二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【どうぶつの森】この広い世界の中で 次回作アンケート実施 ( No.39 )
- 日時: 2013/04/12 20:38
- 名前: レモン (ID: leOS3oG6)
最終話 由美と春真
「春、真……?」
由美は、絞り出すように言うと、ふらふらと春真に近付いた。
男は、舌打ちをすると春真を睨み付ける。
「チッ……なんだよ、女を守る王子様ってかぁ?」
春真は男に目も暮れず自分に刺さっていたナイフを抜いた。
とくとくと血が流れる。
「え……?」
掠れ声になっている由美に優しく笑うと、男を睨み付けた。
「ふざ、けるな……!」
「あぁん?!」
男は、最初に見た時とは真逆のような怖い顔をしている。
「ふざけんなっつってんだよ!」
春真は唐突に叫ぶと男にナイフを投げた。
男はギリギリでナイフを避けた。
「クク……、もう、手はないな……?」
男が嘲笑う。
そして、春真を切りに掛かった。
「……!」
春真は、声にならない叫びを上げた。
「春真ー!」
叫ぶ由美の声。
ますます荒くなる春真の息は、次第に浅くなる。
「大、丈夫……?」
目に一杯の涙を浮かべた由美は、掠れ声で聞くと、春真にしがみついた。
「へっ、これで、終わりだなぁ?!」
男は、叫んで春真の心臓を狙いナイフを刺した。
「や、め、て……」
声にならない声で叫ぶ由美の気持ちも届かず、非情な男は春真を殺した。
……と、そこにいる全員が思っていた。
「な、なに……?」
驚く男の前に向かい合う春真。
男の手に手刀を打ち、男からナイフを奪ったのだ。
「春真……!」
安堵の声を漏らす由美。しかし、その気持ちとは裏腹に、春真は限界だった。
「僕の、息は、長くない……」
男に精一杯睨み付けて呟くように言う春真。
「だから、その短い時間で由美を守りきる……!」
春真は、唐突に男を刺した。
狙い通りの心臓に刺され、男は声もなく倒れた。当然、息はなかった。
限界が来たのだろう、春真はその場に倒れた。
「春真っ!」
由美が叫んでこちらにしゃがんで来る。
春真は、そんな由美に優しく撫でることしか出来なかった。
「お医者、さんを呼ばないと……」
携帯を取り出す由美を、春真は制止する。
「だめだよ、この出血量じゃもう助からない。それに、助かりたくない……、人を、一人殺めたんだから……!」
「うわぁー……!!」
泣き出してうずくまる由美に、春真は優しく語りかけた。
「僕、君の事が好きだった。」
「え……?」
こちらを見る由美。
「僕ね、学校でいじめられていた時に、寄り添って守ってくれる君が嬉しかった。最初は感謝や憧れの気持ちだったけど、次第に好きになっていったんだ。」
「うん……」
頷く由美。
「でも、最初告白された時は、なにがなんだか分からなくて、断っちゃったんだ。でも……」
「本当は大好きだったんだ。」
「……私も、」
春真に抱きついて語りかける由美。
「春真が、大好きだった……!」
お互いに、ニッと笑う二人。
「告白できたね。」
「両思いでよかったー!」
「本当に、ずっと一緒だったしね。」
春真の一声に、由美の動きがピタッと止まる。
「これからも、ずっと一緒だよ、ね……?」
絞り出すように言う由美。春真は力なく笑った。そして、ただ言った。
「ごめんね。」
次第に意識が薄れてゆく。恐らくこれが最期だろう。春真は、最後に最高の笑顔で言った。
「ありがとう、由美!」
春真の目は堅く閉じられた。由美は、一瞬夢を見ているような気持ちに捕らわれるが、目の前を見ると、現実が見えてきた。
「うわあぁぁぁん!」
再び目には大粒の涙が溜められ、つぎから次へとこぼれ落ちた。
由美は、そこから動こうともせず、ただただ泣き続けた。
それから五日後。
見えにくい場所のせいで発見が遅れた4つの亡骸が発見された。
3つは、刺し傷が無数にある亡骸。
1つは、衰弱死したと思われる亡骸。
但し、そのうちの3つは、まるで寄り添うように横たわっていたという________
遂に最終話だいやっふーーーー!
バッドエンドにしました。
なんかごめんなさい……