二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:番外編 ( No.111 )
日時: 2013/06/20 17:56
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
参照: 更新できた!


 ザーザーと、大粒の雨が降っている。
 ここは学校の下駄箱。ここから家までの距離は約二キロ。友達同士がキャッキャと笑い合いながら帰って行く間、友達のいないあたしはボーっと立っているしかなかった。
 友達は何人も出来たけど、全員あたしなんかどうでも良かったらしくて。今は独りぼっち。
 所詮、信用出来るのは自分だけだ。最近はいつもそう思う。
 こんな大雨の時も、一人でどう対処するかを考えないといけない。残念なことに。

「えー……、ホントにコレどうしよ。」
「さっきから何言ってんの? えーと、し……白鳥?」
「ん?」

 真後ろから声を掛けられて振り返ると、一週間くらい前に来た転校生がいた。名前とか覚えてない。
 常に男子とか女子に囲まれてて顔とかはほとんど見てないけど、ホームルームの時に一度見たのをなんとか覚えてたくらいだ。
 背の高さは男のくせにあたしと同じくらい。多分、生活習慣が悪かったんだろうな、と思っている。

「傘、忘れたの?」
「そ、そうだけど……?」
「……入れたげようか? 風邪引くよ?」
「良いの? じゃあ入る!」

 久しぶりに笑った気がする。あたしは喜んで名前も覚えてないヤツの傘に入らせて貰った。

「俺さ、ああ言うのあんまり好きじゃないんだよな……。」
「え? どういうの?」
「なんか人が沢山いて、俺の周りにいるあの状況。何かあったら困るんだよ……。」
「は!?」

 意味が分からなかった。何かがあっても友達がいたら乗り越えて行けるって言うか……、

「友達とかはいた方が良いと思うけど?」
「俺は、笑い合って、馬鹿みたいな話で盛り上がれる——そんな友達が欲しいんだ。一人で良いからさ。」

 今まで、あたしが友達といて、心から楽しい思ったことなんてない。
 この人はもしかしたら、あたしみたいに友達がいないのかもしれない。

「ねえ、あたしと友達にならない? えーと、誰?」
「……良いけど。俺はアルバ。アルバ・リングって言うんだ。」

 アルバが青紫の肩まである髪を少し揺らして言った。

「じゃあ、よろしくね! アルバちゃん!」
「え、や、俺は男なんだけど?」
「ヘェー、男だったんだね。アルバちゃん。」

 男ってことは知ってたけど、やっぱり女にしか見えない。
 アルバは少しムッとした顔で抗議をした。

「——ごめん、傘持って帰って。」
「え、なんで?」
「とにかく————とりあえず……早く帰って!!」

 いきなりしゃがみ込みながら傘を差し出して、あたしに叫ぶ。

「無理だよ! だって……!」

 あたし、初めて心の底から楽しいって思えたんだから————……!