二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chapter04 〜大モノクマ帝国倶楽部〜 ( No.159 )
日時: 2013/12/21 17:36
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: PqmNCYUu)

———痛い。頭が。身体が。締め付けられるような感触。


「…んん…」


…数分して、頭痛から解放される。そのタイミングを見計らい、私は目を覚ました。
目の前には…。寂れた街が、あった。でも、どこか見たことのあるような気がする、そんな感触も覚えていた。


「ここはどこなのかしら…」


周りを見てみる。毒々しい街の風景には、全壊した家の集落、人間の死体、焼け焦げた植物の残骸。
見ていて気持ちのいいものではなかった。
確か私はモニャンに『東雲スミレ』という人の情報を聞いて、頭痛を起こして意識を失ったはず…。考えろ。今の状況がどうなっているのか。考えろ。
そして、私はふとある考えに行き着く。ここは…『自分の体験した過去の中』なのではないか、と。
今私が閉じ込められている街は、こんなにひどい有様にはなっていない。モノクマの不自然なオブジェは目に余るが、それ以外は至って普通の街だったはずだ。
…だとすると。こんな寂れた街の風景を見ているのは…。間違いない。私は今『夢』を見ているのだ。


そう考えていると、ふと視界に『とある男性』の姿が入る。男性は、首元に紫色のストールを巻いており、彼の傍には強暴そうな動物達が彼に付き従うように群れていた。
…彼の黒い長ランに血がついていることから、恐らくここで死んでいる死体の多くは、彼とその動物達によって産み出されたものだろう…。なんで、残酷な光景なのかしら。
すると、不意に誰かの声が聞こえる。自分でも聞き覚えのある、声。


『眼蛇夢!!待ってよ!!』


…その声の正体は、『私』自身だった。
着ているものも全く同じ。声も体格も全く同じ。そんな『神谷春子』が、ストールの男性の名前であろう『眼蛇夢』という言葉を口にしていた。
そうか。私は『眼蛇夢』という人と知り合いだったのか。


『…何故にここまで来た。貴様も地獄へと堕ちたいようだな』
『違う…。どうして、ここにいる人達を殺してしまったの。キミの大好きな動物達を使って…。
 確かに、他の学校の人達に四天王を殺されてしまったのは私も許せない…。でもだからって、江ノ島先輩の思うつぼになっちゃ駄目よ…!!』
『四天王だけではない…。あいつらに殺されたのは……。全ての……信じていた動物なんだよ……!!
 俺様は…そこで思った。『こんな世界などどうでもいい』とな。ただ、復讐したいだけなのだよ。愚かな人間に。
 春子。貴様も『愚かな人間』側だったとはな。…残念だよ』
『眼蛇夢…!!キミの好きな動物で…人殺しは駄目…!!結局は絶望して、最悪な結末を迎えるだけじゃない…!!』


目の前の私は、眼蛇夢を必死に説得しているように見えた。まるで、『闇に堕ちてしまった大切な親友』を救うかのように。
…でも、眼蛇夢と呼ばれた男の人はその言葉を鼻で笑い、私を突き放す。そして、こう突きつけた。


『…今回は見逃してやる。しかし…次にまみえるときは、貴様の命が潰える時だ』
『…………』


『行くぞ、神・破壊神暗黒四天王』と彼は言い、私に背を向けて立ち去っていく。夢の世界の私は…。それを、ただ黙って見ていることしか出来なかった。
それは…私も同じ。彼と止めようなどとは…思えなかった。
夢の中だから、という訳ではない。きっと現実の世界で同じような光景にあっても…。私は彼を止められないと思う。
立ち去る時の彼の顔には…。薄っすらとだけど、涙が流れていたから。


きっとこれは、モニャンが言っていた『人類史上最大最悪の絶望的事件』。その中のエピソードなんだ。
そう確信した瞬間、私の意識は現実に引き戻される。


…モニャンの声がはっきり聞こえてくる。きっと私を心配してくれていたのだろう。
でも、これで私は確信した。あの『眼蛇夢』と呼ばれていた男性と私には。






…『繋がりがある』。そのことを…。

chapter04 〜大モノクマ帝国倶楽部〜 ( No.160 )
日時: 2013/12/22 17:28
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: R7lCf21o)

