二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:第七十四話 ( No.121 )
日時: 2013/08/31 22:28
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)

 僕はもう夜と言うことを完全に忘れて、意味も分からず全力疾走していた。いつの間にか雨が止んでるから走れるけど、一々靴に粘り付く土と、後ろの方でビチャビチャと聞こえる水の音が鬱陶しい。
 たまにすれ違う周りの人の視線は僕の右手に移動するのは見なくても分かった。刀を右手に持って走ってるんだから……。
 だって、鞄に収まらないんだもん……、チルベに貰ったアレ使ったら良いじゃん!!
 僕はソレの使い方はまだ分からないけど、親切なことに開いた瞬間に馬鹿でも分かる位に的確な説明が書いてあった。気持ち悪いくらいビッシリと。
 ……ダメだ、僕の頭にはこんな知識一気に入ってこない。読み終わる前にアルバの家着く自信すらあるんだけど。
 と言う訳で走ります。ぶっちゃけもう良いじゃん、こんな物存在しなくても……。僕こんなの使ったことないしさ。


                        * * *


「生きてる!? ねェ! 生きてるよね!?」
「落ち着けリンネ、てかいや、生きてなかったらなんだよ俺!!!」
「ゆ、幽霊……?」
「俺と幽霊を一緒にするんじゃねえぇえぇぇえぇぇぇ!!!!!」

 家の前で地面に溜まったバケツに雨水を汲んでいたアルバの胸倉を掴み、自分でも呆れる位に取り乱す。

「……で、何してんの? 雨水バケツに汲んでたけど」
「実験に使おうと思って……」
「なんで起きてからその意味不明な作業をするの!? そんなんだからあんな不良モドキに負けるんだよ!!!」
「悪かったな不良モドキに負けて!! 家に奇襲掛けられた挙句なんか気絶させられて悪かったな!!」
「凍らせろよ!!!」
「無理だよ! お前みたいに躊躇なく相手ボコるとか無理だから!!」
「ほとんど自己防衛とか事情があるでしょ!? 自分の能力ちょっとは自分のために使いなよ!!」

 この後、凄くずれた口論になったのは言うまでもなく。
 まあ、何よりも無事で良かったと思う。死んじゃったりしたらこんなよく分からない口論すらできなかったって考えたら、今も大分充実してるのかも、と思えてくる。

「でも、元気で良かった。僕帰るね、バイバイ」
「……いや待て、お前右手のソレなんだよ」
「何って……、刀だけど? アルバの魂的な物と一緒に入ってたんだ」
「なんでそんな物騒な物をお前が持ってるんだよ」

 アルバのくせに凄く的確な質問ばっかりして来る。
 いや、アルバだったら「そうか」とか言いながら軽く流しそうなんだけど? と言うか間違いなく流す。
 僕は少し顔を顰(しか)めてこう言った。

「……お前、誰?」