二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:   玉響懐中時計 ( 雑食 ) ( No.32 )
日時: 2013/10/08 15:59
名前: 黒依 ◆kuB5mqYaRs (ID: qMXr7W56)
参照:   連載しないよ!




「でぇいッ!!」

 お馴染のワイヤーアクションで身体に自由を利かせ、巨人のうなじをぶった斬る。
 迸る鮮血をマントで守りながら、すとり。地に足を着かせた。

 迫りくる巨人、もがく人間。自分は、その人間側だ。
 何も出来なかった人間が身に付けた最高にして最低限の防衛手段で、巨人たちを薙ぎ倒していくのだ、と言ってしまえば、人間の方が強いという風に聞こえてしまう。現実はそんな甘くない。確かにそういう人間もちらほら居るのだけれど、やはり力の差には敵わない。単純にして明確な答えだ。強い奴が生き、弱い奴が死ぬ。弱肉強食。嗚呼、誰かが言っていたな。この世界は残酷だ、なんて。

 武器に絡み付いた血を素早く払う。刃は、まだ使える。

 自分はこんな現状に満足している訳なのだけれど。いつ死ぬか分からないこのスリルを味わうのは、今しかないから。そして、スリルの原因となっている敵勢を倒していくと、生きる希望という物が見え、その瞬間に立ち会う度に、生み出す度に、どんどん楽しくなる。
 人間達は、もう少しポジティヴに生きていくべきだと思うのだけれどね。絶望的状況下で終わりだと考えてしまったら、何も出来やしないから。

「さて」

 ——嗚呼、この感覚だ。絶望の気配がよく分かる。それに気付いた途端、世界を壊しそうなほどの足音が心臓に響く。そして、その音は確かに、自分に向かっている。

 ドシン、ドシン、ドシン、

 巨人が大地を踏みしめる度に奮い立つのは、戦意と、好奇心と、何か。
 そうだ、もっとこっちに来い。自分の中にある闘志を燃やしてくれ。絶望を味わせてくれ。自分の中に秘める何かを解き放ってくれ。

「ショータイムだ、巨人共」

 そうして自分は、満面の笑みをこぼすのだ。