二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:第八十二話 ( No.146 )
日時: 2013/08/04 06:26
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: e/CUjWVK)


「ゲホゲホッ……! はぁ、疲れた」

 全速力で走ったせいか、約三分で息切れ。
 向こうから走って来るのは……ソアラとアルバ?

「だ、大丈夫!? 不良に誘拐されたってアルバが!!」
「今来たの?」
「あぁ、お前が中途半端に処置して行くから」

 じゃあ、さっきの悲鳴はなんだったんだろう。

「で、お前は脱獄してきたのか?」
「うん。僕の気になってたことも解決して、スッキリしたところ」
「あはは……。じゃあ、帰ろうか」
「……そうだな」

 一瞬アルバの顔が怖くなった気がする。

   ——こいつ、ヤバいぞ——

 ルピナスがいつもより低い声で言う。ヤバいって、どう言うこと?

「……ごめん、先に帰っといて」
「え? アルバは帰らないの?」
「後で来るから」
「……うん、分かった。帰ろ、リンネ」
「分かった。でも、気を付けてね」

 明らかにアルバの様子が変。

   ——帰らないでちゃんと尾行しろよ——

 えー……、分かったよ……。

「ソアラ、アルバを尾行——」
「勿論。様子が変だもん」

 僕達は帰ったフリをして、建物の裏に隠れた。
 アルバは辺りを見回した後に、ロドリオ村方面に走って行った。


                        * * *


「ねえ、ここって……」
「ロドリオ村の町外れに、こんなものが……」

 僕達が驚いている間にアルバは、古びたコンクリートの建物の中に入って行く。全速力で。

「ソアラーっ、起きてー?」
「あっ、ごめん。ちょっと驚いて……」
「僕も驚いたけど。とりあえず入ろう?」
「うん」

 僕が前で後ろにソアラが付いて来る状態で、アルバの後を歩いて追いかけた。

「うわ、汚い……」
「古びてるもん、当たり前だよ」
「そうだね」

 歩く度に地面や壁がギィっと言う音を立てる。
 僕は奥から聞こえるその音を辿って歩く。
 それにしてもこの建物、大きい。怖いくらいに大きい。この前の砂漠にあったのには及ばないけど——って刀持ってきちゃってるよ僕……。

「……アルバ発見」
「本当? あ、いた……」
「なんか、やっぱり変だよ。ソアラも知らなかったところ知ってるし」

 ルピナスの言った通り、尾行しといて良かった。本人は考えごとの真っ最中だけど。
 アルバは建物の二階の崖がある方を向いて

「お前なんだよ!」

と、壁に向かって怒鳴りつけた。同時にソアラが僕の鞄の紐をグッと握る。
 僕も一瞬こっちのことかと思ったけど、視線的には違うみたいだ。
 じゃあ、アルバは何に向かって……?

「気付いてたんですか。ふうん、目は良いんですね?」

 声がしたかと思うと、アルバの見ていたところに赤黒くて丸いかたまりがあった。

「そんなことはどうでも良いし関係ない。お前なんなんだ?」
「知りたいですか?」
「それを知るために追いかけて来た。」

 確かに、乾いた血の色した丸い塊を見たら僕も気になる。
 ソアラは後ろで僕の鞄の紐を掴んだまま、硬直している。無論現状は見せていない。ビビッて言葉も出ない人(今出たら困るけど)にあんなめまいが襲ってきそうな物体絶対に見せられない。
 僕もあれの正体は気になるから、こっそり話を聞いた。

「嫌でも分かる。何故ならお前は——」