二次創作小説(映像)※倉庫ログ

君と繋ぐ運命 動き出す脅威 ( No.279 )
日時: 2014/06/01 23:33
名前: 葉月@iPhoneにて執筆ッス(≧∇≦) (ID: viAVUXrt)

『今度の土曜日、何処に行こうか!』

『おーい、木実ー。早くしないと置いてくぞー!』

『もう一回行こうよ』

『進路どうするんだ? どこにするんだ?』

『やっと進路が決まったか! よかったな!』


 木実が見たのは懐かしくも暖かい夢。改めて彼女は家族や親友に恵まれて幸せだった。
 木実は暖かい夢の中から覚めると、家の中だった。だが、ここは彼女の家ではなく、全く見知らぬ家の中だった。

(あれ? 確か私下校中だったよね? 何で家の中にいるの?)

「ようやく目が覚めたみたいだね」

 木実の耳に届いたのは男性の声。男性は赤い帽子を被り赤い服と青いオーバーオール、独特な形をした髭と大きな団子鼻だった。また、小柄な体で手には白い手袋をはめている。
 しかし彼女はこの男性に見覚えがあった。誰もが知っているスーパーヒーローに。

(あれ!? もしかしてマリオ!?)

 そう、紛れもなくマリオだった。マリオはご存じ任天堂の顔であり、マリオシリーズの主人公で、スマブラのリーダーである。
 木実はまさかここでマリオと出会うとは夢にまでも見なかったことだ。まるで、現実で芸能人と出会ったかのような気分である。
 すると、マリオは木実に重要なことを伝える。

「君、長いこと眠っていたよ。一週間ぐらいね」
「ふぇ?」

 当然ながら木実はポカンと口を開いて呆けた声を出した。

(待って待って!? 私、それぐらい寝てたの!? じゃあ、倒れてからずっと!?)

 思考は混乱になり、口ははくはくと鯉のように動く。言うこともまとまらずに混乱していた。
 混乱している彼女にマリオは笑いかけて「そりゃ驚くよね。でも、本当なんだ」と続けていく。彼の言葉に木実は固まり、しばらく固まった後、しゅんと落ち込んだ。


 しばらく黙り込んだ後、マリオが沈黙を破って話し出した。もちろん自己紹介も含めて。

「そういえば名前とか聞いてなかったよね。僕はマリオ。元々は炎の国【フランメ】の出身だけど、ここ、木の国の【バオム】にいつも世話になってるよ」
「あ……む、村田木実、です……。えっと……ここって……どこなんですか? ふらんめとかばおむとか何ですか?」
「それは……」
「調子はどう? あ、ここは【バオム】っていう国の『セイカイ』というところよ」

 マリオの言葉を遮るように現れたのは、マリオぐらいの身長の茶髪のショートヘアの少女が現れた。少女の前髪には赤いヘアピンをしている。
 彼女のいう『セイカイ』とは、木実が眠っていた大きな特務機関だ。当然木実は全く聞いたことがない単語のため、少女に聞いた。

「『セイカイ』って何ですか? 初めて聞きますが……」
「そうね……。『セイカイ』というのは騎士団が所属する特務機関のことよ。騎士団といっても、堅苦しいイメージじゃないから大丈夫よ。あなたが倒れたのをマリオさんが見つけてここに運んでくれたわ」
「そう……でしたか。あの、マリオさんの言う通り、私は一週間ぐらい寝てたんですか?」
「だいたいそのぐらいね。ルイージさんや日向(ひゅうが)君、笠松(かさまつ)さん達があなたを心配してくれたわ。『このまま目を覚まさなかったらどうしよう』って。それぐらい衰弱していたわね」
「す……衰弱……? 私、それぐらい弱ってたんですか?」

 少女は木実を見て、衰弱していることを言い、木実は自分が衰弱していることに驚いた。
 まさか自分がそこまで衰弱していたとは彼女は思ってもいなかった。

「けど、回復してよかったわ。とりあえず、水飲む?」
「あ、はい。ありがとうございます」

 少女は水の入った水筒を木実に渡して、彼女に自己紹介をする。

「あたしは相田(あいだ)リコ。『セイカイ』のオーナーよ」
「村田木実です。年は十五歳です」
「ということはあたし達とあまり年が変わらないわね! あたしは十七歳よ!」

(十七歳かぁ……私たちの世界だと高校二年生ぐらいかな。ということは私より二つ年上だね)

