二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: とんがりボウシ 〜ほしぞら魔法学校より〜【短編集】 ( No.8 )
日時: 2013/03/23 15:43
名前: ショート ◆RNBm3A/DrQ (ID: R/ygAqMb)
参照: http://ameblo.jp/short-scuall13/

————そんなこんなでオレとゆうきは今、アイツの部屋の前にいる。
ゆうきはドアがぶっ壊れるんじゃないかというくらい強くノックして、呼び出す。
……このドア破壊したらいくら取られるんだろうな……。

「んもー、何? 折角テレビ見てたのに……」
「それはねー、えーと……何だっけ……」

おい何で言いだしっぺが目的忘れてるんだよ。

「あ、そうそう! あたしの昔の友達だっけ? それを紹介しに来た!」

そのセリフめちゃくちゃ危ないぞ!
一応そういう設定なんだからあやふやにするなよ!
……って言えたらいいけど、そんなことしたら間違いなくバレて笑われるしな……。

「え? ゆうきに友達なんかいたの!?」

————こいつもこいつでダメだな。
それと、そのセリフは間違いなくゆうきに怒られ……既に制裁受けてたか。

「なんですって?」
「何でもございまギブギブギブ!」

ていうかゆうきの奴完全に目的忘れてるだろ!
話しかけづらい状況だっていうのに、何でこう話がそれるんだ!?

「けほ、けほっ……で、ゆうきの昔の友達って、その奥にいる子?」
「そうそう! 名前はソラって言うのよ」

……なんていうか、急に小っ恥ずかしくなってきた。
正直逃げたい。逃げたいけど逃げたらゆうきに半殺しにされるし怪しまれる。
そ、そうだ……今のオレは「てんま」じゃなくて「ソラ」なんだ!
もう全身全霊で自己暗示しよう! オレはてんまじゃない!

「へぇー、ソラちゃんか! よろしくね! あたしはショートだよ!」
「よ、よろ……しく」

ごめん、知ってる……! 何かナゾの罪悪感が……!

「じゃああたしはこれで」
「えっ、ゆうきどっか行くの? ていうか何しに来たのさ!」
「え? えーと……な、何かしらねオホホホホーッ」

その去り方すごい変だと思う。
……って、ん? ま、まさか……今、こいつとオレ……だけ?
って、何話せばいいんだよ!!??

「行っちゃった……相変わらず変なゆうき……。
 あ、ソラちゃんだっけ……えーと、よかったら部屋入る?」
「え、あ、おう……じゃ、なくて、うん」

そうだ……オレ今女の子だからいつもの口調じゃダメなんだ……。
ていうか声でバレたりしないだろうか。
……こいつなら、気付かないか?

「じゃあ、どうぞー。汚いのは気にしないでね!」
「う、うん……」

なんていうか……口調変えるの難しいな……。
気を付けないとな……いつもの口調にならないように……。

「あ、そうだ、折角だからこれあげるよ! ちょうど余ってたし……」
「……あ、ありがとう……」

何だ……? って、これお菓子!?
ま、ままままさかコイツが作ったとかそういうのじゃない……よな?
そんな自発的に料理とか菓子作りするような奴じゃない…………はず……だし。

「あ、あの……こ、これって……」
「それ? えっとねぇ、ゆうきにもらったんだ」

ゆ、ゆうき……それはそれで危ないかもしれない……。
まぁ一応もらっておこう。後でゆうきにこれが何なのか聞けばいい話だしな。

「そうだ! ねぇねぇ、暇だからソラちゃんがいる魔法学校の話聞かせてよ!」
「えっ!? オレ……じゃなくて、わ、わた……しの?」
「うんうん!」

って言っても、オレほしぞら魔法学校にしかいたことないんだけど……。
……なんて言えるわけがない。でも言わないままってのも……無理……だよな。
なんていうか、完全に興味津々って顔してるし……。

「え……と、普通の魔法学校だよ。強いて言うなら校長先生が変人ってとこかな……」
「それってつまりどこの魔法学校の校長も変人ってことなのかな……」

そういえばオレらの知ってる魔法学校の校長大体変人な気がするな。
魔法学校の校長という職に就くと変人になるのだろうか。
だとしたらオレは絶対になりたくないな……。

Re: とんがりボウシ 〜ほしぞら魔法学校より〜【短編集】 ( No.9 )
日時: 2013/03/23 17:56
名前: ショート ◆RNBm3A/DrQ (ID: R/ygAqMb)
参照: http://ameblo.jp/short-scuall13/

————あれから数十分、オレたちは他愛もない会話を繰り広げていた。
……勿論、オレが男……いや、てんまだということがバレないように。
ていうか、今回はっきりしたけど、コイツ恋愛ごとにもクソ鈍いけど、他のことにもこんなに鈍いんだな!
そりゃあ三年間気付かなくても何もおかしなことはない!
なんて考えてたら、アイツが突然とんでもないことを言い始める。

