だった。

「う………ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

「はやて!!!どうした!!?」


「はやてっ!!?」

「…HAHAHA………無駄だ…………」

再び不気味な声が後ろから蠢く。
それは身体の至る所から流血の痕が目立つ、嘗てのギルドマスター、ラーズの哀れな姿だった。
恨みとも取れない、喪失感と取れる弱弱しい声が響き渡る。

「これだけの城を……制御するのだ……あの小娘一人で……支えられるものか……」

「——ッ!だったら!」

一人が無理なら、更に誰かが支えればいい。
5人は少女と共に両手を重ねあう。
しかしこの城を制御する力。6人がかりになっても変わらない。

「ぐっ、あああぁぁぁ!!」

「みん……な、アカン……!このままやと、皆……!」

「ふざけるな!ここまで来たらもう一蓮托生だ!こんな所で、お前を失って……たまるかああああああああ!!!!!」

リインフォースの必死の叫びに応呼する様に他の4人もその意思であった。その直後、強い光が収まっていく。
客観的な支店からか、6人は全く気付いていない。
しかし、自分の野望の完成の邪魔になる2人を排除しなければならないラーズは、再度破掌を構える。

「パイロ……」

「「「「「「うああああああああああああああああああああ!!!!!」」」」」」

その直前、重ね合った両手から光が溢れ出した。
眩しき輝きは癒しと滅び、その2つの意味が取れる。

「ぐああああああああ!!!目が……目がああああぁぁあああああぁあぁぁああああ〜〜〜〜!!!」

余りの眩しさに失明してしまったラーズが、目元を押さえて喚く。
少女の祈りが届いたのか、今まで最大の衝撃が亀裂を生む。
天井が崩れだし、巨大な瓦礫がそのまま一切の悲鳴を上げる事無くラーズは瓦礫に飲まれて消えた。
崩壊が激しくなるので早く逃げ出したい所だが、今までのダメージと先程の制御で力を使い果たした6人はそのまま気絶してしまった。





「……何事?」

激しい戦闘を繰り広げていたパルテナとハデスが戦闘を止める。
それだけでない、聖堂の道と連合軍も動きを止めた。
直後、亀裂が走り2人の神は反対方向に跳ぶ。

「まさか……城が崩壊する!?」

「こりゃまずいね……モノリス部隊出撃!フォーメーションカーペット!」

ハデスの宣言に正方形の板の冥獣が現れ、数体重なったりして巨大な大小さな様々な形になると次々と冥獣を乗せて天空に消える。

「こちらも撤退しましょう!急いで!」

「ちょっと待って下さい!まだヴォルケンリッターとはやてが!」

「こんな状況じゃこっちも巻き添えだぞ!」

「彼女らの救出はある人に頼んであります!ですから早く!」

ピットが叫ぶ様に反論を上げるが、ブラピの判断によって一蹴される。
マグナもブラピの意見に賛成し、ピットとブラピとパルテナは飛翔の奇跡で、マグナは帝国軍のバリィを奪い、徐々に大きくなる亀裂を避けながらバリィに乗って崩落する城を脱出したのであった。
取り残された6人に、たった短時間で気にかけるはずも無かった……。

天空の城エンジェランド 最終章:その5 ( No.49 )
日時: 2013/10/04 19:21
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: pND9SC4/)

本編ラスト。






「……ん……」

法をなでる風の感触に、はやては目を覚ました。
目覚めた彼女を迎えたのは、痛い位熱い右手の感触と、足元に地面の無い、ぶら下った感覚。

「……って、なんで宙ぶらりんなん!?」

「はやて……重い……」

「それは上の2人が言うべき台詞だぞ、ヴィータ……」

右手に感覚を与えているのはヴィータ。更に彼女の手を2人掛りで掴むシャマルとシグナム。そして一番上。その2人の手を掴んでもう片手で古き木の根を掴んでいるリインフォースとザフィーラ。
長い年月をかけ、育ってきた木の根が見る影も無く崩壊するはずだった天空の城を繋ぎとめたのが幸いしたが、危機を脱していない。

