二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.211 )
- 日時: 2013/02/03 22:15
- 名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: vQ7cfuks)
が、風がマルヴィナの背筋を震わせた後、マイレナの表情がようやく、当初のものとなる。
『ごめ。話戻すか。…んとね…とりあえず、落ち着いて聞きなよ』
謝りの言葉の“ん”を抜いたのはわざとなのか? と、この軽い人物(?)の話し方が
大分理解できてきたマルヴィナは思った。
『マルヴィナが天使界から落ちた時、嫌な波動が襲ってきたっしょ』
マルヴィナが頷く。マイレナは一度ふっと天を仰ぐと、そのまま唇をほぼ動かさずに、早口に言った。
『…あれを放った者と、霊を甦らせている者は、同一人物だよ』
雷が身体を走ったようだった。目は見開き、足はすくむ。
「……………………………ぅ」
嘘だろ——思わず、言いかけた。もちろんこの状況で嘘をつかれたはずがないということは、分かっている。
だが、そう言いたくなるほどに、衝撃的過ぎたのだ。
もう、何年前になる? …天使たちの笑顔が、喜びが、ただその一撃で砕かれたあの瞬間。
あれで、どれだけの天使たちが行方不明になったのだろう——
「………………………?」
ふと、とある疑問が頭をかすめた。だが、マイレナは、そのまま話を続ける。
『正体は、今は知っちゃいけない。だけど——いつか知ることになる。ただ、これだけは言っておくよ。
…そいつは、マルヴィナに、深く関係している』
「なっ!!?」驚いてばかりだ。「わたしに…? どういう事なんだ、わたしに関係するって、一体何なんだよ」
『それは』マイレナは一度言葉を切る。
『ウチが言ったら、とんでもないことになる。…それは、自分で探り、自分で見つけること。
人から聞いたことは信じられなくなるところがある。でも。自分で見つけたことは、
どんなに信じがたくても、それが真実だってことで、信じなければならないからね。
…だって、自分の目なんだから』
マイレナの少し難しい話に、マルヴィナは少なからず驚いた。
そして、思う——この人は、本当に賢者なんだと。
『まぁ、まずは天の箱舟とか言う乗物に戻りな。果実は、そろったんだからさ』
「………………………………」マルヴィナは一度、黙った。
「本当に、分かるのか? いつか…それは近いのか?」
『わかるよ。遠いか近いかは…あんた次第かな』
そういうなり、マイレナは少し消えかかる。…だが、彼女は。完全に消える前に——こういった。
『それに、どうせ戻れないから』——マルヴィナには、聞こえない声で。
翌朝——マルヴィナはセントシュタイン城に赴き、リッカと久々に会話した。
もしかしたら、もう会えなくなるかもしれない。だが、長居はかえって、辛さを仰いだ。
マルヴィナは耐え切れなくなって、昼前には宿を出た。
「また来てね」——リッカの、何も知らない屈託のない笑顔を、少し寂しそうに受け止めながら。
そしてその昼——アユルダーマ島、ダーマ神殿西、草花の生い茂る草原の中、蒼い木の前——
「シェナ、いいね。逃がさんぞ」
「………………………………………」
・・
天使界へ戻ることを、シェナは前回と同様に渋っていた。だが、マルヴィナの必死の説得で、
観念したのかどうにかここに立つまでに持ち込んだのだ。
「…で。結局、どーやって呼び戻すんだ?」
いつかサンディは言っていた——箱舟が今蒼い木の所にないから果実は箱舟の中には入れられない。
じゃあどうやって帰るんだよ!! とセリアスが言ったところ、マルヴィナが「当てがある」と言い出したのだ。
前回まで、そんなことは言わなかったのに。
「で、何でマルヴィナが知っているんだ?」
キルガの悪気ないぽつりとした意見に、
「あー…なんでだろうね? ウン」
マルヴィナが何とも曖昧に答え、
「いやウンじゃないぞ」
セリアスが手を上下にひらひら振ってツッコミを入れる。
そうこうしているうちに、マルヴィナは木の前に立ち、その堂々たる幹に手を触れさせる。
マルヴィナが目を閉じる。途端、葉の蒼が、マルヴィナを包み込む!
ない風に吹かれて、マルヴィナの髪が踊る。目を見張る三人と、黙ってそれを見るサンディの前で、
マルヴィナは唇を動かさず、厳かに言った——
「…神の創りし天空の舟よ。女神の力宿せし聖なる樹木の前に、今姿を現せ——」
遠くから、甲高い汽笛の音が鳴り響く。キルガが、セリアスが、はっとする。
黄金色の曲線を引きながら、それは次第に姿を現した。
女神の果実同様、優雅な金色を携えた、天の箱舟、まさにそれであった——…。