二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第十戦 龍源寺高校 4 ( No.18 )
- 日時: 2013/04/20 14:35
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: 千尋に秘められし力を垣間見る時……
(大丈夫だ、上手くやれば、きっと露見せずに事を済ませられる……)
千尋は自分にそう言い聞かせて、ジャローダに指示を出す。
「ジャローダ、リーフストーム!」
大きく声を上げ、ジャローダは無数の葉っぱを出現させる。その直後、葉っぱは渦巻くように回転し、巨大な嵐となってトリトドンを飲み込む。
リーフストームは草タイプの技でトップクラスの威力を持つ技、加えてトリトドンには四倍の弱点を突けるため、トリトドンはその攻撃を耐え切れず、戦闘不能となった。
「草技が来るとは思ってたけど、よりによってリーフストームか……これであたしも脱落だな。戻れ、トリトドン」
茅はトリトドンをボールに戻す。よって、残る敵はこのみとポリゴン2だけになったわけだが、
「ポリゴン2、毒々だよっ」
ポリゴン2はジャローダに毒液を発射する。それによりジャローダは猛毒状態。スリップダメージを受ける上、時間が経過するごとにそのダメージ量が大きくなっていく。
「くっ、だったらこっちは宿木の種だ!」
ジャローダもいくつもの種子を飛ばし、ポリゴン2に植え付ける。これでポリゴン2も宿木のやりっぷダメージを受け、ジャローダはその分だけ体力を回復するが、それでも猛毒のダメージを補填し切ることはできない。
しかも、
「身代わり」
ポリゴン2は体力を削って自身の身代わりを作り出す。これでジャローダはポリゴン2を攻撃することが難しくなり、蛇睨みも使えなくなった。
「……リーフストーム!」
それでもジャローダは攻撃を止めない。再び草の嵐を巻き起こし、ポリゴン2の身代わりを破壊する。
「へぇ、天邪鬼か……」
汐が呟く。天邪鬼とは、ポケモンの持つ特性の一つで、その特性を持つポケモンにかかる能力変化が逆転するというものだ。
この特性を持つポケモンが積み技を使えば能力は下がってしまうが、リーフストームのような能力が下がる技を使えば、その変化が逆転して能力下降は上昇に変わる。
(撃つたびに特攻が二段階上がっていく天邪鬼リーフストーム。普段なら強力だけど、相手は身代わり持ちのポリゴン2。しかも)
汐の胸中での呟きを繋ぐように、このみはポリゴン2に指示を出す。
「テクスチャーだよ」
「っ!」
このみの指示を受けると、ポリゴン2の色彩が目まぐるしく変化していき、やがて赤色になると、元の色に戻った。
テクスチャーは自分の持つ技、そのどれか一つのタイプに変化する技だ。今の色とポリゴン2の覚えている技から考えて、恐らくタイプは毒。リーフストームが通じ難くなってしまった。
「こっちは毒のダメージもあるし、早く決めないと……ジャローダ、リーフストームだ!」
ジャローダはさらにリーフストームを放つ。特攻が四段階上昇した葉っぱの嵐は凄まじいの一言に尽きるが、それでもポリゴン2は倒れない。
このみのポリゴン2は、恐らく耐久面に特化させている。進化の輝石で防御と特防も上がっているので、火力の低いジャローダでは倒すのは難しいだろう。しかも、さらにジャローダにとって悪いことは続く。
「ポリゴン2、自己再生」
ポリゴン2は自己修復プログラムを起動させ、自身の体の傷を治していく。
(やっぱそう来るか……)
半ば予想していたことだが、状況はかなり悪い。ジャローダの特攻はマックス四倍まで跳ね上がったとはいえ、ポリゴン2には威力半減。しかも身代わりや自己再生まで使用してくる耐久型。
一応、宿木の種でもダメージは与えられているが、同時にこちらも猛毒のダメージを受けている。徐々に増していくスリップダメージに耐えるのもそろそろ限界だ。
(……そろそか)
千尋は胸中で呟き、決心する。
ポリゴン2が次に繰り出すであろう技は恐らく自己再生。あとはこのまま体力を回復し続け、リーフストームのPP切れか、猛毒でやられることを狙っているのだろう。ジャローダが勝つには、ポリゴン2が回復する前に決めるしかない。