「……谷様!!神谷様!!」
「……うう……ん……」


自分を呼ぶ声にはっとして目を覚ます。辺りを見回してみると、そこには心配そうに私を見つめるモニャンと、朝みんなと過ごしていた食堂の光景が映った。
…そうか、夢から覚めたのか。


「神谷様…大丈夫ですか?随分とうなされていたようですが…」
「大丈夫…。ちょっと、夢を見てただけだから」
「そうですか…。しかし、無理をなさってはいけません。今日のところは自室でお休みください。話の続きは、また後日行いましょう」


私が言い返す前にモニャンは私を食堂から追い返してしまった。…別に具合が悪いというわけじゃないんだけど…。まぁいいわ、今日は彼に免じて自室でゆっくりさせてもらうことにしましょう。
そうでもしないと、見つけた途端に説教を喰らいそうだからね…。


自室に戻り、私はベッドに寝転ぶ。そして、夢の中の出来事を整理する。
さっき見た夢は、今まで見ていたものとは明らかに違う、『現実味のある』夢。ストールを巻いている『眼蛇夢』という名前の男性。そして、彼を必死に説得していた私。…恐らく、あの夢はモニャンの言っていた『人類史上最大最悪の絶望的事件』の中での出来事。あの光景に転がっていた人間の数。そして、彼の長ランについていた血の量…。恐らく、彼も東雲さんと同じように『江ノ島盾子』という人に何かを唆されて、絶望に染まってしまった。そう考えるのが自然だろう。
…何故、彼は絶望に染まってしまったのだろう。そもそも、絶望とは何なのだろう。人を殺すまでに精神が狂ってしまうものなのだろうか…。
いや…豊島くんも同じような症状に陥って、2人を殺した。考えなくても『絶望』の恐ろしさは身に染みて分かっているはずだ。


「……でも、おかしいわね……。なら、なんであの画像に眼蛇夢さんが写っていたのかしら…」


ふと、ふっと頭に思い浮かんだことを口にしてみる。確かに、あの夢の中の出来事にいた彼とアルターエゴに出してもらった写真の彼とは、全然違うように感じた。…あの写真はねつ造…?いや、そうとは考えられない。じゃあ何で…?
そもそも、写真の彼がいた場所は『希望ヶ峰学園』の敷地内ではなかったはずだ。でも、夢の中の彼は確かに、希望ヶ峰学園の敷地内にいた。…どういうこと?


「写真と夢の出来事…。繋がりがあるのかしら」


そこまで考えて、急な眠気に襲われる。…そりゃあ、自室に戻ってからベッドに横たわっていたら眠くもなるわね…。


「…いいわ、とりあえず仮眠しましょう…。短時間でいろいろ起こりすぎて頭がパニック状態になったのね…」


ふわあ、と軽く欠伸をして、私は頭の中の思考をシャットダウンする。
…しばらくして。


「…あれ?神谷?おーい、夕飯だよー」
「返事がないな」
「ま、まさか殺されてるんじゃ…?!」
「それはないだろ…。多分寝てるんだよ。今まで…いろいろあり過ぎたしな。寝かせておこう」
「うん……」


こんなやりとりがあったことには、私は気づいていなかったの…。
私は、そのまま睡魔に勝てず、翌朝まで寝ていた…みたい。冥雅くんが教えてくれたんだけど…。あれ?まさか、冥雅くん勝手に私の部屋に入ったの…?

chapter04 〜大モノクマ帝国倶楽部〜 ( No.161 )
日時: 2013/12/24 17:01
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 2zitOR7a)

【コロシアイ職業体験 16日目】


あれから私は翌日まですやすや寝ていたらしい。あの夢の続きも見なかったし目覚めも割とよかったんだけど…。なんで誰も起こしてくれなかったのかしら…。いや、部屋に鍵をかけていたんだから当然か…。
私はみんなへの思いを心の中へしまい、朝食会へと向かった。食堂に顔を出すと、冥雅くんと白戸さんが私のほうへ駆け寄ってきた。どうやら昨日夕食に顔を出さなかったから、と何かあったのではないかと心配だったらしい。…いい仲間に恵まれたわ、私。さっき思ったことは前言撤回しましょう。
とりあえず、みんなにモニャンから聞いたことを話さないと。話す場所は…どこがいいかしら。やっぱり、監視カメラがない更衣室かな?


