二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ドラゴンクエスト8 時の軌跡 10 ( No.35 )
日時: 2013/09/07 11:54
名前: フレア (ID: ZoJzIaOM)

「あ、そうだ」

ミストは肩越しに振り返った。

「どこに向かってるのよ」

エイトとヤンガスは、顔を見合わせると答えた。

「えっと、色々あって、とりあえずあの滝の洞窟に行って水晶玉を取りにいかなきゃいけないんだ」
「あのあとドルマゲスもどこに行ったか分からないでがすし……」
「はあ?」

ミストは歩を遅めて、エイトたちの隣に寄り添う。
彼女の表情は、何を言っているかが分からない、最初から説明してと語っていた。

「えっと……ドルマゲスが逃げたあと、僕らはちょっと頼まれごとをされてね」
「あの滝のとこにある洞窟に行って水晶玉をとってきてと言われやして」
「水晶玉……?それ、ユリマって娘から頼まれたの!?」

ミストは、神妙な表情となった。
今度はエイトとヤンガスが首を傾げるが、ミストはそんな二人をよそに、顎に手をやり呟いた。

「……ユリマはまだルイネロさんのことを……?夢がどうとか言っていたけど、本当に信じてたの……?いや、でもなんで……」
「ミスト?」
「おーい?姐さん?」

ヤンガスがミストの眼前で柏手を打つと、ミストははっと我に帰った。

「あ、いやいや!今更町に未練があるからとかじゃないから!私は……えっと、違うから!」

あわわと両手を振ってなぜか弁解するミスト。
……どうも素の彼女じゃないように見えるな……。エイトは彼女を見て思った。急に叱咤激励したり、慌てたり、何か酒場で見たミストとは違う気がする。まあ、あれは接客業だし、それにあんなことがあったし……。
エイトが勘考していると、ある一つの考えが浮かんだ。もしかして、あの娘はから元気を振り回しているだけなのか……?僕らに心配をかけないために……?
無論、彼女の心の中など彼女にしか分からない。だが、エイトにはそう思えてならなかった。だが、もしそうだとしたら、彼女は、ミストは今もまだ苦しんでいるということだ。たった一人で、あの人々の声を受け止めて。痛む胸を隠して、ミストは生きている。そうなのならーー彼女があまりにも哀れだ。

「だからーーっ!!」
「姐さん、あっしまだ何にも言ってないでがす」
「やかましいぞーミスト」

あの時彼女は、一人涙を流していた。だが、エイトたちの目の前で泣いたのは、あのドルマゲスが消えたあと、町人に責められていたときのみ。

ーー考えすぎかもしれないけど……。

エイトは溜息を吐くと、顔をあげた。
一見元気そうに見えるミストだが、彼女がどれだけ今も苦しんでいるか、どれだけ辛いのかは分からない。

ーー彼女の力になってあげれたらいいんだけどな……。

だんだんと目的地である、滝が流れる切り立った崖が近づいてきた。滝が水面に叩きつける音が大きく耳打つ。

ーーミストが、心を開いてくれたらいいんだけど……

ヤンガスとトロデと話すミストを見やりながら、エイトは思う。

ーー僕らがなんでドルマゲスを追っているか言った方がいいよね……?まず、距離を縮めるためにも……。