二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.49 )
- 日時: 2015/07/05 22:47
- 名前: 諸星銀佳 (ID: .xQ.zB/T)
先遣隊の轟音にエルヴィン率いる本隊が気付き、その方向へと馬を走らせる。道中、己が選んだ精鋭が無残な姿で転がっているのを横目に身ながら。
彼らに任せたのは間違いだったのだろうか。一瞬そんな思いが頭を駆け巡ったが、それはすぐに杞憂と分かった。
「これは…」
辺り一面に蒸気が立ち込め、その中に4人の影が映っていた。
——やはり、私の目に狂いはなかったようだ。
「団長…!」
声のほうへ視線を移すと、足を引き摺りながらグンタが現れた。
「先遣隊、エルド・ジン、オルオ・ボサド、ペトラ・ラル、グンタ・シュルツ!リヴァイ兵士長指揮下にて任務完遂をご報告致します!」
痛みを堪え、両足で立ち、しっかりと敬礼して見せた。
「ご苦労…よくやった」
巨大樹の森の入り口で待たされていただけの兵士は、何もせずに撤退を命じられた。轟音が聞こえてもその場待機を命じられ、剣を振るうことは愚か、巨人にすら遭遇せず終わった壁外調査に疑問を覚えた兵士が多数いたようだ。俺の腕をみせてやりたかった、とか不満を口にする者も居たと言う。だが、一部ボロボロになった兵士——先遣隊を見て、己の軽はずみな言動を悔やんだ者も多かったとか。
今回、先遣隊以外の兵士が巨人と遭遇しなかったのは、あの双子の奇行種が巨大樹の森からやや離れたところを棲み家とし、その一体の巨人を治めていたらしい。信じられないような話だが、ハンジが独自に調べた結果だ。間違いないといっても過言ではないだろう。
帰還の際、ほぼ無傷の状態で帰ってきた調査兵団には沢山の拍手と賞賛の声が送られた。それもそうだ。今回は少数精鋭で臨み、目的達成後はそそくさと帰ってきたのだから。
そして後日、今回の壁外調査での功績を讃え、兵団縮小を取りやめとする通知が来た。
まさしく人類の勝利、なのであった。
約束どおり、ペトラとエルドは先遣隊メンバーでお疲れ様会を開いた。と言っても、僅かな葡萄酒と薄く切られた数枚の肉だったが。
「グンタ、足の調子はどう?」
「あぁ…まだ訓練とかには支障が出そうだから、班長の執務の手伝いをしてるよ」
痛々しく巻かれた包帯がそれを物語っていた。
「心配しなくても、すぐにくっつくさ」
「まぁ、今回の任務は俺のおかげかな、あのとき巨人を誘導していなければエルドは仕留めることが出来なかったんだからな。アシストに入れおけよ」
オルオが勝ち誇ったような顔で言った。それをエルドは軽くあしらった。
「でも良かった…生きて帰ってこれて。仇討ちが…出来て」
発した内容とは裏腹に、ペトラの声は震えていた。
「これで…皆…救われたんだ…クララもダニエラも…先遣隊の皆も…班長も…」
優しい彼女は、調査兵団を離れることとなってしまったかつての仲間や、死んでいった兵士に対する思いが断ち切れていなかった。
「なのに…なんで…?巨人を倒したのになんで…こんなにも…苦しいんだろう…」
僅かとは言え、犠牲が出てしまった。奇行種に少数精鋭で挑んだのも無謀だったのかも知れないが、もっと上手く戦えたのではないかと、もっと早く仕留められたのではないかと思うのだ。
「今は、そうやって悩んでいけ」
声の主はリヴァイだった。
「へ、兵士長…」
全員が慌てて敬礼をするも、リヴァイが制止した。
「つれねぇじゃねーか。先遣隊の慰安会に俺を混ぜねぇなんて」
「いや…流石に声をかけるのは失礼かと思いまして…」
「馬鹿言え。俺は部下との交流は大切にする方だ」
リヴァイは歩を進め、ペトラの前に立つ。彼女の頬に流れる涙を一瞥し、首からスカーフを取ると、それを顔に押し付けた。
「ぶふぉっ」
「変な声だなおい…まぁいい。いいか、これからそんなことは吐いて捨てるほど経験する。お前はその度にいちいち悩むのか。そんなことしてたら巨人に食われちまうぞ。それこそ死んでいったやつらに顔向け出来ねぇだろうが」
「リヴァイ兵長…」
リヴァイは皿の上の薄切り肉を一枚食べると、そのまま去っていった。だが、扉の前で歩みを止め振り向かずにこう言った。
「今日はよくやった。次も期待しているぞ」
暫し彼の言葉の意味を理解できず静寂が流れたが、徐々に嬉しさがこみ上げ、彼の足音がもうしないのにも関わらず、全員が敬礼をし声を揃えて言った。
「「はい!」」
これが後の特別作戦班——通称、リヴァイ班である。