二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chater00 〜絶望職場体験・スタート〜 ( No.14 )
日時: 2013/09/23 09:34
名前: ランスロット (ID: rwUXTcVH)

「そういえば、神谷はどうやってここまで来たんだ?」


神崎くんの言葉ではっと我に返った。
どうやってここまで来たか…?それは…


「校門をくぐったところで急に目眩がして…。気付いたらここから少し離れた部屋に倒れていたのよ」
「えっ?!あたしも同じなんだけど」


村上さんが驚いた顔で私を見ている。
すると各々が俺も、私もと言い始めた。みんなが同じ状況、一体どういうことなの…?


「ここにいる全員が揃って気を失って、見知らぬ部屋で目覚めた…そもそも、ここはどこなのかもはっきりしてないしな」
「ここ…どこなんだろう…」
「見たところホテルみたいだけど、学校とホテルなんて繋がってないよね。繋がってるのは確か寮だったはずだし」


全員が私と同じことを経験している…。何か、おかしい。
不意に、東条くんが声を荒げた。


「あぁっ?!俺のスマホがねぇっ?!」
「あんた、カバンの中も探したの?」
「カバンがそっくりそのままなかったんだよ。スマホはズボンのポケットに入れておいたから無くなってないと思っていたんだがよぉ…」
「そういえば、あたしがマジック用品を入れておいたはずのトランクケースもない!」
「みんなのカバンや持ち物もそうなの?」
「…どうやらそうみたいね。学校で読もうと思ってたお気に入りの本が無くなっていたもの」


そういえば、と私も起きた状況を思い出す。
確かに、周りには何もなかった。私のカバンも綺麗さっぱり無くなっていた。


「それに、ここがホテルだって分かったとして、玄関らしきところが見当たらないんだけど…。部屋にも人がいた形跡がないし」
「……もしかして……誰かの犯罪に巻き込まれたんじゃ……」
「人聞きの悪いこと言わないでください!きっとオリエンテーションか何かですよ」
「でも、オリエンテーションならもっと人もいるだろうし、そもそも別の場所でやらないしよォ…」
「誰がこんなことをしたのよ!」
「あっ、どさくさに紛れて…東条!!!」


立花さんが白戸さんをナンパしようとしていた東条くんを怒ろうとした、まさにその時だった。


ピーンポーンパーンポーン…


『あーっ、あーっ、マイクテスッ、マイクテスッ!』
「何だ!?」


私は突如鳴ったチャイムに周囲を見回した。
…どうやら、テレビの真上にあるスピーカーから声は聞こえているらしい。
それは場違いなほど、能天気な声…。
私はその声に強烈な不快感を抱いていた。


『大丈夫?聞こえてるよね?えーっ、ではでは……
 えー、新入生の皆さん。今から、開催式を執り行いたいと思いますので、至急外のエメラルドパークまでお集まりください。遅れたらただじゃ済まないんだからね!』


ぷつり、と音声が切れた。
みんなを見てみると、そこにいる誰もが困惑した面立ちだった。


「今の声、なんだろう」
「たしかエメラルドパーク、って言ってたよね」
「では、外に出られるのでしょうか?」


急に、ウィーンという音が耳に入ってきた。
そこに行ってみると、それは確かに扉だった。
私達はホテルから出て行き、「エメラルドパーク」と看板の立っている場所へ進んでいった。
外は…晴れていた。異常なほどに。


「ここ…だよね」
「じゃあ一番乗りはくるみなのだ!それー!!」
「ちょっと!罠かもしれないのにっ?!待ってよ雨宮ちゃーん!」


雨宮さんと安西さんが入口を走って入っていく。
続いて、「走るのはおよしなさい!転びますよ!」と花岸さんも続く。
何も言わずに影浦くんはスタスタ入ってしまった。


「あの、少し気になったのですが」
「シオンくん、どうしたの?」
「あの放送では、『開催式』と言っていましたよね?僕達は希望ヶ峰学園に入学するためにここに来たはず。普通は『入学式』というものではないのですかね」
「確かに、可笑しいわね」
「可笑しいけど…行かなきゃただでは済まないんだろ?俺は行くぜ」
「私も先に行かせてもらうわ」
「よっし、白戸ちゃんは俺と一緒な」
「…うん」
「僕も行こうっと」
「神谷さんも早く来てくださいね」


ぞろぞろと公園に入っていく面々を横目に、私はしばしその場を動けずにいた。
…さっきの放送の声。声からの"嫌な予感"が未だに頭から離れないのだ。
実は本当にドッキリで、この場所は希望ヶ峰学園の敷地内でしたー、なんてオチも考えてみたが、嫌な予感が勝ってしまう。
でも、そう考えていたのは私だけではなかったらしい。