「————それでね、てんまっていうバカがね、昔女の子の格好してたって聞いて————……」

やめろ言うな黒歴史を掘り起こさないでくれ。
というかオレがてんまなんだよ……言わないし言えないけど。
……しかも、今まさに女の子の格好してますけどね。

「うーん……それにしてもソラちゃん可愛いよね。羨ましいなぁ。
 それだけ可愛いと、やっぱり彼氏とかいるの?」
「えっ……!? い、いない……よ」

いるわけないだろ男なんだから。……彼女もいないけど。
っていうか、可愛いって言われても嬉しくない……。

「そうなんだ……まぁきっと誰かがソラちゃんの良さに気付いてくれるよ!
 あたしなんかより可愛いし、いい子だと思うから!
 ……って彼氏いたことないあたしに言われてもって感じだけどね、あはは!」
「は、ははは……」

いや、彼氏できたらビックリですけどね。まずオレがビックリ。
……そろそろ、聞いても、いい……かな。

「じゃ、じゃあ好きな人とかは……いない、の?」
「へ!!?? な、何で!?」

いることは知ってるけどな……。というかそこまで慌てられると、好きな人がいることを知らなかったとしても、察することくらいはできるな……。
どんだけ動揺してんだこいつは。

「……いるんだね……」
「うっ……い、いるけど……! でも、あたし嫌われてると思うし」

……? 嫌われてる? オレもアイツも知ってる男子の中で、アイツのこと嫌ってる奴なんかいたか……?
あさひとは仲いいし……。コハネともすぐ仲良くなってたし……。
イトと杜若はむしろ好きってくらいだし……オレのことは関係ないけど。……関係ない!
……てか、それってつまりオレらの知らない人とか……なのか?
そんなん聞いたことないけど……。

「そ、その人って、どんな人……なの?」
「え? うーんと……別にカッコいいとかじゃないし……意地悪とかもしてくるけど、たまに優しいんだ」

カッコいいわけじゃないのかい。いやホントに誰だよ。
もし、杜若だとしたら……杜若が、コイツに告白したとき、付き合ってただろうし……。

「結構前から一緒にいたけど、最初は全然好きじゃなくて、むしろ嫌いだったの」
「嫌い……?」
「うん。でもね、ある時その人のこと好きって気付いてからずっと好きで、今では一番大切な人……かもしれないね。嫌われてるだろうけどっ!」

————そう言い切ったコイツの表情は、どこか儚げで、今にも吸い込まれてしまいそうな、綺麗な笑顔だった。
誰だか分からないけど……そこまで、好きなのか……。

「そう、なんだ……でも、どうして嫌われてるって思うの?」
「意地悪されるって言ったけど、あたしも意地悪しちゃったから……かな。割とたくさん意地悪しちゃったし……」

なるほど……でもその理屈でいくと、お前もそいつのことどんどん嫌いになる一方なのでは。
まぁ、そいつがどんなやつか分かんないから何とも言えないけど。


=====作者より=====

てんまも相当鈍感をこじらせています。
でもどっちが鈍感かと聞かれたら迷わずショートと答えます。
てんまは恋愛に疎いけど他のことはそこまで鈍感じゃないのでw
ショートはすべてのことに対して鈍感ですb

Re: とんがりボウシ 〜ほしぞら魔法学校より〜【短編集】 ( No.10 )
日時: 2013/03/24 01:06
名前: ショート ◆RNBm3A/DrQ (ID: R/ygAqMb)
参照: http://ameblo.jp/short-scuall13/

「————あ、ところで……」

ふと何か思いついたように言う。
そして何か悪巧みでもしてるかのような顔で尋ねてきた。

「ソラちゃんは、好きな人いないの?」
「————え!!??」

……何故聞き返すんだ! いるっちゃいるけど、そんな、本人の前で、とか……無理、ですし。
第一、今一応女の子ってことになってるし、女の子が好きですだなんて言えないし……オレはホモでもレズでもないんだ……。

「え、えと……その……い、いな……」
「その反応は絶対いるでしょ! ねぇ、誰!? ……っていうか、どんな人!!??」

くっそ、何で普段超絶鈍感パワー発揮してるくせにこんな時ばっかり……!
コイツの脳内どうなってるのか一度見てみたいわ!

「ねぇねぇ、どんな人なの!? 教えてよ!」

しかもやたらとしつこい。何だこれどうしたらいいんだ。
きっとこれは最終的に「あたしも教えたんだから教えて」とか言い出すに決まってる。
こんなことになるなら聞かなきゃよかったかもしれない。……とは、言い切れないけど。
でも、どうしたらいいんだ……こいつのこと言ったら流石にこのバカでも気付くだろうか。それともやっぱり気付かないのだろうか。
その前に女の格好をした男が好きな女に好きな女のことを教えるというこの状況。誰か助けてくれ……。
性格とかだったら、別に男でそういうやつがいないわけではないだろうし……別に、いい、かな……。

「えーと……」
「うんうん!」
「バカで……アホで……ドジで……間抜けで……バカ?」
「ねぇソラちゃん、その子のことホントに好き? さっきから罵倒しかしてないよ?」

