二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ドラゴンクエスト8 時の軌跡 07 ( No.25 )
日時: 2013/09/01 20:12
名前: フレア (ID: k7pNoPCO)

"歪んだ思想。醜い所業。僕はそんな人々が嫌だったんだ"

暗闇の中に、ミストは立っていた。
小さく掠れた声が、頭の中に響く。

「……私だって」

思い出したくないのに、何度も町の人たちの顔が浮かぶ。
悲しくって、悔しくって、辛くって、胸が痛くて。どれだけ闇の中で彷徨っても、どれだけ光の方を目指しても、あの人々が彼女を責め立てる声は消えない。

"僕は何度も裏切られたよ。その度にみんなに慰められてきたけど……君はそういう仲間、いるかい?"
「……いるわけ……ないでしょ。私はずっとトラペッタで生きてきた。それなのに……みんなに……裏切られてっ……!!」
"……いつか信じられる仲間ができるさ"
「あんな目にあって人なんか信じられるわけないでしょ!」

ミストは泣きそうな表情で、姿の無い相手を怒鳴りつけた。
もうすべてが憎くて、仕方がなかった。
言ってはいけない、そう思いつつも口にせずにはいられなかった。

「こんな世界、消えればいいのに……」





酒場は再び人の笑い声が響いていた。一人の少女を、みんなで責めたて、追い出したのに。
マスターはそんな人々に嫌悪感を抱きつつ、しかし表情には一切出さずにグラスを磨いていた。

「……いいのか?」

ルイネロが、酔いで顔を赤くしつつ、尋ねた。酔っているが、その目はちゃんと意思を持っていた。
マスターが、顔をあげた。

「なにをだい?」
「ミストのことだ」

マスターは、ふうっと溜息を吐いた。

「……ルイネロさん、あんたが言ったことだろう?」
「たしかにそうだが……運命を壊すという選択肢はないのか?」
「運命を壊す前に、壊したらだめだろう?」

マスターの発言は傍から聞いていれば意味のわからないものであったが、ルイネロは理解したのか瞑目した。

「——そうか」

ルイネロは、一升瓶をグラスに傾かせ、酒を注いだ。