二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:   玉響懐中時計 ( 雑食 ) ( No.86 )
日時: 2013/12/12 21:47
名前: 燎火 ◆kuB5mqYaRs (ID: IQFPLn6c)
参照:   1,000Hitしてた




 レンガ造りの建物がずらりと並ぶ、都市程とはいえないがそれなりに賑わっている一つの町。朝昼夜、一日を通して人が絶えない此処では、その“見た目”で埋もれる人や店も少なくない。
 もっとも、彼女達の場合は“敢えて”埋もれている様だが。

 ——人気ひとけの無い路地裏に、早いテンポを刻む靴音が響き渡る。短い黒髪を揺らし、一冊の分厚い本を大切そうに抱えながら、少女は自信の目的の場所まで辿り着いた。
 息を切らしながら、勢い良く扉を開ける。

「——遅くなりましたっ」

 暗い路地裏によく見かける木製の扉を開ければ、広がる世界は明るく暖かみのあるもの。そして、戦国娑羅の知り合いである人物もちらほらと。
 何処からどう見てもバーである此処は『月風鳥花』。誰もが知らないといっても過言ではない、とてもひっそりとしたバー。モダンな雰囲気を漂わせ、マスターであろう黒髪の男子もまたそれに見合ったものだった。

「そこまで急がずとも、わたくし達は貴女を責めたりしませんよ」

 落ち着いた声色で告げたマスターと思わしき男子。グラスを丁寧に拭くと、「ココアを入れますね」と微笑んだ。
 娑羅は有難う御座いますと礼儀正しく言うと、視線を別の方向へ向ける。彼女の視界には、四つの人影が映った。

 テーブル席とカウンター席、それぞれに座っている四人。肩を覆うくらいの黒髪を持つ少女は頬杖を突き。腰まで伸びた黒髪を下で結わえた少年は、その緋色の瞳を息切れ少女に向けた。綺麗な金髪をポニーテールにした女は笑顔で出迎え、男とも女とも捉えられる容姿をした銀髪の少年は澄んだ青い瞳を静かに開く。

「相変わらずですが、やはり黒髪率が高いですね。いくら事情があろうとも」
「メタ発言すんじゃねぇ十夜」

 閑話休題。

「やっぱり愛されてるわねぇ、娑羅ちゃんは」
「や、やめて下さいよ過去さんっ」

 にこにこ顔で過去が言うと、言われた本人は顔を真っ赤にした。先程までの疲労が塗り替えられるくらいに、鮮やかに。
 お陰で場の雰囲気が和むのだが、同じ黒の長髪少女は、耳を傾けようともしなかった。
 勿論彼女の状態に気付かない訳が無く、娑羅は彼女に近づく。

「あ、あの。今日も宜しくお願いします」

 ぺこりと頭を下げる。その行動に少女は尻目で確認し、再び視線を戻した。気怠るそうな黒の瞳は相変わらずで、少女は何も返事をしない。

「『遺品』の扱いは、いくら愛されているとはいえ大変だからな。張り切るのは良いが、張り切り過ぎは良くねぇぞ?」
「自分も同意します。何せ、元々貴重な『遺品』を一つではなく七つもありますからね。自分のペースで進んで行けば良いのです」

 男性人二人組が優しく声をかける。お陰で緊張がほぐれたのか、娑羅の口角が緩んだ。

「ココア、入りましたよ」

 マスターの台詞通り、カウンターテーブルからの甘い匂いが鼻腔を擽る。







 オリキャラ勢しか居ない故の俺得投稿。
 RPGパロになっていない……だと……? 何だかんだで私はメインに突入する前の雰囲気が好きなようです。