「何とか足を着ける所を探さないと……!」

「おい、必死な所を失礼するが、話を聞いて貰いたい」

「なんだよこの必死な時に!」

「安心しろ。一言で済む」

「……なんだ、一体?」













「「千切れた」」

リインフォースとザフィーラがすぐ隣に居たシグナムとシャマルに千切れた木の根を見せる。
握っていたそれの意味に2人が顔を青くする前に、ぐらりと体制が崩れ……

「「「「うわああぁぁぁ———……!!」」」」

「「きゃああぁぁ————……!!」」

盛大な悲鳴を上げながら、小雨の如く落下していく。
だが、今は手元にシュベルトクロイツは無い。遥か天空の城から落ちる感覚は一瞬とも永遠とも感じられた。















——ボフッ!!

「「「「「「ぶふぅ!?」」」」」

不自然にも干草の様な、いや、干草だった。
口の中に入った草を吐き出して起き上がると、見知った人物と彼が乗る馬車を引く、2頭の一角獣の姿が。

「チャリオットさん!!」

「そちらが空から来てくれるとはな。これならもう少し遅く来ても良かったか」

紛れも無く、今まで運んできた聖堂の道のギルド員、チャリオットと彼の相棒と呼ぶべき愛馬、フラッシュとシルバーだ。
彼が言うにはパルテナの連絡を受けてここまで駆けつけたという。
全てが終わったのだ。安堵感に包まれた6人に、聖堂の道の3人とマグナがバリィに乗って寄って来た。

「無事だったみたいですね」

「ほんとに心配したんですよ!」

「ったく、渋とさだけはとんでもないな」

口々に行ってくる皆に、6人はなんて返せばいいのか解らなかった。

「……無事だったか」

「お前が心配してくれるとは珍しいな」

「馬鹿野郎。あの短剣を使って城を壊す奴に心配なんざ不要だろ」

ふん、と鼻息一つ鳴らして皮肉を返し、そしてはやに向き直る。

「はやて、もう時間だ」

「あ、はい……」

「お別れ、か」

「まぁな。今頃城じゃ大騒ぎだ。さっさと終わらせる事終わらせろ」

「……はい」

頷いてバリィの元まで歩むはやて。
リインフォースとすれ違った直後に、リインフォースが口を開く。
はやてにとっても悪くない。

「もしうちに入りたかったらいつでも来い。歓迎する」

「え……?」

「賛成。はやてちゃん見たいな子が居たらもっと楽しくなるわ」

「私もだ。ただ、うちの貴族嫌いをどうしなければならないがな」

続いてシャマル、シグナムも言って来る。ザフィーラは無言だが、彼女を拒んでいる表情ではない。ヴィータは照れ隠しなのか、そっぽを向いている。
だが、はやてもギルドに興味をもったのも事実だ。

「行くぞ」

マグナに急かされ、バリィに乗り込む。
それを確認し、マグナがエンジンを点火、飛翔させる。

「皆……本当におおきになー!!さようならー!!」

はやては片手でマグナに掴みながら、光の戦車の6人の姿が見えなくなるまで叫び続け、そして雲の中に消えた。
ヴォルケンリッターの面々は、不思議と別れの悲しみを感じていなかった。また会える。そんな気がした。





あの冒険から数ヵ月後。
世界規模の帝国ギルド「オーラム」の解散など、慌しい日が過ぎ、いつもの様にギルドのクエストを受けこなしていた。

「今帰ったぞ」

「ただいまー!」

狼形態のザフィーラが買い物袋の持ち手を咥えて、ヴィータを乗せて帰還してきた。
今日の依頼は少なく、全て終えたら買出しなどの雑務を終えたら休日とリインフォースが言い出したのである。
で、今はそれが終わったので全員休暇。
全員が午後の休暇をのんびりと休んでいる。
その時、入り口の扉をノックする音がして、リインフォースが対応に出る。
ザフィーラがそれと同じタイミングで、新聞をテーブルの上に乗せた。

