二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:   永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.66 )
日時: 2013/01/19 22:28
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

「…ど、どーなってんだ? 今の声、一体…」
 セリアスが変わらぬ体勢のまま、マルヴィナを見る。
「なんかマルヴィナにかなり期待してたみたいだけど」
「分かんないって。とりあえず、長老オムイさまにこのこと報告——」
「聞こえておったぞ、守護天使マルヴィナよ」
 別の場所から聞こえた言葉に、マルヴィナは立ち上がり、キルガは振り返り、セリアスは体勢を整える。
無論、長老オムイであった。近衛天使とともに、杖を片手に、しっかりと頷きながら。
まさか来ていたとは思わず、三人は慌てて敬礼した。それを制し、オムイは三人に命じる。
「…今のはきっと、神のお告げ。お前たちが、女神の果実集めを命じられたのならば従うのみ!
マルヴィナ、キルガ、セリアス。再び人間界へ赴き、散らばった七つの果実を集め無事戻るのじゃ!」
 ——託された使命。それは——
「はっ」

 その意味を、胸に刻みつけて。三人は、同時に了承した。
僅かにもずれることなく。




 長老たちを見送って、うわぁハイって言っちゃったけれどこれ超重要な仕事じゃん的な表情になってから、
セリアスはふと気づく。
「まった」
まさに箱舟へ向かおうとしていたマルヴィナとキルガは足を止めた。
「何?」
「運転士。箱舟の」
「あ」
 サンディである。
 彼女は、天使界についたいなや『テンチョー探し』と称してどこかへ行ってしまったのである。
テンチョー = 天の箱舟の真の運転士 であることにはしばらくしてから気付いた。
「………。とりあえず、行ってみない? 何か案が見つかるかもしんないし」
「…期待はしないでおく」
 その答えにマルヴィナはあいまいに答えつつ、トコトコ歩くこととなる。
「あいつワケわかんない時にいて肝心な時にいないんだからなぁ」
 いつもフードから後ろ髪をひかれる(別に未練が残って云々の意味ではない)マルヴィナは
皮肉も込めてそう言ったが、扉を開けた後のそこにサンディ張本人がいるのだからたまらない。
「うわぁぁっ」
 当然、マルヴィナは盛大に驚いた。思わず身を引いて、セリアスに背中がドン、と当たった。
ちなみに小揺るぎすらされていなかったが。
「うはっ!? な、何ヨ。アタシが何!?」
 いきなり驚かれたサンディは、原因も知らずそう答える。
「なな、な何でいんのっ!? アンタ『テンチョーサガシ』してたんだろっ!?」
 言われたサンディはその場で腕と足を組み、ぷぅ、とむくれる。
「しゃーないじゃん。あのオッサンいないんだし。なーんか人間界で行方不明っぽいのよねー。
でもテンチョー探さないとバイト代もらえないしさー。…正直探すの超メンドいんですケド」
 三人は顔を見合わせる。人間界?
「てゆーか何でアンタ達こそここにいんの? ハネもワッカもないから天使界追い出された?」
「阿呆」
「うっわセリアスにだけは言われたくないー」
「お前なぁぁぁぁ」
 この二人は相性が悪いのか? と考えるキルガ。
「…まぁいい。人間界に散らばった女神の果実を集めることになったんだよ。ちゅーワケで人間界連れててて…」
 マルヴィナとキルガが語尾に妙なものの入り混じったセリアスの言葉に反応し、彼を見る。
「かんだ」
「…………………………………………………………………………」
 シラけた空気が漂い、だがサンディがすぐに打ち破る。
「まっ、アンタらが人間界行くんなら、協力してあげてもいーヨ?
…でも、箱舟ちゃんまだ壊れてるっぽいのよねー。ちゃんと人間界に停められるのかあやしーんですケド」
「無責任な」
 セリアスが呟き、
「サンディ、青い木、見える?」
 マルヴィナが話を進めた。
「青い木? ——あー、うん、あるケド」
「そこに停められるはずだ」
「はぁ? つか何で知ってんの?」
 マルヴィナはそのままの表情で答える。
「何かさっき不思議な声が聞こえてさ。そこに行けって」  イザナ
「マルヴィナ?」キルガだ。「確かにあの声は、青い木が僕らを誘うとは言ったけれど、箱舟を停められるとまでは言ってないよ」
「…え? でも、停められるはず…」
 珍しく弱気な、だが少々にじむ確信の声に、キルガは首をかしげる。
「あー、グダグダメンドい! ちょいまち。調べてやんから」
「調べられるのかよ」
 だったら最初にそうしろよ、…とまではセリアスは言わなかった。



 箱舟が出発する。
 青い木に、確かに停められるということが分かってから——