二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第八戦 龍源寺高校 2 ( No.16 )
- 日時: 2013/04/17 22:52
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: 今作品では性格補正はかからない。
「次は頼んだよっ、ガブリアス!」
伊織の二番手はガブリアスだ。地面タイプで砂嵐のスリップダメージを受けないだけでなく、特性、砂隠れで回避率も上がっている。素の能力も高いので、非常に厄介だ。
(まあここでガブリアスが出て来るのは読めてたけど……問題は横に二人だよなぁ)
千尋はこのみとクチールス、茅とバンギラスをそれぞれ見遣る。
(ガブリアス以外の三体は、見事に地面技が刺さる。だから次にガブリアスが繰り出す攻撃は地震のはず。それに対して、この二人はどう出るのか)
バンギラスはクチールスのカウンターを喰らっており、結構な痛手になっているはず。だがクチールスも地震を受けているので、残り体力が僅かなのはどちらも同じ。さらに言うなら、アバゴーラもそうだ。ここは手負いのポケモンを捨てて、後続を無傷で出すという手もある。
(死に出しするのなら、クチールスの攻撃は不意討ち……三色牙や三色パンチを覚えてればガブリアスに刺さるけど、先制してやられるのがオチ。なら捨てるのが普通かな……バンギラスはどうせ遅いし、戻すメリットがない。なら)
このポケモンは捨てる。そして次に繋げる。
「ガブリアス、じし——」
伊織はガブリアスに指示を出すが、それより速くガブリアスに接近する影が二つあった。
「クチールス、不意打ち」
「アバゴーラ、アクアジェット!」
背後からはクチールスが現れ、角が変形した巨大な顎で齧り付く。
正面からは水流を纏ったアバゴーラが猛スピードで突撃し、ガブリアスの腹に直撃した。
先制技でガブリアスの先手を取った二体だが、所詮は攻撃寄りでないポケモンの不一致技と低威力の技の等倍ダメージ。ガブリアスを倒すことなどできはしない。
「……なんか邪魔が入ったけど、気を取り直して。ガブリアス、地震!」
ガブリアスは力強く地面を踏みつけ、地を伝う凄まじい衝撃波を放つ。衝撃波はまず近くにいたクチールスとアバゴーラを襲い、吹っ飛ばす。続いてバンギラスにも向かっていき、吹っ飛ばしことしなかったが、バンギラスはその場に崩れ落ちた。
アバゴーラ、クチールス、バンギラス。三体のポケモンは同時に戦闘不能となってしまった。
「……ま、こんなもんか。戻れ、バンギラス」
「よくやってくれたよ、アバゴーラ。戻ってくれ」
「ありがとね、クチールス。戻って」
三人はそれぞれポケモンをボールに戻す。ガブリアスが少しだけ手負いなので伊織が一番不利とも言えるが、実際はまだほぼイーブンな状態。
新しいボールを構え、千尋とこのみは次なるポケモンを繰り出す。
「今度こそ君の出番だ、ジャローダ!」
「次は任せたよ、フワライド」
千尋はアバゴーラと交代させたジャローダを再び繰り出し、このみはガブリアスが拘りスカーフを持っていると読んでかフワライドを繰り出す。
そして茅は、
「本番はここからだ。出て来い、ムーランド!」
寛大ポケモン、ムーランドを繰り出した。
(来たか……)
「…………」
「うー、やだなぁ……あれ」
茅がムーランドを繰り出すのを見るや否や、千尋たち三人は軽く緊張を走らせる。
この一週間、茅と共にバトルをして、彼女がどのようなバトルスタイルの名のかは概ね把握できた。というか、最初のバンギラスの時点で十分予測は可能だ。
砂嵐パーティ、いわゆる砂パと呼ばれるメンバー構成でのバトルを、茅は得意としている。
(牧野先輩のムーランドの特性は砂かき……砂隠れで回避率が上がっているように、砂パにとってガブリアスは厄介な相手なはずだから、氷の牙か敵討ちあたりで倒してくれるはず。ガブリアスはムーランドに任せよう)
となると、問題はこのみだ。
(フワライド……前に見た個体と同じ個体なら、特性は熱暴走。トリックで火炎球を押し付けてくるけど、攻撃がメインではないジャローダに矛先が向くことはない。押し付けるなら、物理主体のムーランドに押し付けるはず)
裏をかいてジュエルバットという可能性も無きにしも非ずだが、その可能性は低く、どっちみち素早さではジャローダが勝っているので特に問題はないだろう。
そう判断を下し、各々行動に移る。
「ムーランド、氷の牙!」
最初に動いたのは砂かきで素早さの上がっているムーランドだ。素早い身のこなしで駆け出し、砂嵐に紛れているガブリアスを見つけ出して氷結した牙を喰い込ませる。
四倍の弱点を喰らい、事前に不意討ちとアクアジェットで多少削られていたこともあってか、ガブリアスはその一撃で戦闘不能となった。
「またあたしに攻撃!? なんか今日、集中砲火されてない?」
「気のせいだ。ジャローダ、蛇睨み」
伊織の苦言を流し、ジャローダは蛇のような鋭い眼力で睨み付ける。その相手は、フワライドだ。
「ん……」
このみの表情が少しだけ歪む。もしフワライドの特性が熱暴走なら、この麻痺で機能停止する。フワライドの素の火力はそこまで高くないので、熱暴走がなければ恐れることはない。
「……フワライド、トリックだよ」
フワライドはムーランドに接近し、素早く互いの持ち物を入れ替えた。それでムーランドが手にしたのは、千尋の予想通り、火炎球。フワライドが手にしたのはラムの実だ。
麻痺が治ってしまうのは痛いが、これでフワライドは熱暴走が発動せず、火力も出ない。ムーランドも火炎球を押し付けられて火傷状態になってしまったため、攻撃力が低下する。
伊織の残りポケモンは一体、このみのフワライドは熱暴走が実質的に無力化され、一気にアドバンテージを握ったことになる。
(行ける……!)