「本当に大丈夫なのか?」
「校内放送だって矛盾だらけだし、怪しすぎるわ…」

冥雅くん、神崎くん、佐藤さん、立花さん、羽柴くん、秦野くん、村上さん、そして私がその場に残っていた。


「……でも……ここで立っていたって……何も始まらない……と……思う」
「そうね…」


確かにそうだ。
この先にどんな危険が待っているか分からないけど、行かなければならない。
手掛かりのない今は、進むしかないのだ。


「…行くわよ」


私達は勇気を振り絞って、公園への一歩を踏み出した。
顔を見てみると、みんな不安らしく、あの放送から沈黙を保っている。
それも無理ないわ。あんな放送を聴かされたあとでは平穏を保っていられる方が不思議だもの…。
私は胸に残った不安と違和感を奥にしまいこみ、公園の中央まで歩き出した。

chater00 〜絶望職場体験・スタート〜 ( No.15 )
日時: 2013/09/23 11:41
名前: ランスロット (ID: rwUXTcVH)

「…集まれと言った割には何もないよね、この公園」
「『パーク』って言うくらいだから、遊具くらい少しはあったっていいと思うんだけどなぁ」


私は辺りを見回す。鉄でできた演台がある以外は、至って普通の広い公園だ。
遊具がないところや公園の敷地内が全て砂利で埋まっているのは少し気になるけど…。


「にしても、放送した奴はいつ出てきやがるんだ?俺達をこんな所に呼び出しておいてよぉ」


待ちくたびれた東条くんがそう呟いた、その時だった。
私たちが「普通じゃない」光景を目の当たりにする事となるのは…


「お〜い、全員集まった〜?それじゃあ、そろそろ始めよっか!!」


どこからともなく声が、先ほどの校内放送の時のものが聞こえたかと思うと、"ソレ"はいきなり現れた。
白と黒のカラーリングが縦で半分に分かれている。白いほうは可愛いクマだけど、黒いほうは赤い目に牙を向けた口…。普通ではなかった。


「なんだこれは?!ぬいぐるみか?!」
「ヌイグルミじゃないよボクはモノクマだよ!希望ヶ峰学園の、学園長なのです」
「学園長、ですって?」


思わずその訳のわからない物体に釘付けになる。
いい感情ではなく、悪い感情で、だけど…。


「ヨロシクね!!」


場違いなほど明るい声。
場違いなほど能天気な振る舞い。
間違いない、先ほどの声の主はこいつだろう。
私達の抱いていた不安と違和感はいつの間にか、底知れない恐怖へと変わっていた。
…一部を除いては。


「これ可愛いぞ?!家に持ち帰って新しい着ぐるみのモデルにしようか?!」
「その前にぬいぐるみが喋るのがおかしいって!でも可愛いのは否定しないけど!」


職業柄か、雨宮さんが無邪気にはしゃいでモノクマの周りを走り回っている。突っ込みながらも可愛いのは否定しないと星野くんが喋る。
星野くんの日本語がおかしかったことは気にしないでおこう。


「ぬいぐるみが喋るなんておかしいわよ!どうせどこかでラジオでも流してるんでしょ?」
「そもそもぬいぐるみが動いてることがおかしいって」


長月さんと豊島くんもモノクマについての感想を漏らす。
私は一瞬どうすればいいのか分からなくなった。


「だからさぁ、ヌイグルミじゃなくてモノクマなんですけど!しかも、学園長なんですけど!」
「ど、ど、ど、どうせラジコンかなんかで動いてるんでしょ?!」
「最近の技術を参考にすると、中にとんでもないICチップが埋め込まれていたりしてなァ」
「だからラジコンでもICチップでもないの!ボクはモノクマなの!」
「解体すればいいんじゃね?秦野辺りならそういうの詳しそうだし」
「……流石に動いてる物体を……解体するのは……無理……」


私は何も言えずに、ただその光景を見ているだけだった。
あいつはこの希望ヶ峰学園の学園長だと言っていた。でも、仮にこれがオリエンテーションだというのならおふざけも大概だ。


「あのさぁボクには、NASAも真っ青の遠隔操作システムが搭載されてて!って、夢をデストロイさせるような発言をさせないで欲しいクマー!!」
「く、クマ…?」
「じゃあ、進行も押してるんで、さっさと始めちゃうよ!ラブアンドピース!なんだよ!」
「それポッ○ンのパクリだろ。キャラ違うだろお前クマだろ」
「ご静粛にご静粛に。えー、ではでは…」
「…諦めたわね」
「起立、礼!オマエラ、おはようございます!」
「「おはようございます!!」」
「なんで挨拶なんかしてるんだよっ?!」


爽やかに挨拶を返す花岸さんと星野くんに、思わず豊島くんが突っ込む。
…礼儀正しい2人をよく表している言葉だと思った。


「まぁまぁ落ち着いて。では、これより記念すべき『職業体験』の開催式を執り行いたいと思います!まず最初に、これから始まるオマエラに、職業体験について一言。
 えー、オマエラのような才能あふれる高校生は、"世界の希望"に他なりません!そんなすばらしい希望をもっと高めてもらうために、オマエラには『この街だけ』で、共同生活を送ってもらいます!みんな仲良く秩序を守って暮らすようにね!」
「…は?」
「え〜、そしてですね…その共同生活の期限についてなんですが」


何を言われたのかさっぱり理解できない私達に、モノクマは言い放った。


「期限は……ありませ〜ん!!つまり、オマエラは一生ここで暮らすのです!」


期限は…ないって…一生ここで暮らすの?
私の嫌な予感は、現実になってしまったような気がした。