二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re:番外編 ( No.145 )
- 日時: 2013/07/28 20:14
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: lyEr4srX)
あれから何年経った?
……うん、もうそろそろかな。俺と同じような目に遭う人が産まれるはず。
でも、時計とか持ってない……って言うか壊れてるし、日付分かんない。誰かに訊く、か。
今歩いている町は人気が多い。えっと……、話を始める時は——
「はじめまして。……ねえ、今っていつかな?」
「……え?」
「日付と時間、なんだけど……」
「あ、はい! 今は——年——月——日の午後六時です。……旅人、ですか?」
近くを歩いてた十歳前後の女の子に訊く。
うん、もうそろそろ。しかもここはあの事件があった場所に近い。時差もほとんどないはずだから、確定かな。
「まあ……旅人みたいな感じ、かな。時間を教えてくれてありがとう。じゃあ——」
「それじゃあ疲れてますよね! あたしの家で今日は休んでいって下さい!!」
「……え、俺急いでんだけどなぁ」
「お母さんが、困ってる人には親切にしてあげなさいって言ってました! 来て下さい!!」
女の子は俺の手を引いて走り出した。
あの事件以来、人に触れるどころか話したことすらない。そんな俺が他人の家に邪魔して大丈夫かな。
この子、本気みたいだし……。
「着きました! ここがあたしの家です! どうぞ!!」
「あ、うん……。ありがとう、お邪魔します……」
木で造られた質素な家。雨の日は確実に雨漏りしそうなほどにボロボロ。町外れで木々に覆われている幽霊屋敷みたいな建物。
さっきより事件の現場に近くなった。……頭が痛くなって来た。
「大丈夫ですか?」
「……うん、大丈夫だよ」
大丈夫な訳がない。
俺が犯した過ちは、償いきれないだろう。近くに来ればそれだけで罪悪感に襲われる。
それに、他人には心配とか掛けたくない。
「あら、お客さん?」
「うん! 旅人さんだよっ!! ねえ、今日泊めてあげても良いよね、お母さんっ!」
「ええ、勿論よ。良いことをしたわね、エイル」
女の子の名前は「エイル」か。少し懐かしい名前かもしれない。あんまり覚えてないけど。
なるほど、色んな意味で普通の家庭かな。
この光景を見てたら頭の痛みが治まった。でも、俺ここにいて良いのかな。
「えっと、俺——」
「あら、可愛い声。女性なのに旅してらっしゃるの?」
「男です」
「あ、そうなんですか!? 失礼しました!」
「もう、お母さんったら」
まあ、エイルって子も俺を女って思ってたみたいだけど。
「もう夜遅いので、空き部屋を使って下さい……って言いたいところですが、部屋がここしかないので、すみませんがそこで……」
「ありがとうございます。俺、急いでるんで朝は多分……出てると思うので」
「じゃあ頑張って早起きしないと!!」
「そうね、ちゃんと見送らないと駄目ね」
「……ありがとうございます」
返事に少し迷った後、一応お礼だけ言って、俺は着ていたコートを被りながら地面に座った。
「気を付けて下さいねーっ!!」
「えっと……ありがとー!! 君もだよー!!」
三月十一日、午前四時半。
結局エイルだけが起きて見送ってくれた。
昨日はあの人の誕生日だっけ。そして————。
俺にはやらないと行けないことがある。大切な人に伝えたい言葉がある。
この箱を、もうすぐ届けられる。これで俺の願いが叶う……はずだ。
もしかしてあっちの方は……ちゃんといるね。良かった。
「あれ? 何これ……宇宙?」
「君、これが見えるの?」
「だれ?」
「今は言えないね。それよりも、ここ通る?」
「……うん。頭の中で、森の奥へ進めって行ってたから」
「ふぅん……。じゃあ、これ持って行ってよ。多分、君を助けてくれるから、さ」
頭の上に「?」マークを浮かべて俺が渡した箱を観察してる子。
しばらくして、俺に「ありがとう」と言い、虚空の中に消えた。
じゃあ、俺も今から頑張らないと……。あの事件を起こさないように、あれ以上の被害を出さないように、そして————