二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: Ib —『さよなら』の先に— ( No.70 )
日時: 2013/12/29 20:30
名前: 緑茶 ◆hjAE94JkIU (ID: v2e9ZzsT)

*3

 絵の言葉だからだろうか、どうやらイヴには聞こえなかったようで、スタスタと先に行ってしまった。絵の言葉に衝撃を受けて立ち止まっていた私は、ハッと我に返り、すぐにイヴの背中を追った。
 探索中、イヴが「早くここから出たいね」とか「ギャリー、一人で大丈夫かな……」とか話していたが、正直の所、今の私はそれどころではなかった。

 ギャリーが私の秘密を知った。

 それはつまり、私が絵である事を知ったのだ。

(きっとギャリーは、私が襲って来るお姉ちゃん達と同じだと思っているよね……)
 イヴとギャリーに取って、ここの作品=襲って来ると言うイメージなのだろうから、仕方無いと言えば仕方無い。
 けれど合流したら、おそらくギャリーはイヴに、私が絵である事を話すのだろう。そうすれば、イヴと二人で外に出られなくなる。それだけは避けたかった。

 どうしようかと頭を悩ませていると、隣の部屋からポソポソと話し声が聞こえてきた。
 中に入ってみると、そこには人形に向かって話しているギャリーの姿があった。
「……ギャリー?」
 イヴが信じられない様子でギャリーに近寄っている隙に、私は他の人形からここであった事を聞いた。どうやら仕掛けに掛かり、出られなかったペナルティとして狂ってしまったようだった。
 そこで私は考えた。

 ——これは一つのチャンスなのでは?
 狂ったままここに置いて行ってしまえば、私の願いは叶うのでは?

 そう思った私はイヴにこう言った。
「こんなのはギャリーじゃないよ。本物だったらこんな所に居ない」
 ——だから行こう。そう続けるつもりだったが、私が言うより早く、イヴは黙ったまま拳を握りしめて高く振り上げ——ベシィ!! と良い音を響かせて、ギャリーの顔に右ストレートをお見舞いした。
 一緒に居たのは少しの時間だが、それでもイヴが大人しい性格なのは知っていた。だから、そんなイヴが人を殴るなんて思ってもみなかった。

 私はイヴの行動に驚き、固まっていた。すると——
「イヴ……?」
 私はもう一つの驚きで、再び身を固めることとなった。
 今まで正気でなかったギャリーが、イヴの名前を呼んだのだ。

 イヴが嬉しそうにギャリーに抱き付いているのを、私は静かに見つめ、呟いた。
「何で戻ったの……?」

          *

 ラッキーなことに戻ったギャリーは、私が絵である事を忘れている様だった。これでイヴに私の秘密が伝わる心配は無くなった。
 後は、チャンスを見計らって、イヴと私で外に出るだけだ。

 そう考えていた私は、取り返しのつかないミスをしてしまう事を、この時はまだ知らなかった。