二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chapter04 〜大モノクマ帝国倶楽部〜 非日常編 ( No.164 )
日時: 2013/12/27 20:43
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: P/D0CuiW)

…死体アナウンスが流れてしまった。この場にいるのは…秦野くんを除く全員。前回の裁判で「死体アナウンスに含まれた人間はクロではない」ことが分かっているが、今回は3人以上が佐藤さんの亡骸を発見してしまっている。
…つまり、殺人を犯せる人物…。犯人の候補が秦野くんだけってことになるのね…。いや、まだ分からない。もし考えを決めつけて裁判で間違ってしまったら、彼にも迷惑をかけてしまう。
ちゃんと、捜査しなきゃ。彼女を殺した犯人を見つけるために。


「な…なぁ…。もしかして、秦野が…」
「いえ、まだ分からないわ。ちゃんと捜査しなきゃ」
「そ、そうだね…」
「見張りは羽柴くんと…今回は誰に頼みましょうか」
「そうだな…。俺が指定してもいいかァ?」
「えぇ、構わないけど」
「今回は星野に頼もうと思うんだ。ちョッと手伝ッてほしいことがある」
「分かった」


羽柴くんの指定で、今回の見張りは彼と星野くんが担当することになった。
いつものようにモノクマから事件のファイルを貰い、捜査を開始することにした。
冥雅くんが「一緒に行きたい」と言ってきたので、彼と行動することにしたんだけど…。いや、人数が多いに越したことはないわ。とにかく、何か情報を得ないと。





〜ホテル 内 小会議室 佐藤ノ死体 前〜



「神谷。モノクマファイルを見てみようよ」
「えぇ」


モノクマファイルを開き、中の情報を得る。
今回も、被害者の情報が簡単にまとめられていた。






被害者:「超高校級のマジシャン」佐藤かがみ
死因:マジック用の剣による刺殺
死亡時刻:PM12:00頃
死体発見場所:イチノマチ内ホテル「小会議室」内
備考:剣による傷以外の損傷はなし。



「今回の凶器は、あの『マジック用の剣』で間違いなさそうだね。でも…沢山刺さってるなぁ…」
「マジック用、って丁寧に書いてるわね…。ってことは、この剣は彼女の私物ってことなのかしら」
「多分。そうだった、佐藤は『超高校級のマジシャン』なんだよ。危険なもの沢山持ってるに決まってるじゃないか…」



『マジック用の剣』黒い箱を貫き、佐藤の全身を刺している。今回の凶器だと思われる。



凶器についての手帳への記述が終わったところで、冥雅くんがふと不思議そうにモノクマファイルとにらめっこしているのが気になった。
私はにらめっこしている理由を聞いた。


「ねぇ、何にらめっこしてるの?何か気になることでも…?」
「犯行時刻だよ。PM12:00ってさ…。俺たちが小会議室に来て、『明かりを探していた』時刻だよね…?」
「…ん?まさか…犯人は…犯行時刻にみんなといた…ってこと…?」
「うん…。そうじゃないと、犯行時刻のつじつまが合わなくなるよ」



『犯行時刻』自分達が小会議室に入っていた時に犯行は起こった。犯人は、自分達と一緒に行動していた可能性がある。



…ってことは、今回は逆に秦野くんが犯人候補から外れるってわけね…。彼は、更衣室でアルターエゴの強化を行っていたはずだもの。
とりあえず、他に何かないか辺りを見回してみる。すると…不自然に切れたワイヤーが目に付いた。


「ワイヤー?でもどうして…」
「佐藤が準備していたんじゃないかな。俺たちの誰かを殺そうとして、さ」
「でも彼女は殺人しないって…」
「その言葉が嘘の可能性もあるよ。佐藤の今の状態を考えれば…切れてるワイヤーは殺人に使う予定のものだったんだ」
「佐藤さん…」



『ワイヤー』不自然に切れたワイヤー。1本だけではなく、数十本が切れて天井のあちこちにぶら下がっている。
      佐藤が犯行に使おうとしていた?



再び辺りを見回してみた時、羽柴くんの私達を呼ぶ声が聞こえた。
…検死が終わったのね。


「傷跡は全部剣によるもの、だぜェ。それにしても、どうしてこんなに大量の剣を刺したんだろうなァ…」
「佐藤さんが自殺をしたかった訳じゃなさそうだしね。うーん…。分からないや」
「そういえば、羽柴くんはどうして星野くんを見張りに決めたの?」
「何か床に重要そうなものは無いかッて思ッてさ。ほら、星野は『超高校級の美化委員』だろォ?こいつの目利きならなんとか見つけられないかッて思ッてさ」
「そういえば…そうだったわね。それで、何か見つけたの?」
「うん。黒い箱の中に…こんなものがあったよ」


そういって、彼は小さなボタンのようなものを私に見せてくれた。これも恐らく佐藤さんのものだったんだろうけど…。でも、何のボタンかしら?