「…ねぇ、みんな。朝食会が終わったら話したいことがあるの。更衣室で待っててくれないかしら」
「なになに?何の話?」
「多分…私達の『失った1年間』についての話に関わってくると思う。辛い思い出がよみがえるかもしれないから、聞きたくない人は集まらなくていいわ」
「何か…掴んだんだな?」
「えぇ。この街の正体と、私達との関係…。何か、わかった気がする」
「でも…佐藤さんのことはどうするの?」


ふと、星野くんの言葉で私は自分の出した提案を後悔する。…そうだ、話すなら彼女が来ない時間帯に話さなければならない。今の彼女に過去を知られてしまえば、即座に犯行の動機にする可能性が高いからだ。
…でも。それでも、話さなきゃ。佐藤さんは…誰かに監視を頼みたいわ。でも、みんなにも真実を話したいし…。


「……見張りを……つけるのは……?」
「それじゃ見張りの方が話し合いに参加できないですが…」
「万事休すかァ…」
「いえ、そうでもございませんよ」


ふと厨房の方から声がする。声の正体はモニャンだった。
どうやら私が話す決心をしたのを察して、自分に何かできることはないかと勘ぐっていたらしい。彼は、「自分が見張りになるから存分に話し合いをしてくれ」と言ってくれた。


「ありがとう、モニャン」
「いえ。これ以上コロシアイが起きることは断じて許されません。防ぐためなら、私は最善の努力を尽くしますよ」
「モニャン…。良かったよね、モニャンがとっても心強くてさ!」
「コロシアイなんて、起こしちゃだめだ!」
「佐藤さんも今思ってることが『間違ってること』だって理解させて、私たちと一緒に脱出できればいいなぁ…」
「望みは薄いが…。無理ッてわけじャあなさそうだしなァ。佐藤も助けるチャンスはいくらでもあるさ」
「そうです。まだ諦めてはなりません」
「…皆様。朝食の準備が出来ましたので席にお着きください。話の続きはそれからでもよろしいでしょう?」
「そうだね!」


モニャンが微笑みながら朝食を持ってくる。
…久しぶりに、安心してご飯が食べられたような…そんな気がした。


そして。朝食後、みんなを連れて更衣室へ行くことになった。モニャンは食堂前で「真実を乗り越えられる、皆様なら出来ます」と励ましてくれた…そんな気がした。
更衣室に全員が入ったのを確認して、私は秦野くんにアルターエゴを起動するように頼む。
彼は黙って頷き、アルターエゴの入ったパソコンを操作し始めた。


「更衣室の周りには誰かいる?」
「大丈夫。誰もいないよ!」
「……アルターエゴも……準備できてる……」
『わあ、みんな久しぶりだねぇ!何のお話しするのぉ?』
「ありがとう、秦野くん。それじゃあ…、みんな。今から話すことは、全部モニャンから聞いた『真実』なの。疑わずに聞いてほしい。
 それと…気分が悪くなったらすぐに私に言って。この話はそういうたぐいの話だから…」


私の前置きを、みんなは黙って聞いて、そして黙って頷いた。状況を察したのか、アルターエゴもいつになく真剣な表情をしている。
———そして、私はゆっくりと話し始めた。
モニャンから聞いた、『東雲スミレ』というクラスメイトがいること。そして、自分が見た『恐ろしい過去』のことを…。

chapter04 〜大モノクマ帝国倶楽部〜 ( No.162 )
日時: 2013/12/25 18:12
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: jKtRhKej)

「…これが、今私が知っている全ての情報。信じたくないけど…信じるしかなかったの」
「……」


みんなの顔を見てみると、反応は様々だった。
普段通りの人もいれば、恐怖で涙目になる人、俯いて黙り込んでしまう人…。本当に様々だった。
でも、これが真実なの。今までみたもの、そしてモニャンから伝わった情報…。全てを合わせてみると…。信じられない要素なんて、考えられなかった。


