二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ドラゴンクエスト8 時の軌跡 09 ( No.32 )
- 日時: 2013/09/04 17:42
- 名前: フレア (ID: 6mS.q2l2)
朝の光に照らされた草原を、馬車はひたすらに進んでいた。
車輪が軋む音も、最初のうちは不快だったが今では気にならない。
ミストはちょうどいい暖かさの日差しを浴びながら、馬車の後ろに座り、幌に寄りかかり、足を宙に浮かせながら眠りかけていた。やはり、昨晩起きて歩いていたのがいけなかったのか、とてつもない睡魔が襲ってきていた。
ミストの意識が飛びかけていたその時。
「これ、ミスト!姫に負担がかかるから歩かんかい!」
御者台からしわがれた老人の声が聞こえてくる。
声の主の名はトロデ。外見は緑色の魔物のような姿をしているが、元は人間であったらしい。
彼の言う姫というのは、馬のことだ。名はミーティア。今、この馬車を曳いている馬。こちらも同じく、人間だったという。
この二人、元々は大国トロデーンの王族だったというが、どこまで本当なのかがわからない。
「……おっさん、また始まりやしたか。姐さん、今はいうこと聞いておいた方がいいでがす。あのおっさん、娘のことになると暴走しやすから」
馬車の後側に歩きながら若干変な口調で諌めたのは、元盗賊のヤンガスだ。肥満体系で背がミストより低く、人相はかなり悪い。第一印象はどことなく賊を連想させられたが、本当に盗賊だった。つい最近、足を洗った、元盗賊であるが。背中には大振りの斧。その斧はよく研がれていて、一体どこへ強盗するつもりなのかを聞きたくなる。
「まったくおっさんにも困ったもんでがすよ。いい歳なんだからいい加減、娘離れしたらどうでがすか……ねえ、兄貴もそう思いやすよね?」
兄貴、とヤンガスが目を向けたのはエイトだった。エイトは温厚で、人当たりが良さそうな顔つきをしている。純粋そうな鳶色の瞳は、今はヤンガスに話題をふられてどう答えていいのかを迷っているようであった。背中に携えている剣は、日の光に鋭い輝きを照り返していた。
「う、ん……」
「あー、もうはっきりしないわね!」
ミストは馬車から飛び降り、エイトの前に立ちふさがって両手を腰にやる。
ミストは隣で呆気に取られているヤンガスをそっちのけで、エイトを上目遣いで睨みつける。
「そう思うんなら、はっきりと言いなさいよ!ったく、陛下だかなんだか知らないけど、あんたさっきから曖昧に返事してるだけじゃない!」
返事に戸惑うエイトの代わりに、エイトのコートのポケットに入り込んで首を出しているネズミ、トーポが可愛らしく「チュウ」と鳴いた。
「男だったら、しゃきっとしなさい!」
それだけ言うと、ミストは早足で歩き出した。
まだ唖然としているエイトに、ヤンガスは「昨日みたいな弱々しさはなくなりやしたね」と苦笑した。
「まるで別人のように元気になりやしたね」
しかし、エイトは彼女の後ろ姿を見ながら思う。……ちょっと元気になりすぎじゃあ……。