二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:   永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ ( No.71 )
日時: 2013/01/20 21:35
名前: 漆千音 ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

 当然だが、その大声に反応した者がいる。
 メイドと、とある武闘家であった。
「イヤイヤイヤイヤイヤてめぇ冗談でいう事じゃねーぞそれ!!?」今にも胸ぐらをつかんで
縦にぶんぶん振りそうな勢いのセリアスを制するべくシェナがチョップを叩きいれる。
「冗談なのか!?」
「冗談じゃないよ! ボクは見たんだ! あぁ信じてくれ小鳥よ」
「一気に信用無くなった!」
「ヒドイ!」
「あの果実」空気をぶち壊して、キルガが冷静に、けれど内心焦りに焦って言った。
「人間が口にすると、まずい」
「な、何だいキミいきなり——」あ、やば、と言うセリアスの声がした。見れば二人とも少々退散している。
マルヴィナとセリアスにとっては案の定、シェナとスカリオにとっては驚くことに、
キルガは鋭い睨みと固められた拳、半端ない殺気を醸し出した。
「………」蛇に見込まれた蛙、というのはこういう事だと誰もが思った。
 キルガが誰かの話をさえぎると言うことはよっぽど重要な話があると言う事であり、
またこの時に下手に話を続けるとこうなる。まだいい方である。恐ろしいときは、
——イヤこれ以上言うのはやめておこう。
「…なんで?」
 ともかく、その雰囲気に少々首をすくめながらも、シェナが問い返す。
自分がつい公共の場で大声を出してしまっていたということにようやく気付いたマルヴィナは、
いくらか声をひそめてシェナに知らないの? と聞き返し、素早く説明した。
「女神の果実は、願いを叶えるチカラがある。…だけど、願いがあまりにも強すぎたり、
心に邪悪があったりすると、食らったものの身体から破壊したり、
自分を抑えることが出来なくなるらしいんだ」
「…え」シェナは視線を逸らした。「何それ、知らなかった…てか、まずいんじゃないの? それ」
「かなりまずい。邪念はともかく、強すぎる願い事はありがちだし…スカリオ!」
「なんだい?」
 名前を呼んでもらったスカリオはいい返事をする。
後ろのセリアスから剣を少々抜いた音がしたのは気のせいか。
「大神官が行きそうなところを知っているか!?」
 そんなことは当然気にしていないマルヴィナは鋭く言い放つが、
スカリオはビクッと硬直し、あさっての方向を見る。
「…………………………………」
「…知らないのか?」
「とんでもない。ただボクが興味あるのは可愛い女の子の行く先で——」
「知らないのね」
 簡潔に呟いたシェナの発言には六本ほど棘がくっついていた。
「…肝心な時に…」
 そんなことで八つ当たりも出来ないのだが——

「…あの…心当たりが、あるんですが」

 こういった言葉が聞こえると、やはりスカリオの間抜けさを感じさせられるマルヴィナである。
 視線を転じた先に立っていた者——それは、例のメイドだった。
「はい?」またしても突然現れた初見の人間に視線を転じるマルヴィナ。
「あの…あたし、最後に大神官様にお会いしたんです。
果実も、大神官様がデザートとして出して欲しいと言われたので…お出ししました。
でも…それを口にされたとき、大神官様は、急に人が変わったようにフリーフロアを退出されたんです」
 四人は顔を見合わせた。
「間違いないな。女神——」        ・・・・・・・・
 言いかけて、セリアスは一度口をつぐむ。「俺らの探している果実だ」
「そのようだね」殺気モードの解けたキルガも頷く。
「それで、心当たりがあるって言うのは?」
 スカリオに対するものとは全く違う口調で、マルヴィナが尋ねる。ほとんどスカリオは無視されていた。
「ダーマの塔、さ」
 次に言ったのは、武闘家の男である。シェナはその様子から、あ、この二人恋人だ、と鋭い観察力を見せた。
「塔?」
「ああ」武闘家は答える。
「昔は転職の儀式はそこで行われていたんだ。だが、今は魔物の巣窟…誰も近寄らないが、
多分、そこにいると思う。俺も探しに行きたかったんだが、コイツ一人残してはいけないしよ」
「愛ね」シェナが呟く。
「んじゃ、わたしたちが行こう」マルヴィナはその話を聞くなり勢い良く仲間を振り返り、
拳を握り締めて言う。
「あんたらが!? い、いや、だけど、…あそこの魔物は強いぜ? 大丈夫なのか…?」
「じゃ誰かについて来てもらう」
 あっさりと言ったマルヴィナに、おいおい、とつっこむセリアス。

 …その後、マルヴィナはロウ・アドネスをつれて戻ってきた。
一体どうやって説得したのかが大いに気になるところだったが、彼女は何も言わなかった。
いきなり現れた大男にスカリオはビビり、武闘家男は安心した顔になる。
「ロウさんが一緒なら心強い。…悪いな、あんたたち。こんなこと頼んじまって」
「ご、ごめんなさい…」
「謝る必要はないよ。どうせ、わたしたちは行かなきゃならなかったんだし…ね!」
 マルヴィナが同意を求める。当たり前、と言うように、三人は頷いた。

 この四人…武闘家男は、目を細めた。
 もしかしたら、見かけによらず、凄い奴らかもしれない。会話から、何となくそう思った。






 一同は、ダーマの塔を目指す。

 何故か人数が六人いたが。