だがさっきも言ったように、決して火力が高いとは言えないジャローダが、高耐久のポリゴン2を一撃で倒すのは困難だ。少なくとも、現状の火力では一撃で落とすことは出来ない。
そう、現状では。
どこかでカチッと、なにかが切り替わるような音が聞こえた。
「ジャローダ、リーフストーム!」
ジャローダはまたしても葉っぱの嵐を巻き起こす。天邪鬼で特攻が最大まで上がったリーフストームは途轍もなく凄まじかったが、それにしても勢いがあり過ぎる。
例えば、千尋のジャローダの特性は天邪鬼なのでありえないことだが、ここでジャローダの特性、深緑が発動しているとする。それならばこの圧倒的な威力のリーフストームにも納得できるのだが、それでもやはり強すぎる。
言ってしまえば、今のジャローダには通常の深緑以上の力が働いていない限り、これほどのリーフストームを放つことは出来ないはず。
だがまあ、なんにせよ、ジャローダの凄まじいリーフストームはポリゴン2を飲み込み、吹き飛ばした。どういう要因かは分からないが、威力の増したリーフストームを喰らい、ポリゴン2は遂に戦闘不能となる。
「……!」
「うわぁ、すっご……」
「おいおい、どうことだよ……」
嵐が収まると、このみ、伊織、茅は三者三様の驚きを見せる。そして汐は、
「……確定ね」
と呟いた。
なにはともあれ、千尋は無事、今回のバトルでトップを取ったのであった。
「ヒロくん、今のは……?」
驚きの表情のまま、このみは千尋にそう問うが、
「……運よく、急所に当たったんだよ」
とはぐらかすように言った。
だがこの場にいた全員、運が良かっただなんて思ってはいない。今のリーフストームは、間違いなく技の威力そのものが増強されていた。千尋がなにかを隠しているのは明らかなのだが、なにを隠しているのかが分からず、実証するための証拠もない。
そこで汐は、ポケットからボールを一つ取り出し、
「エーフィ、出て来て」
太陽ポケモン、エーフィを出した。そして、
「スキルスワップ」
「あ……」
エーフィはジャローダにスキルスワップを使用し、特性を入れ替えた。これでジャローダはエーフィと同じシンクロの特性を得、エーフィはジャローダと同じ天邪鬼の特性を得るはずだ。
「茅、ドリュウズを出して」
「? ああ……出て来い、ドリュウズ」
茅は汐に言われるがままにドリュウズを出した。その様子を見て、千尋は焦燥感に駆られる。
だがそんな千尋を無視して、汐はエーフィに指示を出した。
「エーフィ、草結び」
刹那、ドリュウズは大量の草に絡め取られ、蹲ってしまう。草は容赦なくドリュウズを覆いつくし、やがて草がなくなった時には、ドリュウズは戦闘不能となっていた。
「っ……!」
「ちなみに、私のエーフィは特攻にはまったく努力値を振ってないわ。加えてドリュウズの体重は40,4kg、互いの種族値を考えても、普通は等倍の草結び一撃では倒せない。でも、もしエーフィの攻撃能力がなんらかの要因で上がっているとしたら?」
「まさか、深緑? でも、ヒロさんのジャローダの特性は天邪鬼じゃ……」
「そうね。でも私のエーフィの特性は、どういうわけか深緑になっているわ。さてさて、これはどういうことなのかしらね、若宮君?」
「あ、ぅ……」
汐に問い詰められ、視線を泳がせる千尋。汐だけでなく、伊織やこのみ、茅も千尋を見つめている。
「…………」
「あくまで話す気はないようね。しょうがないか……茅」
「おう」
「若宮君をひん剥いて」
「おう」
「ちょっ……部長!?」
汐と入れ替わりに茅が千尋に近寄ってくる。しかも指をポキポキと鳴らしているので、威圧感は倍増だ。
「さーて、覚悟はいいか?」
「あ、いや……その」
千尋が言い淀んでいると、痺れを切らしたように茅が千尋の胸倉をつかみ、
「わっ、ちょ、分かりました! 分かりましたから! 言いますからちょっと、待ってください!」
そこで遂に千尋が折れた。茅は少し残念そうに息を吐くと、汐に視線を向ける。
「どうする、部長?」
「……話、聞かせてもらいましょうか」
そこで茅は手を離し、後ろに下がる。それによりちょうど女子四人が千尋を取り囲むような配置となった。
「若宮君、すべて話してもらうわ。あなたが今、隠していること、全部」
「……はい、分かりました」
そして千尋は、諦めたように、覇気なく部員に告げる。今までずっと隠してきた、自分の力について——