 木実と少女——リコはお互いに自己紹介と年齢を明かした。年齢だとリコが高校二年生ぐらい、木実は中学三年生だからリコの方が木実よりも年上である。しかも、十七歳でオーナーをやっているのが凄いという。
 年も近いということも分かり、他愛もない会話も交えつつ、彼女たちは互いに打ち明けていった。
 その時、マリオは木実が着ている服に疑問を抱く。この世界にとって彼女の服は珍しい。

「そういえば君の格好、変わってるね。騎士団の服じゃないね」
「あ、実は私、違う世界から来たんです」
「違う世界?」

 木実は違う世界から来たと話すとリコとマリオは首を傾げる。二人には彼女の世界がどのようなものなのかも分からない。いつもの彼女ならきっぱりと物事を言うが、今は言葉が詰まりあまり話すことが出来ない。
 リコは木実に違う世界とはどのような世界なのかを尋ねると、木実は歯切れの悪い口調で話す。彼女達が戦いのない平和な世界から来たこと、意味不明の光に飲み込まれて倒れたこと、元の世界に帰る場所があるかなどいろいろ話した。
 リコとマリオは真剣な顔をして彼女の話を聞いた後、しばらく黙り込んだ。黙り込んだ後、マリオは木実に唐突なことを言い出した。

「じゃあ、君が元の世界に帰るまで僕達と一緒にいるってのはどう? それまで協力するからさ」
「え? ここに、ですか?」
「うん。そうだよ。元の世界に帰れるかどうか分からないけど、それまでここでいようか」

 マリオの唐突すぎる言葉に木実は思わず呆けた声を出し、ポカンとした。だが、それは紛れもない事実で、木実は元の世界の帰り方が分からないでいる。
 そこでマリオが提案したのが、この世界で暮らすことだった。彼女が元の世界に戻るまでというのを条件で、だ。彼女も帰り方が分からないため、戻るまでの間世話になるだろう。
 彼女はこれから世話になるマリオやリコに対して優しく微笑み頷いた。また、「よろしくお願いします」とはきはきとした口調で言う。マリオもリコも「よろしく」と彼女に笑い返した。

Re: 『募集なう』作者とオリキャラとカオスな仲間たちの日常 ( No.280 )
日時: 2014/06/01 23:37
名前: 葉月@iPhoneにて執筆ッス(≧∇≦) (ID: viAVUXrt)

 その時、眼鏡をかけた少年とマリオと瓜二つで緑色の服を着た男性と金髪で整った顔立ちの少年が慌てた様子で、駆け寄る。

「オーナー! 今すぐ来てくれ!」

 突然の訪問に驚く三人。彼女達の顔から笑顔が消えて深刻な表情になる。眼鏡の少年はオーナーとリコを呼ぶ。

「どうしたの日向君!? 一体何があったの!?」
「【ドゥンケルハイト】の奴らが襲ってきたんだ!」
「何ですって!? 【ドゥンケルハイト】が!? 確かあいつを封印したはずよ!? また動き出したっていうの!?」
「恐らく……封印が弱まっているらしいッス。あいつの封印を解くために行動をしてるッス」
「え? 何かあったんですか? 【ドゥンケルハイト】って……?」
「名前のとおり闇という存在さ。僕達にとって、【ドゥンケルハイト】は生活の妨げとなる悪い奴らだよ」


 木実はリコ達の会話を聞いても分からなかった。聞きなれない単語がまた現れて、何の事なのかは分からない。【ドゥンケルハイト】が動き出したことや「あいつ」の封印が弱まっていることなど、この世界にとっては一大事になっているのだ。
 マリオが木実に彼らについての特徴を説明し、更に金髪の少年がマリオの細く説明をした。

「奴等の目的は『あいつ』の復活をさせることッス。闇の力は俺達をも凌駕するほどだからもし、『あいつ』が復活したらどうしようもないんスよ」
「闇の力?」
「【ドゥンケルハイト】が持つ邪悪な力のことよ。またの名前を『ディスペアマテリアル』……絶望の物質よ。その力が強いほどあいつの力は桁違いに強いわ」

 『ディスペアマテリアル』が強ければ強いほど危険が増していくと【ドゥンケルハイト】に封印したあいつの力も強くなる。
 木実はようやく理解して深刻な問題になっていることに落ち込んだ。

「じゃ……じゃあ大変なことになってるんですね」
「そういうことね。ごめんなさいね、まだ会って間もないのにこういう出来事に巻き込んでしまって……」
「大丈夫ですよ。こういうときは皆さんに頼りますから……」
「出来れば奴らが来ないときにすればよかったな……」

