二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:   玉響懐中時計 ( 雑食 ) ( No.66 )
日時: 2013/11/06 21:19
名前: 黒依 ◆kuB5mqYaRs (ID: IQFPLn6c)
参照:   先が見えないからもうやっておく、っていう。




 絶え間無く発射される無数もの緑の針。風を切る音と共に襲い掛かるが、それら全てを壁へ誘導させ、未来は距離を詰めた。ガキンッと刃と刃、ではなく刃とトンファーの激突した音が、無人の廊下に響き渡る。
 眼鏡のレンズを通してでの久賀瀬吉実の瞳、そして口許は狂喜がこれでもかと溢れ出ていた。

「どォして邪魔すンだァ? 時空ァ」

 しかし、彼女は動じない。

「答えるつもりは無ェってかァ、アァ? ——上等だァアアァッ!」

 勢い良く未来の刀を弾き飛ばし、久賀瀬は目の前に等身大の魔法陣を展開する。極彩色の緑が、昼間に似合わず目に痛い。
 バック転をしつつ後方へ退く未来。その途中で視線が、床から久賀瀬の方向へ移り変わる。その瞳に映るのは、痛々しい緑の極太レーザー。未来は少しだけ床を滑りながら止まると、すかさず同じように自分の魔法陣を展開させた。円の中に描かれた五芒星が、緑を受け止め拡散する。

 発射された時のものと受け止めらた時のもの、二つの衝撃が廊下の窓を粉々に砕け散らせた。

「イイ反応だァ時空ァ!!」

 久賀瀬は今の状況に臆することは無く、寧ろ心から悦ぶように笑い飛ばす。完全に緑が消え去った時、未来は彼を無表情で見据えていた。

 久賀瀬はもう一度、今度は足元に魔法陣を開いた——瞬間、肉が貫かれる音が、彼の耳に確かに入った。茶色の目を見開かせ、そのままゆっくりと下を向く。視界に入ったのは、自分の心臓からでた一筋の、鋭く、しかし鈍く閃く銀色。

「テメェの茶番にもエゴにも付き合える程、俺達は思い通りに出来てねぇんだよ」

 その銀色は、しっかりと赤が流れ滴り落ちていた。
 思わず、勢い良く赤を吐き捨てる久賀瀬。だがその赤は銀色のものとは違い、褐色がかっている。口許には先程の狂喜は無く、代わりに赤が流れ落ちた。それでも、苦し紛れながら首を動かす。が、それを許さないと言わんばかりに銀色が深く刺し込まれた。突然に重なった痛みに耐えきれず、動かした首は元の位置へ戻った。同時に、また赤が吐かれる。

 するりと銀色は抜かれ、それに伴い一人の男の体は崩れ落ちた。刺された部分の周りが染まるだけでは無く、そこから赤黒い液体が広がる。
 倒れ伏せた男を、そうさせた犯人は助けることは無く、右手に持った日本刀を薙ぐ。風を斬る音と血飛沫が、舞う。

 ガラスが無ければ窓の意味は成さない。遮る物無しに風が廊下の中へ吹き抜ける。びゅうと未来の黒髪と犯人の黒髪が揺れた。

「遅くなった、未来」

 下で結われた長い黒髪、鮮やかな緋色の瞳は真剣そのもので。犯人である少年は、告げるように静かに未来へと言った。
 未来が見据えていたのは、どうやら久賀瀬では無く彼らしい。







 ねったばれー、ってことで。
 今HPの方にて連載している一次創作の続編がコレ。舞台はオリキャラ募集のものと同じですが、話としては全く関係ありません。主に時期的に。
 『久賀瀬 吉実』彼が続編のラスボス(仮)です。くがせよしざね、と読みます。