二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第一戦 雀宮高校 1 ( No.2 )
- 日時: 2013/04/15 02:18
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: 雀宮=すずめのみや 栃木県に実在する地名
栃木県立雀宮高等学校。
ポケモンバトルがブームである昨今、授業にも積極的にポケモンバトルを取り入れている学校が多い中、珍しくポケモンバトルにさして力を入れていない高校だ。
一応、教育課程にはポケモン学なる学問が必修となっているのだが、それも最低限しか行わない。部活も、野球部やサッカー部と肩を並べるほどメジャーであるポケモンバトルクラブ(通称、対戦部)なるものが存在しないという、今時では珍しいくらいポケモンバトルに消極的な学校だ。
しかし、その対戦部が存在しないはずの学校の旧校舎、その一角にある空き教室で、二人の生徒が並んでいた。
「……本当、よくやるよな、お前」
「んー……何が?」
「そうやって毎日毎日他学年のバトルの様子を観察してることだよ。飽きないのか?」
「別に。それに、今年こそインターハイに出場したいし、部員集めないと」
「現状、あたしとお前の二人。残り三人も、こんなあるのかないのか分からん部活に入るのか?」
「じゃあ、ターゲット見つけたら、あなたが説得してよ。そうすれば、一人二人は入ってくれるんじゃない?」
「暴君かお前は……」
片方の生徒は呆れ顔で首を振っている。その時、もう片方の生徒が声を上げた。
「……お?」
「どうした」
呆れていた方の生徒は、すぐに真剣な顔つきになって、窓の外を双眼鏡で覗いている生徒と同じ方向を見遣る。
「……へぇ、あんな子がいたんだ」
「なんだよ、何があったんだよ。おい」
声をかけても揺すっても、双眼鏡を持った生徒は反応を示さない。ずっと窓の外を見入っている。
「ふふふ、面白い子を見つけたわ……あれは、是非とも我が部に欲しい人材ね」
やがて双眼鏡を手放すと、その生徒は踵を返して教室の外へと向かっていった。
「茅、行くわよ。今年最初の獲物、逃がしはしないわ……!」
「……なーに燃えてんだか。ま、いいや、なるようになれ、だ」
そして、二人の生徒は教室から、旧校舎から去っていった。
雀宮高校の廊下を凄まじい勢いでダッシュする人影が一つ。小柄な体躯で普通の速度で歩む生徒たちを抜き去りながら爆走し続けるが、『1年4組』とプレートが下げられた教室の前まで到達すると、キキーッ! という音が鳴りそうなほど急ブレーキをかけ、目の前の扉を勢いよく開け放つ。
「おっはよーい! ヒロさん!」
開け放たれた扉の先、ヒロさんと呼ばれた男子生徒は、シラーッとした眼差しでその女生徒を見つめ、
「……うん、お前が元気なのは分かったから、もう少し声のボリュームを落とせ、伊織」
と言った。
『profile
雀宮高校一年
若宮 千尋(Wakamiya Chihiro)』
『profile
雀宮高校一年
桐谷 伊織(Kiritani Iori)』
伊織と呼ばれた女生徒は千尋の発言を無視し、近くの椅子にポンと着席した。立っても座ってもはっきりしていることなのだが、伊織はかなり小柄である。中学生どころか、小学生とも見紛うほどの低身長だ。明るめの髪をサイドテールにしており、顔も悪くはないので、性格さえ過ぎなければ良い女子だと思うのだが、天は人に二物を与えないのだ。
伊織が着席した直後、また教室の扉が開かれた。今度は勢いなどつかず、普通に開かれる。
現れたのは、伊織ほどではないが小柄な体躯の女生徒。黒い髪をショートカットにしている。ごくごく普通の女子高生。
「あれ、ヒロくんと伊織ちゃん、もう来てたんだ。早いね」
「おっはー、このみちゃん!」
「おー、おはよう」
『profile
雀宮高校一年
城川 このみ(Sirokawa Konomi)』
二人に軽く挨拶を返し、このみは伊織の近くに立つ。
このみが席に着かないのは近くに自分の席がないから。というか、それ以前に伊織が座っている席は本来の彼女の席ではない。勝手に他の生徒の椅子を拝借してるのだ。
「そういえば、今日の一時間目、ポケモンバトルの演習って言ってたけど……何体でやるんだろ?」
「この前は三対三だったし、今度は一対一じゃないかな? 一年で六対六は二学期からだって最初に言ってたし」
「ほんとに!? やった!」
千尋の返答に一番喜んでいるのは伊織だった。
「伊織ちゃん、一対一のバトル得意だもんね」
「逆に言えば、それだけなんだけど。中学の頃にやった六対六なんて、酷いものだったよ」
千尋の発言に、伊織は露骨にムッと膨れ、身を乗り出した。
「なにおう! 今のところあたしは一年生でナンバー2なんだよっ!」
「いや、それは知ってる」
ポケモンバトルに力を入れていないとはいえ、この学校でもポケモンバトルの強さの順位付けを行っている。そこで伊織は第二位、つまり今の雀宮高校一年生の中で、二番目に強い生徒だ。ちなみに千尋は十三番。伊織にはほぼ敵わない。
その旨を端的に伝えたつもりだったのだが、伊織には伝わらず、どころか、
「これはあたしに対する挑戦状の受け取った! ヒロさん、今日の一時間目、あたしと勝負だ!」