二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 玉響懐中時計 ( 雑食 ) ( No.85 )
- 日時: 2013/12/19 21:13
- 名前: 燎火 ◆kuB5mqYaRs (ID: IQFPLn6c)
- 参照: 1,000Hitしてた
白に赤は似合うというけれど、青に赤は似合わないことを、この惨景で痛感した。
いつもの雰囲気なんて、もう此処には無くなった。確かに此処が中心として放っていたはずなのに、何処かへ消え去ってしまった。
倒れ伏した大好きな二人の姿、見ず知らずの姿——元々三つあったのであろうそれは見事に欠片となり、赤と共に飛び散っていた。だけど、それよりも先に飛び込んできたものがある。
赤い床に立ち尽くす、一人の赤い少女。右手に日本刀を持った彼女が私の身内だということに気付くには時間なんて要らなかった。ぞっと恐怖と緊張が全身を駆け巡る。咄嗟に彼女の元へ駆け寄れば、黒い瞳はただ気怠さに満ちていた。それ以外は何も無い、その一言が相応しくて、自分が見ている彼女が本当に身内なのかと疑ってしまう。ただ、その黒い髪も髪飾りも、私の知っている人物で。服も肌も赤に塗れた姿に、身内であるにもかかわらずおぞましいと思ってしまった。刀の方へ見遣れば、そこから滴り落ちるのは赤黒い液体。偽物だったら良いのに、だけどこの状況でそんな事は有り得ない。
私の顔に視線を向けると、突然彼女が崩れ落ちる。反射的に体を支えたけれど、それは普段よりも数倍重く感じる。一体何が原因なんだろう。疲労か、感情か、それとも別の何かか、はたまたそれら全てをひっくるめた一つの塊か。知っているのは、彼女だけだ。
ぺたり。急に地に足が着いた様な音が聞こえて、探すように後ろを振り返った。純白の綺麗なローブ、それと同じ色の神々しい翼、絶世の美女——そこに居たのは、誰かだった。誰かはついさっき見た様な気がして、思わず血溜りの方へ視界を動かす。全てが赤に染まっていたけど、よく見れば羽根なり似たようなローブなりがあった。もう一度視線を戻して、同時にある疑問がくっきりと浮かぶ。もしかしてコイツは、アイツと同類じゃないか——と。
ドス黒い感情が、私そのものを支配していくのをこの身で感じた。ゆっくりと身内の体を床に預け、瞬時に両手は隠していた二丁拳銃へと伸ばす。どうしてかは分からない。でも、自分自身が壊れそうなくらいに訴えていた。彼女をこんな風にしたのは、アイツの所為だと。そして、コイツはアイツの同類ならば、選ぶ道は一つしかないと。煌めく二つの銃口を、コイツに向けて。
同じタイミングで、二つの引き金を、引いた。
( 荒廃世界を撃ち貫いていれば、どれだけ優しくなれたのだろうか )
■ 捨殺エンプティ