二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【まどマギ】それは優越感か後悔か 【リクエスト募集中!】 ( No.73 )
日時: 2013/07/19 23:02
名前: おなかへった ◆scEpNWmRjQ (ID: n6vtxjnq)

「納得いかないみたいだね。じゃあもう一度尋ねるよ。お願い、聞いてくれるかい?」

 言葉はしばらくかえってこなかった。しずかな空気があたりにただよう。
 わざとらしくならされたしたの音で、それがやぶられる。
「・・・・・・てめぇの要求は何だ」
 おち着いた、けれどもすざまじい殺意がこめられた声が続く。
「ありがとう、聞いてくれるんだね。貴方が物分かりの良い人でよかったよ」
「御託はいい、さっさと言え」
「おっと、これは失礼したね」
 遠くにはなれている私でさえはっきり感じとれる殺気が出ているのに、あの人はにっこりと笑顔だった。はだをさすようなピリピリしたものが強くなったのは、いらだったからにちがいない。

「私の要求は至って簡単だ。病院内に居る私達の安全を保証してくれるだけでいい。ああ、この病院でおこった不祥事は私が責任を持って処理しておくよ。どうだい? 実質貴方は何もしないだけでいいんだ。悪い話ではないだろう?」
 とあの人は言っているが、その何もしなくていい、ということが桜綺ちゃんにとってうなづきがたいものだ。イエスかノー、どちらも言いづらくて、やはり本人は口をとざしていたが、
「・・・・・・いいだろう」
けっきょくはイエスをえらぶしかなかった。ノーをえらべば、もれなく魔法少女ではなくなるのだから。

「交渉成立だね」
「・・・・・・ちっ」
 くやしさがにじみ出たしたうちで、辺りは元にもどっていった。うすぐらい空間はじょじょに消えてゆき、上の方から白いかべがあらわれ、光がさしてくる。
「さっさとナイフを退けろ」
「勿論。ソウルジェムも返すよ」
 その言葉を合図に、桜綺ちゃんはじゆうに体をうごかすことができるようになった。もしかしたらこうげきするのではと私は心配したが、かたやうでををぐるぐるとまわすだけだった。

「はい、どうぞ」
あの人は桜綺ちゃんにソウルジェムをさしだした。ふん、と一ついきをはいて、桜綺ちゃんはじろじろ見た後、ひったくるようにほうせきをとった。
「私達はこれで失礼するよ」
180度向きを変えて、あの人は歩き出す。コツコツコツ、とヒールの音が三回鳴ったが、すぐに止んだ。何かわすれていたのかな。
「ああ、そうだ」
 念のため、とさいしょに付け加え、あの人は体を半分だけ桜綺ちゃんに向ける。そして目を細めて、口を動かした。

「聡明な貴方のことだからしないとは思うが、まさか不意打ちなんてことはしないだろうねぇ?」

 返事はこない。だまりこくったままだ。
「・・・・・・ただ言ってみただけさ、きっとしないと信じているよ」
 それじゃあ、とそれだけつげて、あの人は私と紫藤さんのもとに近より、気を失っている紫藤さんをだきかかえる。キズはふさがっているとはいえ、紫藤さんは手負いの体だ。もしかしたらキズ口がまた開くかもしれないので、こわれものをあつかうようにやさしく、上に持ち上げた。

「さて、もう用は済んだ。早くここを去ろう」
「でも、どこへですか・・・・・・? ここからべつの病院は遠いし・・・・・・」
「それならば私の家はどうだい。そう遠くないし、匿うには最適だろう?」
 病院から歩いて5分もかからないよとあの人は言う。それならだいじょうぶかな、と私はうなずいた。
「それじゃあいこうか」
 ヒールの音をひびかせて、私たちはあの人の家へと向かった。