二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chapter04 〜大モノクマ帝国倶楽部〜 学級裁判編 ( No.188 )
日時: 2014/01/18 18:54
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: sCyn8lHK)

「シオンくん……」
「何で…何で殺しちゃったのさ…!!」


シオンくんのおしおきが終わった。
裁判場には、生き残った仲間のすすり泣きする声が、私の耳に届いてきた。…本当は私だって泣きたい。だけど———
泣くことなんて、今の私には許されていない。
———シオンくん、キミはどんな気持ちでおしおきに臨んだのかしら。キミは……どうして、『自分を犠牲にしよう』なんて思ってしまったのかしら。
私の胸には、後悔と罪悪感と———絶望だけが、残っていた。
だけど、みんなのすすり泣く声、そして私の劣悪な感情……。それさえも、目の前の『こいつ』は嘲笑ってくる。


「いやっほううううううう!!!!!!いや〜、自分の実力に絶対の自信持ってるみたいだからさ、ギャンブルの『一番のタブー』犯しちゃったよ〜!!!
 だってさ、ボクがいじらなかったらあれ、確実に『赤』に入ってたんだよ???シオンくんは死に際にも能力を見せつけてくれたねーーーーー!!!!!ぷひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
「…………っ!!」
「でも、シオンくん『みんなのために殺人を犯した』って言ってるけどさ、実際のところどうだったんだろうね?結局は彼も『ここから出たかった』ってオチなんだろうね!!!
 他の人と変わらないじゃん!!!あーっはっはっはっはっは!!!!」



モノクマは滑稽に笑い、彼の死にざまを嘲笑った。それは決して見ていて気持ちのいいものではなかった。
…当たり前だ。目の前で、大切な仲間を、今までも、殺されてきたんだから。———これからも、きっとそう。モノクマが動機を与え続ける限り、私達は———こんなつまらない殺し合いを、続ける運命にあるのだ。
きっと、その先に見えるのは……『絶望』。そうなるんだったら、いっそのこと……ここに残ることを『受け入れたほうが……』
———一瞬、そう思いかけた。だけど、その思いは『ある人物の一言』によって、かき消されることになるのだった。








「ちょっと待てよ。モノクマ、お前さんにシオンを嘲笑う資格はないんだぞ?」
「はにゃ?」








———私の視線の先には、いつもより怒りを込めた目つきでモノクマを睨んでいる神崎くんの姿があった。
彼も、今回の事件には心を悩ませていたんだろう。だから……あんなに目つきが怖いのだろう。


「シオンはどんな思いであの殺人を犯したんだろうな?きっと……内心怖かったんだと思うよ。だって……『佐藤の殺人』は本来であれば、あいつも含めた『俺達』に降りかかってくるはずなんだからさ…!!」
「だから?でもさ、佐藤さんを殺したのは明らかに『シオンくん』だよねぇ?
 結局は人殺しには変わりないんだよ。彼は最低なことをやってのけたんだよ」
「あんたが私たちに『殺し合いをしろ』なんて言わなきゃそんなことにはならなかったじゃない!!
 こんなにも人が死ぬことなかったじゃない!!」
「ボク無駄に言い争うこと嫌いなんだけどな〜。まぁいいや、じゃあオマエラもあがいてごらんよ。『このボクを倒せるかどうか』。……終盤戦に突入だね」
「おい、待てよ!!!」


冥雅くんの言葉を遮り、一瞬でモノクマは椅子から消えた。
———最後に、『オマエラ、殺し合いをしないって言ったけど、本当にそうかな?』という言葉を残して。
そして、裁判場には残された私達と、確かな沈黙だけが残っていた。
———しばらくして、星野くんが口を開く。


「とりあえず、ホテルに戻ろうよ。……シオンくんのことは、僕も悲しいけど……」
「うぇ…うん……」
「そう…だなァ。いつまでもここにいるわけにはいかないし」
「……神谷はどうする……?」
「私は……」


———ううん、シオンくんを弔ってあげたい気持ちは山々。だけど…彼の最期の言葉。『自分達を信じている』その言葉を無駄にしないためにも……。
私は、前を向かなくちゃ。モノクマの絶望に、立ち向かわなくちゃ。


「……戻る、わ。そして…殺し合いはもう起こさない」
「…神谷…。気を張るのはいいけど、無理しちゃだめだよ?それが原因で死んだら…オレ一生ここから出てやらないから」
「何それ。でも……冥雅くん、ありがとね。私のこと思ってくれて」
「思ってるのはオレだけじゃないよ。ここにいるみんな、全員そうだ。大丈夫、神谷は一人じゃないんだよ」
「そうそう、神谷ちゃんにはわたし達がいるから!」
「気負うなよ、神谷」


それに、私には仲間がいる。目的を共有する、絆を得た『仲間』が。
その絆は『殺し合い』という一番最低な行為で育まれていったのだけれど…。今はそれに頼り、すがるしかないんだと思う。
今まで死んでしまったみんなのためにも。私が出来ることは…『あがく』ことだけなのだ。
そう思いながら、私達はホテルへと戻って行った。



入手アイテム
『黒い蝶ネクタイ』
シオン・スカーレットの遺品。
彼が幼いころから大切にしていた蝶ネクタイ。
防水加工がささっており、今でもその効果は持続中だという。