 マリオは苦笑いをして、木実を違う形で会えばよかったと呟いた。 【ドゥンケルハイト】が来ない形で出会えばもっと平和に会話をしていたのに。

「木実ちゃん……だっけ? あなたはここにいて。あたしと日向君とルイージさんが様子を見に行くわ!」
「分かりました」

 リコは日向とルイージと共に部屋を出て、軽やかな足取りで階段を降りていき、騎士団の機関の様子を見に行く。
 リコは少し鋭い目付きで様子を伺った。敵の動きや仲間の状態も含めて『カイセイ』の騎士達に聞いた。

「やつらはどうしたの!? みんなは!?」

 リコの声を聞いた茶髪の少年は慌てて早口で言う。しかもラ行が言えてなくて声が大きい。また、ラ行の発音がア行になっているのが特徴である。

「みんなは外に出て応戦中だ! やつ(ら)の戦力(せん(りょ)く)で押さ(れ)て(る)けど!」
「え!? 何!? 何言ってんの!? 応戦中なのは分かったけどその次何!?」

 ルイージは茶髪の少年のあまりにも早すぎる口調でしかもラ行が言えてないことに困惑していた。リコは少年について話す。

「ルイージさん、あれが黄瀬(きせ)君の先輩の早川(はやかわ)君のしゃべり方よ。あたしも最初の頃は何言ってるのか分からなかったから……」
「……俺もだ。一応、応戦中であいつらに押されてるってさ」

 日向に教えてもらい、ルイージはようやく茶髪の少年——早川が言っていることを理解する。リコも日向も彼の早口に理解をするまで困惑していたらしい。

「何だ、そういうことか。じゃあ応援に向かわせないと……」
「たった今黒子(くろこ)と火神(かがみ)、小堀(こぼり)さんが応援に行ったよ。こっちも何かを備えないとね」

 応援を要請しようとルイージが提案するが、見た目が大人っぽく、眉毛が太く、穏やかな雰囲気をかもし出す少年がもう応援を出したと答える。
 既に手を打ってあることにルイージは内心驚き、感心する。彼よりも若いリコ達が何よりも奮起しているというのが驚きだ。それに、リコや日向、早川も全員年端も行かない少年少女である。それなのに、対応力の高さには定評もあった。

「木吉(きよし)! それは本当か!?」
「ああ。火神がな、【ドゥンケルハイト】の連中を迎え撃つために黒子達と外に出たところだ」

 木吉と呼ばれた少年は火神達が【ドゥンケルハイト】の連中を迎え撃っていると伝える。木吉の報告を聞いたルイージ、リコ、日向達は真剣な眼差しで腕を組んだり顎を当てたりとしている。
 ふと思いついたリコは外の世界から来た木実を外に出させないようにと提案する。

「あの子を外に出すわけにはいかないわ。早川君、笠松さん、あの子に今は外に出ないようにと伝えてください!」
「ああ! 任せて!」
「……分かった」

 リコの言うあの子とは言わずもがな、ここに迷い込んだ木実のことである。外の様子が知らない彼女に伝えたほうがいいとリコは笠松と早川に言う。返事は早川ははきはきと、笠松は冷静な対応で答えた。二人はそのまま二階へと駆け上がった。
 残ったルイージや日向、木吉らは音をしている方へ振り向き、それぞれ武器を構える。(ルイージは素手で戦うが)闇の使者はもうここまで来ているということだ。

「構えろ! もしかしたらここにも来るかもしれない! オーナーは倉庫室かどこかに隠れてくれ!」
「分かったわ!」

 日向の指示でルイージや木吉らは戦闘態勢に入り、リコは倉庫室の中に隠れた。



Re: 『募集なう』作者とオリキャラとカオスな仲間たちの日常 ( No.281 )
日時: 2014/06/01 23:48
名前: 葉月@iPhoneにて執筆ッス(≧∇≦) (ID: viAVUXrt)

「何だか外とかが騒がしいみたいですね……」
「絶対に外に出(る)なよ! 今はここにいた方がいい!」

 二階の部屋で布団から出てきた木実は窓越しに外を見た。ノックもなしに部屋の中に入って来たのは笠松と早川の二人だった。いきなり入って来た事に木実は驚くが、マリオや金髪の少年は至って冷静だった。金髪の少年は笠松と早川に現状を問う。

