二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: とんがりボウシ 〜ほしぞら魔法学校より〜*短編集 ( No.162 )
- 日時: 2013/08/16 13:22
- 名前: ショート ◆RNBm3A/DrQ (ID: QlSid/7F)
ショートの腕を引っ張り、物陰へ連れて行く。一瞬驚いていたものの、結局泣き止むことはなかった。
「うっ、うう……ぐすっ……」
「オ、オレが悪かったから……その、泣き止んでくれよ」
オレがそう言っても、なかなか泣き止んでくれない。なんていうか、こういう時本当にどうしたらいいのか分からない。こういう性格だからってのもあるのかもしんねぇけど……普段から誰かをなだめたりしてるわけでもないし、コイツもそこまで泣く奴じゃない……し。
どうやったら、泣き止んでくれるんだろうか……。
「あの〜……ショートさん?」
「ぐすっ…………ひっく……う、う、うええええん!!!!」
あぁっ!? なんかさっきより豪快に泣き出した……! これは本当にどうするべきなんだろうか。
……コイツには泣いて欲しくない、し……ホントは泣かせるつもりなんかなかったのに。
そんなことを思っていたら、体が勝手に動いていた。オレはぐずるショートを抱きしめた。
「オレが悪かったからっ……! 本当にゴメン! でも泣かせたかったわけじゃないんだ! その……だから、頼むから泣き止んでくれよ……!!」
「て、んま…………?」
驚いたのか、なんなのか……ショートは先程のように大声で泣いたりはしなくなっていた。その代わりと言ってはなんだが、ひたすら恥ずかしい。自分でやったことだけど恥ずかしい。そして何言えばいいのか分からない。ついでに言うと顔を見られたくない。間違いなく、この上なく、赤くなってるだろうから……。
「あ、あの……っ! てんま……ええと、その……暑いかも……」
そう言われてオレはハッとして離した。とりあえず泣き止んだのはいいものの、なんて言ったらいいのか分からない。とりあえず……謝るべきだろうか。
「えーと……その……いろんな意味でゴメン……。でもさっきのは……あの、ホントだから……オレはお前のことを泣かせたかったわけじゃなくて……」
「えっ……あ、あたしもゴメンね…………迷子になったのは、あたしが……悪いのに」
そう言って俯くショート。
あ、あれ? 意外と……抱きついたことどうでもいい感じ? いろいろ言われるよりは全然いいんだけど……え、何? それってつまりそういうことしても何も思われない的な? なんかそれはそれですごく寂しいというか悲しいというか虚しいというか……うーん。
まぁでもわざわざ聞く必要はないよな……!
「っておまっ……浴衣めちゃくちゃ着崩れしてんぞ!」
「えっ? あ……ホントだ……」
はっきり言ってよく今まで気にせずいられたなレベル。オレも今気付いたんだけど……。コイツほんとに恥じらいとかそういうのないよな。
「………………」
「どうした? 直さないのか?」
「あのさ……あたし浴衣の着付けできないんだよね」
「……だから?」
「てんま、あたしの代わりにやって!」
……すごい発言聞いた気がする。気のせいかな。……いや、気のせいであってほしい!
- Re: とんがりボウシ 〜ほしぞら魔法学校より〜*短編集 ( No.163 )
- 日時: 2013/08/18 20:39
- 名前: ショート ◆RNBm3A/DrQ (ID: QlSid/7F)
「てんま聞いてる? あたし浴衣自分で直せないから、直して!」
「……いや、聞いてる。聞いてるけど……自分で何言ってるかよく考えてみろ」
「え? だからぁ……あたしできないんだもん! 知らない人にやってくださいなんて言えないでしょ! だからやってって言ってるんじゃん!」
………………こいつめ。確かに見知らぬ人に浴衣直してなんて言うのもどうかと思うし、そんな知らない人なんかにコイツの肌見られてたまるかよ……っていうのはオレが勝手に思ってるだけだけどな。
でも、だからといって……それはちょっと。
「お前さ、さっきやってもらったんだからちょっとくらいは覚えてるだろ?」
「えー!? うーん、と……えっと…………分かんない」
クソ……コイツはホントにっ……!
「お願いだよー、直してよー……」
「あーもー、分かった、分かったからっ……!」
そうだ、できる限り見ないようにすればいいんだ。それに元々多少見えてるし。…………うん。
*
「えへへ、ありがとうてんま!」
「……どういたしまして」
まったくコイツは……! いや、まぁでも怒るだけ無意味なんだけど。絶対意味を理解してくれないし怒って泣かれても嫌だし……。
「……そういえば、もうすぐ花火だね」
「え? あ、もうそんな時間? ……早いな」
花火……花火を見るのなんていつぶりだろう。昔、千春とかと一緒に行ったことならあるけど……というか、それが最後かもしれない。でも千春たちが一緒だったっつーことは……もしかしたらあの時女物の浴衣着せられてたのかもしれねーな……。うう、思い出したくねぇ。
「……とりあえず、花火見えそうなとこ移動しようよ」
「え、あ、ああ……そうだな」
オレとショートは今いるとこから離れて、花火の見えそうなところに移動した。移動してる間、何の会話も生まれなかったけど……。でも、そのせいなのか歩いてる時間が、距離が、すごく長く感じた。
「……あ」
ショートが声を漏らした瞬間、上空が赤く輝く。花火大会が始まったらしい。ショートは既に完全に花火に見入っていた。
……なんだかなぁ。今日はなんか……すごく疲れた一日だった。まだ終わってないしこれから帰らなきゃいけないんだけど。突然祭りに行くことになるわ、りんねやゆうきとはぐれるわ、ショートに泣かれるわ……数えだしたらキリがない。それに、本音を言えば人ゴミも嫌いだし、最初は行きたくなんかなかったんだ。……まぁちょっと興味はあったし、断る理由もなかったから来たけど。
「うわあああ、てんま見て! あの花火すんごくおっきいよ!」
「分かったから落ち着けよ……」
それでも、今なんとなく幸せな気分なのは、きっとコイツが素直に笑ってくれてるからなんだと思う。さっきコイツに泣かれて、改めて分かった気がする。オレはコイツの笑顔がどうしようもなく好きなんだ。それ以外の表情が嫌なわけじゃないけど、何よりも笑顔が好きなんだ。
「ねぇねぇてんま」
「……何?」
「あのさっ、来年もお祭りあったら絶対一緒に行こうね! 約束だよ!」
「…………はいはい」
やったー、と言いながらはしゃぐショート。どうせオレのことだから、お前にどこか行こうって言われたら断らねぇよ、バカ。
「……惚れたオレの、弱みだな」
「えっ何? 何か言ったァ?」
「——何でもねぇよ」
=====作者より=====
これで終わりだよ
てんまくんはショートちゃんのことを溺愛してます