二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエスト8 時の軌跡 06 ( No.22 )
- 日時: 2013/08/28 09:07
- 名前: フレア (ID: woIwgEBx)
町は闇に染まり、道を月光と家の暖かな光が照らす。
その道を、二人は歩いていた。
少年エイトは、あの理不尽な光景を、ただ見つめていることしかできなかった。涙ながらに叫んでいた彼女は、今でもエイトの胸を苛む。
一歩あとからついて来る男、ヤンガスも同じことを思っているのだろうか。先ほどから全く喋らない。
ーーあの少女はこれからどうするのか。町人から裏切られ、傷ついた彼女が、死に急いでもおかしくない。
(いや、僕はドルマゲスを倒さなくちゃいけないんだ……。あの娘のことは気になるけど…………)
色々考えていると、エイトはふとあることを思い出した。
「ねえ、ヤンガス」
「何でがすか?」
答えるヤンガスの声は、元気が無い。
「……ドルマゲスは、あの……ミスト?って娘はさ……なぜか殺されそうになっていただろ」
「そうでがすな」
「あのとき、ドルマゲスは『次に会う時は、必ず息の根を止めます』って言ってたよね。ドルマゲスにとって彼女が生きていちゃ都合がーー」
「まってくだせえ兄貴!何か悲鳴がっ!」
悲鳴は、トラペッタの出入り口の方向から聞こえた。その声は盛んに「離して!」と叫んでいる。
「っ!ヤンガス!」
「はい!」
二人は同時に駆け出した。
月の光に照らされた二人は、風を切り、悲鳴の方向へと走る。
肩で息を切らし、辿り着いた場所で起こっている事柄は、思わず言葉を失いかける光景だった。
「いやーーーっ!!離してーーっ!」
「こ、これ娘さん!そっちこそそんな物騒な物放せ!」
少女のナイフを持った手を、緑色の魔物がーー実際は魔物ではないのだがーー押さえつけていた。
その光景を見て、何となく何でこんなことが起きているのか察した。
緑色の魔物がエイトたちに気がつく。
「エイト!この娘さんからナイフを取り上げてくれ!」
「は、はい!」
なおもじたばたと暴れ続ける少女は、広場で道化師に殺されそうになり、そして町人に理不尽な理由で追い出された、あのミストという少女だった。
エイトは、ナイフの刃の部分を持って、彼女の手からナイフを引き抜いた。
一瞬呆気にとられていたミストの鳩尾に、ヤンガスが拳を叩き込んだ。
「あうっ……」
くの字に折れて倒れるミスト。
ヤンガスの行動に、エイトは深々と溜息を吐いた。
「ヤンガス……なにも気絶させることはなかったんじゃあ……」
「いや、そうでもないぞ」
緑色の魔物が言う。
「あの娘さんは、自分の胸にナイフを突き立てようとしていたんじゃ。精神的に不安定な今は、眠らせといた方がいいのやもしれん」
「……」
エイトはナイフを直に触って傷ついた手を見やる。そしてその手を握りしめた。
「陛下、もしよろしければーー」