「それ、なんのボタンか分かる?」
「考えてみたんだけど僕にもさっぱりでさ。試しに押してみようと思ったんだけど、羽柴くんに止められちゃって」
「当たり前だろォ?押してお前まで死んじまったら話にならねェだろ」
「神谷さんと冥雅くんもいるし大丈夫だとは思うんだけどね…」
「多分私達でも止められないわよ…」


星野くんの本気か冗談か分からない返しを私は苦笑いしつつ突っ込んだ。
それにしても…このボタンはなんなのかしら。押してみたい気持ちはある。だけれど、押して誰かが死んでしまっては意味がない。羽柴くんの言う通りだ。
なにか解決策はひねり出せないかと考えていたところ、ふと冥雅くんがこう呟く。


「ドア開けっ放しで、会議室から出て使ってみれば?」
「…それ、大丈夫なの?」
「会議室の中にあったんだし、中で何かが作動するように出来てるんだよ、きっと。だから外に出れば危険はないと思う」
「じゃあ、外で押してみようよ!」
「そう…ね。冥雅くんを信じるわ」


冥雅くんの提案を飲み、私達は一旦会議室から出る。そして…星野くんにボタンを押すことを指示した。
星野くんは黙ってボタンをしっかり、カチッと1回だけ押した。
すると。





グイイイイイン…………






「…何かが高速で流れてる?」
「おい、あれ見ろよ!ワイヤーの繋がッてるところが高速で動いてるぜェ?!」
「ボタンを押すとワイヤーが動く仕掛けになってたんだ!」
「…じゃあ、あの切れたものの先には…何かがあった、ってことね」



『小さなボタン』佐藤の死体のそばに落ちていた。押すと、天井に張り巡らされたワイヤーが高速で動く仕掛けになっている。


「…とりあえず、戻ろうか。まだ何か手掛かりがあるかもしれないし」
「そうね。基本的にはここで起きた事件なんだし、重点的に調べましょう」
「僕達も手伝うよ!」


私達は4人で頷き、再び小会議室へと足を踏み入れる。
ボタンが中にあったってことは…佐藤さんの自殺、なのかしら?

chapter04 〜大モノクマ帝国倶楽部〜 非日常編 ( No.165 )
日時: 2013/12/29 12:37
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: UVjUraNP)

…やはり小会議室の中には、佐藤さんの死体が入っている黒い箱以外の目ぼしいものは見つからなかった。でも、どうして黒い箱なんて用意していたんだろう…。



『黒い箱』小会議室の中心部分にあった不自然な黒い箱。何のために用意されたのかは不明。



「ねぇ、佐藤の部屋に行ってみない?」


突然発せられる冥雅くんの提案。確かに、彼女が何を考えていたのかは気になる。行ってみて損はなさそうね。
私は彼の提案を呑み、羽柴くん達に見張りと捜査を任せて小会議室を後にした。





〜ホテル 佐藤ノ部屋 前〜


佐藤さんの部屋の前に行ってみると、偶然にも神崎くん、シオンくんと鉢合わせた。どうやら2人も佐藤さんの部屋に何かあると踏んでやってきたらしい。


「神谷達も手掛かりを求めて来たのか?」
「えぇ。佐藤さんの犯行の何かを手に入れられたらいいんだけど…」
「まぁ、今の状態じゃ全然証拠が分からないしな…」
「とにかく、入ってみましょう」


確かにシオンくんの言う通り、喋っている暇はない。モノクマのタイムアップの放送が流れてしまえば、手掛かりを得ることすら出来なくなってしまう。
真実を逃してしまった先にあるのは————クロ以外の死のみ。
得られるものは、得たほうがいい。そう気持ちを切り替えて、私は佐藤さんの部屋のドアを開けた。
部屋の中にはマジック用の道具がたくさん置いてあり、実に佐藤さんらしいなと感じる。…そして、特に目を引くものを発見した。


「ホワイトボード…?何かびっちり書かれてあるけど」
「あの一連の事件は、佐藤が仕掛けたものだったんだな…」
「ではあの事件は佐藤さんの自殺、ということなのでしょうか?」
「そうかしら…」


ホワイトボードには、びっしりと小会議室内での犯行が書かれている。『剣』やら『ワイヤー』やら書かれているので、間違いないだろう。
…だけど、どこか違和感を感じるのは私だけだろうか。ボタンを押した後、剣は『箱以外を狙って』床に刺さる、とホワイトボードには書いてある。でも、実際には箱に入っていた佐藤さんを直撃している。
…佐藤さん以外の誰かが、剣の矛先を変えたのかしら…?



