二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re:番外編 ( No.24 )
日時: 2013/04/23 22:42
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)


 視界が九十度ほど傾いた。薄らいで行く意識の中見えたのは地面に生えた長い雑草の根元だった。



「あ、起きた? アルバちゃん。」
「アルバちゃん言うな。」

 ここに連れてきたのは恐らく、白鳥 青嵐。誰が見ても「ジャージ族」と思うような恰好で案の定脳筋だ。
 本当は大声で怒鳴りたいけれど、叫んだら状況が悪化する。

「あ、んでさ。アルバちゃんのことをここに連れてきたのはあたしじゃないよ。」
「は!? お前じゃねぇの!?」
「叫ばない叫ばない。うん、白っぽいロングヘアで、目の色が真っ赤で綺麗な色の子だった! 宙くらいの身長だった。」
「……そんなヤツ、いたっけ。」

 俺はいつもの様にここ(保健室)にいるから、ほとんどのクラスメイトには会ったことがあるはずだ。でも、そんな印象的なヤツは見たことがない。

「で、それを校長に言ったら転入生だって言ってた。まだ何の魔法受け継ぐかは決めてないらしいよ。」
「なるほど。で、ソイツは何だ? 俺をここまで運んで来たのか? 素手で。」
「いや、いくらなんでもアルバちゃん持ちあげれる女子はそういないよ! 魔法使って運んできてくれたよ?」
「受け継ぐ魔法決まってなかったんじゃねぇのか!? てか女子っ!?」
「受け継ぐのが決まってないだけで魔法そのものは使えるの。さっき言ったじゃないの。白っぽいロングヘアって。」
「いや待て。その理屈で言うと俺女だぞ。」
「体は凄く弱いのにね! なんでだろうっ!」

 白鳥が気にしていることを言う。だが事実だ。俺は昔から病弱だ。それが原因で小さい頃から馬鹿にされてきた。
 ……魔法使えるのに転入してくるヤツは普通に考えてあまりないと思う。俺をここまで連れてきた女子を見てみたい、そう思った。

「あのー……。さっきの人大丈夫でしたか?」
「うん、大丈夫だよ。にしてもよく森の奥からここまで魔法を操れたね。」
「僕もよく分からないんですけど……。良かった、死んでなかったんですね。」
「もう叫び散らせるほど元気になったから、大丈夫。と言うかなんで森の奥なんかにいたの?」

 たしかにその通りだ。部屋なら学生寮を借りれば良いだけなのに。なんでそんな場所にいるんだ。迷ったのか?

「寮が今無理なので、家ができるまでは野宿なんです。」
「野宿!?」

 その女子の発言に俺と白鳥の声は盛大にハモる。そんなことはどうでも良い。野宿って何!? 校長とテツはそこまで鬼なの?

「じゃあ、アルバ……、君が連れて来てくれた人の家にお邪魔すると良いよ。」
「なんで俺!?」
「恩返しくらいしなさい。校長には言っとかないとね。」
「ありがとうございます!」

 ソイツは目を輝かせながら礼を言った。ここまでされては断ったら俺の命はない。引き受けないと死ぬだろうと思い、俺は「はい。」とだけ言った。
 でも、転入生が居候することは校長に言わないとな。


「————それなら好都合です。アルバ君の使う魔法を霖音君に教えてあげて下さい。」
「え?」
「もうすぐ家が完成するので、それまでは同居して下さい。そして考えた結果、アルバ君が教えれば良いと思ったのです。成績もまあ良いですし。」

 こうして、俺は得体の知れないよく分からない女子——リンネ——を弟子に取ることになった。
 ここのルールでは、元から魔法を使えた場合でも、その魔法は非常事態の時以外に使うことは禁じられる。つまり、リンネは非常事態以外に俺をここまで連れてきた魔法、恐らく風属性の魔法は使えなくなるということ。そして、その代わりに俺の使う魔法の水属性を覚えることになる。俺的には結構お気に入りの魔法で、やり方次第では氷になると言う魔法。
 教えるのは初めてだから、少し楽しみにしている所もある。少しずつ育てていこう、俺は心の中で無意識のうちに決意していた。