……だってお前ロクなことしないじゃん。
いいとこ……コイツにいいとこあったっけ? ないような気しかしてこない。
本当に何でオレはこいつのこと好きなんだろう。

「ソラちゃん、最終的に考え込むのやめよう! そしてそこまで考えてでもいいとこないってどんな子!?」

お前だよバカ。そしてやはりいいところが見つからない。
お前は普段何をしているんだ、と問いたいところだがそんなことはできないし諦めよう。

「うん、いいところはないみたいだね」
「言い切った!?」

だってお前いいとこないし。普段ロクでもないことばっかしてるからだよ。
お前のせいだ、お前の。

「ふぅ……ていうか、好きなら好きって言っちゃえばいいのに。ソラちゃんだったらきっと上手くいくよ!
 あたしが男の子だったらむしろ嬉しいと思うけどなぁ」
「は、はは……わ、たしもその人に嫌われてるから……」
「え!? 何で!?」
「あ……うーんと、その人に嫌いって言われたし……」

というかお前が言ったんだけどな。オレ忘れてませんし……しかも結構な頻度で言われてたし。
……オレが悪いんだけど。

「そ、そーなんだ……意外だ」
「そ、そういうシ、ショート……は、好きって言わないの?」

う……なんていうか、ここ最近コイツのこと名前で呼ばないから何か恥ずかしい……。

「え? 言っても笑われるだけだと思うし……だったら言わない方がいいかなって」
「ふ、ふーん……」

えー……言えばいいのに。そしたら尾行してそれが誰なのか突き止めてやるのに。
……いやダメだろオレ。それじゃストーカーのようなものじゃないか。
そんなことしたら「変態ストーカー」というあだ名を否定できなくなってしまう。それだけは嫌だ。

「あ、そーだ! ねぇソラちゃんの好きな人の名前教えてよ!」
「何で!!??」

突然何を言い出すんだ。もし女装なんかしていなかったら間違いなく殴りかかってただろう。
いや流石にホンキで殴ったりはしないけど。コイツも一応女だし……ものすごく一応だけど。

「え? 興味本位かな!」

興味本位でオレが男というかてんまだということをバラせというのか。
……まぁ、騙してるオレが悪いんだけど……。
でも流石に外見的にコイツの名前出すわけにもいかないし、言ってバレても嫌だし……。
かといって架空の人物を作り上げるわけにも……ネーミングセンスないしな……。
……! そーだ……。

「じゃ、じゃあショートが好きな人の名前教えてくれたら……いいよ」
「え、えぇっ!? あたしの!?」

こうすればコイツの好きな人知れるし、いっそのこと聞いた後逃げたっていいし!

「う……で、でもなぁ……。他人に聞くのはいいけど、自分のを言うのは……」
「いやお前それセコいだろ」
「…………え?」

ハッ! し、しまった! 口に出てた……!
や、ヤバイ……! 完全にオレのこと疑ってる!
もう終わりだ!

「……ソラちゃんから完全にてんまの声が……ま、まさか……」
「そうです、すいませんでしたてんまです」

オレが光の速さで土下座をかますと、みるみるうちにアイツの頬が赤く染まっていく。

「な、な、ウソ……ッ!?」

ウソじゃないけどすいませんでした。
罪悪感がなかったわけじゃない!

「じゃ、じゃああたしは今まで……女の子だと思ってた子に、好きな人のこと話してたの? え?
 てんま殴っていいかな?」
「本音を言えば痛いのは嫌だけど悪いと思ってるので殴りたきゃ殴ってくださいお前弱いし」
「な、な、な、なんだとぉーっ!? そ、そんなことないもんね! じゃあお望み通り殴ってあげますよ!」
「そういう言い方するな! オレが殴ってほしいって言ってるように聞こえるだろ!」

オレがそう言うと、急にアイツの動きがピタリと止まった。
オレが不思議に思っていると、アイツはゆっくりと、口を動かした。

「ねぇ、てんま……?」
「な……何だよ」
「てんまが言ってた好きな人っていうのは、てんまが好きな人の特徴を言ったの? それとも、架空の人物なの?」
「え、いや……本人の特徴、だけど……」

オレがそう答えると、急にショートが笑顔になった。

「そう! だったらいいや!」
「な、何で?」
「誰だか分からないけど、どちらにせよてんまも言ったからおあいこってことにしてあげる。
 ……てんまがあたしの好きな人に気付いてたら殴るけどね?」
「いや分かんないけど……むしろ今聞きたいくらいですし」
「だったら、いいの!」

……教えてはくれないんデスネ。
まぁ、しょうがないか。それにしても、結局コイツの好きな人って誰なんだろう。
うーん、考えれば考えるほど分かんねーや。何のために聞いたんだ……。

——でも、まぁいいかな。
きっと、こんなズルイことして聞くなっていう、神様からのお達しだろ。
いつか聞ければいいけどな……。


*FIN*