『犯行計画』佐藤の部屋のホワイトボードに書いてあった。実際に起こった事件とほぼ同じことから、一連の出来事は佐藤が起こしたと考えていい。

『剣の矛先』ホワイトボードの記述と実際に刺さっている場所が矛盾している。佐藤以外の誰かが動かした可能性がある。



「誰が変えたんだろう…?いつ…?」
「そういえば、佐藤さんを朝見かけました。何をしているのだろうと思ってしばらく見つめていたのですが…。どうやら小会議室に用事があったようですね…」
「ということは、犯行の準備をしていたのね…」



『シオンの証言』佐藤の姿を朝見かけた。どうやら小会議室で犯行の準備をしていたらしい。



「他に目ぼしいものは…なさそうね」
「なぁ、秦野にも話を聞いておかないか?犯行時刻いなかったからといって、あいつにアリバイがあるとも思えないし」
「そうね、私もそう思っていたところよ。行きましょう」


私達は佐藤さんの部屋を後にし、更衣室へと急ぐ。
誰かが変えた形跡があるのなら、今回の事件は他殺。だけど、一体誰がそんなことを…?

chapter04 〜大モノクマ帝国倶楽部〜 非日常編 ( No.166 )
日時: 2014/01/02 17:42
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: j4zkgG9C)

〜ホテル内 更衣室〜


「……神谷……。……誰か……死んだのか……」
「えぇ。佐藤さんが、殺されたわ。…ってことは、キミはずっとここにいたのね?」
「……あぁ……。……ずっと俺一人で……アルターエゴの強化をしていた……」
『秦野くんの技術凄いんだよぉ!まるで、『ご主人タマ』みたいに速度も速いし技術も凄いんだぁ!』
「ご主人タマ?」
「……多分……このパソコンの持ち主のことだと……思う……。……今はそんなこと話している暇じゃないけど……」



『秦野の証言』秦野は朝からずっと更衣室に籠っていた。



更衣室の中に入ってみると、案の定秦野くんが忙しそうにパソコンをいじっていた。どうやらアルターエゴを起動したまま作業が出来るようにプログラミングされていたようで、彼もその技術に驚愕していたらしい。…秦野くんの目を見てみると、真剣そのものだった。彼が嘘を言っているようには思えないが…一応アルターエゴにも話を聞いておかなきゃ。


「アルターエゴにも話を聞いていい?」
「……大丈夫……」
『どうしたのぉ?』
「『秦野くんはいつからキミの強化を始めたの?』」
『えーっとぉ…。神谷さん達がいなくなってから、ずっとここにいたんだよ!たまに自室に戻ってたけど、きっとご飯や僕を強化する準備だったと思うよぉ?今日も、朝早くから来てくれたんだぁ!僕、凄く嬉しかったよぉ!』


…アルターエゴは嘘をつかない。秦野くんは…犯人ではない。じゃあ…あの場にいた誰かが、佐藤さんを殺した、もしくは佐藤さんの自殺。この『2つの可能性』に絞られた。
でも、私達に殺す手立てなんて…。剣を箱に刺すボタンは、彼女が入っていた黒い箱の中に入っていたのだ。誰も殺せないはずよね…。
そう考えていると、ふと神崎くんが私にとあることを確認してきた。


「神谷。小会議室のワイヤーは、その小さなボタンで作動するんだったよな?」
「えぇ。実際に押して確かめたし…」
「…だったら、おかしいよ。小さなボタンには血がついていないし、お前さん達が触った以前の指紋がないぜ」
「それはどういうことなのでしょうか?」
「つまり…『佐藤はボタンを触っていなかった』ってことだよ」


…佐藤さんはボタンに触れていなかった、ですって?それじゃあ、佐藤さんの自殺は無理じゃない!やっぱり、あの中の誰かが……。
だったら、どうやって佐藤さんを殺したの?…思わず気になって神崎くんに聞き返してみると…。彼は苦い顔をしながら、「裁判の時に話すよ」と言った。神崎くんは何を考えているのかしら…。
と、思っていたその時だった。





ピーンポーンパーンポーン…




『これだからゆとり世代は困るんだよね〜。捜査の時間はおっしまいで〜す!!
 さぁ、乗るんだよあの赤いエレベーターに!!裁判場へ来るんだよっ!!待ってるからね、ばいば〜い!!』




ぷつり。





「時間切れですか」
「後は裁判で話し合いましょう。でも…今までの情報だけじゃ全然まとめられないわ。みんな…頼りにしてるわよ」
「もちろん!神谷のためなら頑張るよ!」
「大丈夫、神谷なら答えにたどり着けるよ」


タイミングを見計らったように、モノクマのアナウンスが鳴り響く。
私達5人は、覚悟を決めてお互いに頷き、ホテルを後にする。
…もう、こんな裁判は起こしたくない。だからこそ…戦わなければならない。


…正直、今回の裁判は犯人の候補が多すぎて…。いいえ、裁判が始まってからにしましょう。
私はどこからともなく現れる不安を無理やり心へとしまい、イチノマチへと足を踏み入れるのだった。