「過去に、そんな酷いことがあったなんてね」
「じゃあ僕達も同じようなことを昔、見てるのかなぁ?」
「分からない…としか言えないな。俺達が昔を思い出していない状況で、この言葉は…。酷すぎる人もいるだろ」
「ご、ごめんなさい…」
「いや、神谷は悪くないよ。…それにしても、よく喋ってくれたな」
「私ももうコロシアイなんて起こしたくないの。だから、自分の知った情報は、これからもみんなに言っていくつもり。もう…モノクマの掌の上で踊るのは嫌だから…」
「そう…だね」


もうコロシアイなんて起こしてはいけない。そのために、私はみんなと情報を共有することを決めた。もう、モノクマの思い通りにはさせてはいけない。…そうしないと、どうなるか分からないから。佐藤さんを正気に戻す可能性を増やすためにも、私達はいずれ戦わなければならないのだ。…モノクマと。
…ふとアルターエゴの方に目を向けてみると、秦野くんが何かをカタカタと打っているのが目に入った。


『うん、名簿のロックは大分解除できたよ!まだ79期生の分が厳重にロックささってるんだけど…。もうちょっとすれば見られると思うよぉ』
「『分かった。見てみるよ、ありがとう』……。……名簿のロックが……解除……された……」


…名簿?彼に何の名簿か尋ねてみると、とんでもない答えが彼の口から帰ってきた。


「……『希望ヶ峰学園の生徒』……の名簿……。……77期生の分と78期生の分なら……見れるから……」
「今見ることは出来る?」
「……大丈夫……」


そう言って秦野くんは解除されたばかりらしいファイルをクリックし、開いたデータベースを私達に見せてくれた。
そこには……。77期生と78期生の希望ヶ峰学園の生徒であろう、31人の名前とデータがびっしり載っていた。
ある人は一人の名前を見るたびに「おぉ」と感嘆の声を上げて、ある人は一人のデータが出た瞬間顔をしかめた。…やっぱり、みんなにも何かここに載っている人の記憶があるんだわ。


「…やっぱりあった。『眼蛇夢』…」
「夢の中の神谷が呼んでいた名前だよな?」
「えぇ。彼、希望ヶ峰の生徒だったのね…」


私は彼のデータを見てみる。顔写真は夢の中で見たものと全く同じで、動物を連れていた理由は『超高校級の飼育委員』だったから、ということが分かった。
…でも、私と彼に何の関係があるんだろう…。


「神谷ちゃん、何か分かったことでもあるの?」
「夢の中の彼の行動の正体は分かったけど…。私と彼に何の関係があるのかまでは分からなかったわ」
「そっか…。私も早く思い出したいな、頭の違和感が増える前に…」
「白戸さんもそうなのですか?実は、僕も…」
「お前らもそうなのかよォ。実は、俺も」


どうやらみんなも頭の中に違和感を感じているらしい。…徐々に、過去を思い出している証拠だと私は思った。
突然、「……神谷……」と小さく声がする。その声に振り向いてみると、秦野くんが真剣そうな表情で私を見ていた。


「……アルターエゴ……もっと強化しようと思う……」
「強化?…って、どういうこと?」
「……ネットワークに繋げられれば……外の情報が……得られる……。……だから……今から……ネットワークに……繋げられるように……プログラムを……再構築する……。
 ……だから……アルターエゴは……しばらく……使えない……ごめん……」
「いやいやいや、そんなことはないよ!秦野、頑張って!」
「……だから……しばらく……朝食会に……出れない……」
「分かったわ。繋げる準備ができたら、私達を呼んで。…きっと、このことが知られれば秦野くんの命が危なくなると思うの。だから…単独行動は絶対にやめてね?」
「……分かった……」


どうやら、秦野くんがアルターエゴを強化して、ネットワークに繋げる準備をしたいらしい。「外の情報」が得られればそれでいいんだけど…。下手をすれば、秦野くんが命を失う危険性がある。私はそれが心配で彼に「単独行動は駄目」と一応言っておいた。
彼は小さく頷き、私達を決意を表したような目つきで見た。
…とりあえず、その話は終わり私達も解散することになった。
私も、早く眼蛇夢さんとの関係性の記憶を取り戻さなきゃ……。