「実はな、新聞である記事が目に入ってな。これを見てくれ」

「え?——あ、はやてちゃん!」

「『国王第2後継者八神はやて、貴族の権限と後継者の地位を返上。第3後継者が後を継ぐか?』か。あの子も大した事をするな」

「なぁ、これってどういう事だよ?」

「はやては自ら、貴族の地位と後継者である証、更には親族との関係を絶ったと言う事だ」

「何でこんな事を?」

「皆の所に行きたかったからやで」

新聞の広告に集中する中、突如後ろで懐かしい声がシャマルの疑問の呟きに答えた。
——まさか、その言葉が胸中に入ったまま振り向くと……

「はやてっ!?」

「この子は今日、新しくヴォルケンリッターに入ることになったんだ」

大きなボストンバッグを肩に下げたはやてを右手で示し、リインフォースが新たなギルド員の紹介を告げる。

「皇族はギルドに入れへんから、わざわざ貴族としての地位を全部返却して来たんや。せやからもう私は貴族やない、このギルドの八神はやてとして住む事になったんや」

「確かに。うちには根っからの貴族嫌いが居るからな。ある意味正しい判断だろう」

「そうね」

「あんだよその言い方は!」

シグナムがその理由に理解して微笑し、シャマルも苦笑しつつ頷く。対してヴィータは自分の髪以上に真っ赤にして反論した。
そんな光景に微笑しながらもリインフォースははやてと向き合う。

「ようこそ、八神はやて。そして……お帰り」














「ただいま!」


天空の城エンジェランド:完結

Re: 小さな書庫の騒動【短編集】 ( No.50 )
日時: 2013/10/04 19:37
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: pND9SC4/)

〜あとがきと言う名の辻褄合わせ〜


さて、この話は自分がらラピュタに嵌っていた時に突発に考えたパロディです。
が、かなり(で収めれれるレベルじゃない)時間を置いてしまいましたOTL
今度はもうちょっと短いものの派炉でも書いていきますかね……;
さて、今回はこのあとがきの面を借りた辻褄合わせを行います。


辻褄1「この作品の世界観って?」

A:簡単に言うならラピュタのストーリーにFAIRYTAILの世界観をあわせたものです。
この世界のギルドは大まかに以下のとおりにです。

帝国に忠誠を尽くす、騎士団の様な存在の「帝国ギルド」

魔術を生業とし、クエストを請け負う「魔道ギルド」

物品の売買を中心にする「商業ギルド」

鍛冶で包丁や武器、防具の生成を生業とする「鍛冶ギルド」

傭兵を各戦地に戦士を送り、一時的な戦力加担を担う「傭兵ギルド」

帝国から解体命令を受けているにも拘らず、殺人や窃盗などの依頼を中心に受ける「犯罪ギルド」



辻褄2「リインフォース以外の設定を教えて」

これは以下の通り。


シグナム:遥か東方にある「和の国」出身の剣士。より強い相手を探して居た所をギルドを作ろうとしていたリインフォースに誘われ(と言うかうまく丸め込まれて)、ギルド員になる。メンバーの中では古参者。

シャマル:ヴォルケンリッターが拠点とする「ナハトヴァール」出身。医師としての勉強のために励んでいたが、リインフォースやシグナムと知り合い、ギルドに興味を持って参加した。考古学少し程度だが詳しい。

ザフィーラ:獣人だけが住む街「パルマコスタ」出身。他を寄せ付けない様な雰囲気で街でも評判が悪かった。だが、恩義は通す人物であると解ったリインフォースが引っこ抜く形でギルド員となる。今では寡黙ではあるが、昔よりは角が取れた。

ヴィータ:本名は「ロート・ディアマント」。ガレアスの子兼バルマの妹。家族に対しても敵対心を見せていたが、唯一心を許せる姉が居た。その姉は数年前に事故死。だがその夜、あの事故が家族が仕組んだ殺人だと密かに知り、脱走。行き場の無い所で行き倒れになった所をリインフォースに拾われた。


以上で辻褄合わせ終了。感想お願いします。