胸中で拳を握り締める千尋をよそに、伊織は三体目のポケモンを繰り出そうとしていた。伊織の手持ちはこれが最後、いよいよ追い詰められてしまった。
「出て来て、トゲキッス!」
そんな伊織の最後のポケモンは、祝福ポケモンのトゲキッスだ。
(ここでトゲキッスかよ……)
トゲキッスで有名な戦法と言えば、先手を取って天の恵みで追加効果の発動率を二倍にしたエアスラッシュを連発する戦法。かなり高い確率で怯んでしまうため、ほとんどなにもできずに倒されるなんてことはざらにある。
ガブリアスがムーランドに抜かされたことを考えると、あのガブリアスはスカーフ持ちじゃなかったのかもしれない。となると、素早さを補強するためにトゲキッスに持たせている可能性が高い。
(流石にスカーフ持ちじゃあジャローダにはどうしようもない……エアスラ一発でやられるとも思わないけど、怯むのは嫌だし、ここは交代させておくか)
千尋はジャローダが入っていたボールと、残った一体のポケモンが入ったボールを同時に取り出す。
「戻れ、ジャローダ」
まずはジャローダを戻し、一旦仕舞う。そして次に、千尋の三体目のポケモンが入ったボールを放り投げた。
「出て来い、アーケオス!」
千尋の三体目はアーケオスだ。砂嵐下なので特防が上がり、エアスラッシュのダメージはかなり抑えられるはずだ。
「ムーランド、ワイルドボルトだ!」
最も早く動いたのは、やはりムーランド。全身に弾ける電撃を纏い、トゲキッスに突っ込む。
だが火傷状態にされ、攻撃力が半減しているため、トゲキッスを一撃で倒すことは出来なかった。
「うぅ、やっぱりこっち狙い……でもまだ終わらないよ! トゲキッス、エアスラッシュ!」
トゲキッスは空気の刃を飛ばし、ムーランドを切り裂く。ムーランドもそれなりにダメージが溜まっているはずだが、まだ戦闘不能には至らなかった。
しかし、
「フワライド、アクロバット」
直後、俊敏な動きでフワライドがムーランドに接近し、体当たりのように突撃して吹っ飛ばす。
「っ、ムーランド!」
蓄積したダメージが限界を超え、ムーランドは遂に戦闘不能となる。
だがそれ以上に、千尋たちの驚きは大きい。
「おいおい、熱暴走の特殊型かと思えば、物理型か……」
「トリックで押しつけられるとは言っても、挑発されたら火傷状態になるデメリットもあるのに、なんで……」
茅と千尋はたいそう驚いているが、伊織はよく分かっていないようだ。
二人の驚きっぷりを見ても、このみはいつもの表情を崩さず、静かに説明を始める。
「……まず、ヒロくんのジャローダ。あの子が麻痺撒き型っていうのは読めてたから、わたしのフワライドを特殊型と読んで麻痺状態にして、熱暴走を無効化するのは分かってたよ。次に牧野先輩のムーランドは、抜き性能を考えてるだろうから、麻痺や火傷で機能停止しないようにラムの実を持たせてるっていうのも、なんとなく読めてたんだ」
だからあえて麻痺を喰らって持っている火炎球をムーランドに押し付け、代わりに手に入れたラムの実で状態異状を回復。アクロバットの威力も高めたということらしい。
もしかしたら裏をかいてジュエルバットもあるかもしれないと千尋は思ったが、ジュエルはなかったものの、裏を書いた物理型ではあったようだ。
(……まずい)
あとがきです。なんでしょう、やっぱり動きの少ないバトルシーンだと、いまいち盛り上がりに欠ける気がするんですよね。その分、キャラクター(というか千尋)の思考が書けるので楽しいっちゃ楽しいのですが、うーん、読者的にはどうなんだろう、これ。正直、よく分からないことを延々と述べてるだけの駄文、とか思われてないか心配です。今後、もっと動きを取り入れるようにするのが課題ですね。さて、火炎球トリックで熱暴走を印象付けたフワライドがまさかの物理型と分かり、次回に続きます。お楽しみに。