二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 新米守護天使 ( No.4 )
- 日時: 2013/03/29 13:34
- 名前: スライム会長+ (ID: AQILp0xC)
2人の天使が音も立てず、ふわりと降りた。
彼らの降りたところはウォルロ村という、郊外にある小さな田舎村だ。
ウォルロ村は水が豊かな大自然に囲まれた土地である。
村を2つに分けるように流れる大きな川があり、昼間には川に突き出た縁側で釣りを楽しむ者もいる。
さらに、地下には栄養豊富な地下水が眠っている。
井戸も作られ、家庭用水として大いに役立っていた。
井戸端での洗濯しながらの会話はよく弾む。
さらに川の上流に位置し、村のシンボルともいうべき『ウォルロの滝』が、水しぶきを上げて、休む暇なく勢いよく水を落とし続けている。
このウォルロの滝に流れている水は『ウォルロの名水』と呼ばれ、あらゆる病に効くといわれている。そのため、はるばる水を求めてやってくる者も少なくない。
そして、滝のすぐ横、1段上がったところに石でできた守護天使の像が置かれている。2人の天使はこの像のまえに降り立った。
彼ら2人の天使の名は、イザヤールとナイン。
背が高く、がっしりとした体つきのほうがイザヤール、もう一方の、人間年齢だと15,6くらいであろう少年がナインである。
イザヤールは村全体を見渡した。
「よくやっているようだな。皆から喜のオーラを感じる。」
イザヤールの言葉に対し、ナインは軽く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
「どうした、声も顔も固く、こわばっているぞ。
心配しているのだな。自分の村への行いが正しいかどうかを。」
「それはそうですよ。守護天使に任命されて、初めてのチェックですから。」
ナインの声はやっぱり固い。
「適度な緊張は必要だが、固くなることはない。
固い鉄は硬いがもろい。風に揺れる木々の枝のようなしなやかさも必要である。
それに、いつまでも確認されるわけではない。
注意や指摘を受けられるのは、今のうちだけだ。
チェックを受けているようでは、本当の一人前の守護天使とは言えぬ。」
イザヤールに指摘され、ナインは大きく息をついた。
「そうですよね。今までしてきたことを見せるだけですもんね。
頑張ってきたんですから、堂々としていていいですよね。
僕、お師匠さんのチェックなしでも安心してもらえるように頑張ります。」
顔の筋肉がほぐれ、自然と笑顔になった。
イザヤールは守護天使の石像に手をかけ、台座に刻まれた文字を見た。
「この村の守護天使の像の名には、確かに私の名ではなく、ナイン、つまりお前の名がしっかりと刻まれている。
守護天使として恥のない行動をとれば、天はいつかお前に味方するだろう。」
おちついた声でイザヤールは言った。
ふと、振り返ると、新人天使の成立を祝っているかのような素晴らしい景色が見えた。
丸太木を組んでできた家々の屋根を吹きぬけて、宏大に広がっている地平線はどこまでも途切れることなく広がっていた。
そよ風がナインの頬の横を通り抜けた。
冷たい風が気持ちいい。
ナインは、この風に乗れば、どこまでも飛んでいけるような気がした。
「あれは・・・」
イザヤールが声を漏らした。
イザヤールの声を聞き、ナインもイザヤールの見ている方を見た。