「あっ、笠松さんに早川さん! どうですか? 奴らの様子は?」
「あいつらはここにも来るみたいだ。下で日向や木吉、森山(もりやま)達が抑えるらしい。外は黒子達がやっているみたいだが……」
「あいつらはもうここまで来てるって事になるッスね……【ドゥンケルハイト】……油断出来ない相手ッス……」
「恐らくあいつらを従えているのはユマという女だ。あの女は何を考えているのか知らないが、上の命令でこの街を襲撃しに来たんだろうな」

 笠松の発言に金髪の少年の顔がくしゃりと歪む。ユマという単語で目つきも変わった。

「ユマ……! そうだ……俺は……!」
「黄瀬、憎いのはよく分かるが抑えろ」
「あの……黄瀬さんは何かあったんですか?」

 金髪の少年ーー黄瀬の様子が可笑しいと察した木実は何かあったのかと聞くと、早川は耳打ちで答えた。

「黄瀬の生ま(れ)故郷でユマに家族や親友をこ(ろ)さ(れ)た過去があ(る)んだよ。しかも、黄瀬の目の前でな」
「家族や親友を殺された……!? 酷くないですかそれ!」
「酷いというとこ(ろ)じゃないんだぞ。まだ幼かった黄瀬のここ(ろ)に一生治る事がない傷w「早川、これ以上言うな」……すいません」

 早川は黄瀬がユマに家族や親友を殺された過去を持っていると明かす。だから彼は彼女に対して憎しみを抱いているのだ。早川が更に黄瀬について言おうとすると笠松に止められた。

「…………!」

 黄瀬は俯き、拳をギュッと握りしめて歯を強く噛み合せて憎悪と悔しさを漂わせる。それほど彼女のことを憎んでいる。
 闇の【ドゥンケルハイト】は黄瀬はもちろん、マリオや笠松達にとっても脅威の存在なのだ。

「みんな……大丈夫かなぁ……?」

 窓から覗くと、複数の黒い龍と一人の女と青と白の騎士団と男女が数人いる。恐らく黒子達が【ドゥンケルハイト】の刺客であるユマと対峙しているところであろう。

「いいか? この部屋か(ら)出(る)なよ? 下には今、日向達が抑えてい(る)とこ(ろ)だ!」
「あっ、はい。分かりました。ところで……日向さんって誰です?」
「眼鏡をかけた男の子だよ。さっき、リコちゃんと一緒に下に降りて行ったでしょ?」
「ついでに言うと、『セイカイ』の副隊長だ」

マリオ、笠松の順番で日向のことを話す。日向は、『セイカイ』の副隊長として勤めている。ちなみに笠松がこの騎士団の隊長である。弱冠十七、八歳でツートップというのは若くして実力のあるものだと発覚する。
そういった他愛もない会話を交わしつつ、仲間達の無事を祈ることとなった。


YUMAさん、敵として出してしまってすいません! 黄瀬の家族と友達を殺した設定にしたけどどうでしょうか?

Re: 『募集なう』作者とオリキャラとカオスな仲間たちの日常 ( No.282 )
日時: 2014/06/01 23:59
名前: 葉月@iPhoneにて執筆ッス(≧∇≦) (ID: viAVUXrt)

外は昼であるにもかかわらず、夜のような暗さだ。やはり闇の【ドゥンケルハイト】の影響なのだろうか? そんな闇に染まった空の下で緑の恐竜と桃色の球体、白と青を基調とした騎士団が黒龍を従わせている女と対峙していた。
女はサイコロを取り出して、形を剣に変形させて彼等と応戦した。黒龍を従わせている女はユマといい、【ドゥンケルハイト】の幹部の一人で、たった一人で大きな街を一つ消し飛ばしたと言われる程の力を持っている。また、サイコロを使って色々な武器に変形して対応しているという。
白と青を基調とした騎士団は日向や笠松、黄瀬などが所属する『セイカイ』だ。黒龍は空を飛び、彼らに向かって急降下すると、緑色の恐竜と桃色の球体は黒龍が襲ってきた暴風で吹き飛ばされ、木に激突した。『セイカイ』は何とか踏ん張り、赤い髪で眉毛が二つに割れた大柄の少年は苛ついた表情をしたまま黒龍を睨む。

「何つー力だよ! 黒い龍! カービィもヨッシーも飛ばされたじゃねぇか!」
「火神君! 上から来ます!」
「わぁってるよ! オラァ!」

赤い髪で眉毛が二つに割れた大柄の少年……火神は水色の髪の少年の呼び掛けに応え、長剣を構えながら黒龍に向かって飛び上がり、顔を目掛けて斬りかかった。黒龍の顔は掠った程度でちっとも効かなかった。
火神は掠ったかと舌打ちをして今度は四肢を狙う。

「…………!」
「火神! 深追いするなって!」

無口な少年と猫目の少年は火神に深追いはするなと言う。実際は無口な少年はオロオロして猫目の少年が叫んでいるのだが。
勇猛果敢に攻める火神を見て、ユマはふふ、と笑みを浮かべた。それと同時に剣から二丁拳銃に変えてセイカイに向けて発砲する。それを察した黒子は前に立って直ぐにバリアを張って銃弾を防いだ。

伊月いづき!」
「分かってます小堀さん! ウィンドクラッシャー!」

小堀の呼びかけに伊月は応え、鎌鼬を起こしながらユマと黒龍に向かって風を起こす。黒龍は伊月の風属性の攻撃で顔にも翼にも手足にもぎゃああと、けたたましい叫び声を上げる。
勢いに乗る伊月は地面を蹴って獣の叫び声を上げる黒龍に接近しレイピアを振るう。彼が狙ったのは左足で狙いを定める。すると、伊月が鷲の目を使って背後に残っている部隊に号令を掛けた。

「みんな! 狙うのはユマではなく黒い龍だ! 今はユマに攻撃を仕掛けても見切られてしまう!」
「ほぉ、私ではなく黒龍を狙うのか? 私を警戒しているように見えるが?」

伊月の作戦にユマはニヤリと口角を上げて、自分を警戒しているかと言うが、伊月も動揺することもなく返す。

「お前を倒すのはそいつらの後だ。大人しくしてもらおうか?」
「そう簡単にはいそうですかと答えるとでも思うか?」
「黒子!」

伊月の呼び掛けに黒子と呼ばれた水色の髪をした少年はいつの間にかユマの背後に回っており、拘束魔法で彼女の体を縛りつけた。
ユマの足元に魔法陣が展開され、魔法陣からは淡い水色の鎖が数十本ほど出てきてぐるぐる巻きにしていた。
だが、ユマは焦る仕草を見せることもなくじっと様子を見ている。寧ろ彼らの行動を観察して分析をしていた。

(影の薄さを活用して私の背後に立つのか。面白いことをしてくれるな)

「考えてる余裕があんなら黒い龍の心配でもしやがれ! 紅蒼の楔!」
「太陽に盗みし咎人とその一族に永久(とわ)の死を。永久の裁きを」

火神が吼え、紅い炎の楔と青い炎の楔を同時に出して黒龍の足を拘束させた。それと同時にユマは地面から現れた土の鎖でセイカイやカービィ、ヨッシーを拘束させようとするも、察した黒子と火神と小堀は魔力を込めた土の鎖を叩き斬る。

「邪魔をしないでくれませんか?」
「頭カチ割るぞクソアマ」
「後で覚悟しておけよ?」

黒子と火神と小堀は妨害したユマに対して睨みつけ容赦ない暴言を言う。言われた彼女は三人の暴言でも動じることもなく、ふふふ、と笑うだけだった。ユマの余裕な態度で癪に障るものの、今は彼女に従う黒龍を撃破することを専念するのだった。

黒龍のうちの一匹はようやく倒し、残りの黒龍を倒そうとした時、いつの間にかユマの姿は消えていた。彼女の姿はなく、残っていたのは黒子の淡い水色の鎖が数十本地面に落ちていた。黒子の魔法で彼女の体を縛りつけた筈なのに一体どうやって切り抜けたのか?

「転移魔法……?」
「あのクソ女……! 逃げやがったのか!」
「いや、恐らく彼女は俺達の力量を試しているんじゃないかと思う」
「随分と舐められたもんだな! 俺達の軍団の平均年齢が低いと甘く見てるだろアイツ!」
「ユマは試していたのかもしれませんね……」

ユマは移転魔法で黒子の魔法を抜け出したことを知り、火神はイライラしながら舌打ちをする。

「日向達も気になるところだな。一旦戻るか」
「はい」
「うっす!」

一通り数匹もいた黒龍を倒した黒子達は引き返し、日向やリコ達がいるセイカイの機関へ戻った。
不安も募りながらも無事であることを祈りつつ彼らがいる場所に戻った。