二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter05 〜キオクのウタ〜 (非)日常編 ( No.199 )
- 日時: 2014/01/31 18:04
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: bSqE9h/E)
私達が食堂に戻ってみると、珍しくホテル班はまだ食堂にいなかった。
先に戻っていた星野くん達と一緒にお茶を飲んで少し待っていると、ホテル班の3人が帰ってきた。
「大発見しちゃった」と自信気に冥雅くんが隣の席に座る。…どんな大発見なのかしら…。
「珍しいね、街班が早く戻ってるなんて!」
「それほどまでに重要な情報が揃ってたんだよね?」
「重要どころじゃないって!あのさ、あのさ!」
「報告会始めてからでいいだろ、伝えるの…」
半ば興奮気味の冥雅くんと安西さんを、神崎くんがため息交じりに止める。
それほどまでに大発見だったのね、今回の探索…。私が彼らを見ながらそう呟くと、神崎くんは苦笑いしながら「まぁ、な」と答えた。
そして他愛ない話をしつつも、いつもの報告会が始まる。
「じゃあホテル班からの報告を始めるね!えっと…まずは、ホテルの4階が解放されてたよ!そこには、イチノマチが一望できるテラス、広い研究室、武器庫、それからモノクマのマークがある部屋があったよ」
「け、研究室だとォ?!」
流石『超高校級の科学部』。羽柴くん、今回も興奮気味ね。
「うん。科学の実験で使いそうな道具が沢山揃ってたよ。オレはそういうの全くわからないからさ、羽柴に伝えて安全かどうか確かめてもらいたくて…」
「任せろォ!!」
「す、すごい興奮だね…」
「良かったわね、羽柴くん…」
羽柴くんは興奮を隠し切れずに、目がまるでお宝を発見した状態になっていた。薬品と道具が揃えば…彼がそういう反応をするのは目に見えてわかっていたんだけど…。うん、予想通り過ぎて逆に怖くなってきたわ。
その他の部屋は…テラス、武器庫、モノクママークの扉の部屋か…。
「あからさまに私達にコロシアイを助長してないかしら」
「だよねぇ…」
「でも、武器庫の中は空っぽだったんだ。モノクマのやつ、俺達が辿り着くまでに全部片づけてしまったらしい」
「ど、どうして?モノクマはわたし達にコロシアイをさせたいはずでしょ?」
「さぁ、な…。だけど、俺達が武器なんかで屈しないって気付いちゃったんじゃないかな。なんとなくだけど、そんな気がする」
「追い詰められているのかしら…」
「ると、いいけどね…」
…モノクマが故意に武器を隠したんだったら、一体なんの目的があったのかしら。『武器庫』って書いてある部屋の中に何もなくて、期待外れの絶望感を味わわせる…のは、何かおかしいわよね。
まぁ、きっと大した理由じゃないんでしょう。この話は軽く受け止めておこうかしら。
「モノクマの部屋は豪華って感じだったよ。なんていうか…ほら、テレビ番組でやってる『徹○の部屋』みたいな感じの!」
「じゃあ、あいつはそんな感じの部屋で寝泊まりしてたのかァ?」
「寝泊まりしてたわけじゃなさそうだよ。でも…何か、あいつがいた形跡はあった」
「何してたんだろうね…」
モノクマの部屋…。寝泊まりしていないと聞かされて、私の脳内の疑問符はただ増えるだけだった。
…本当に何をしていたのかしら。まぁ、知りたくもないけど…。
「俺達の報告は以上、かな。じゃあ神谷達、よろしく」
「分かったわ。まずは…街全体が桜で覆われていたわね」
「ほ、本当?!オレ、桜ってテレビでしか見たことないんだー!!」
「冥雅…お前日本に住んでて桜も見たことねェのか?」
「うん。だから、人口でも一回見てみたかったんだよー!!ふわぁ、綺麗なんだろうな…!!」
冥雅くんが桜をイメージしてうっとりしている。…これ、続けてもいいのかしら…。
そう思っていたら、神崎くんが冥雅くんのほっぺたをむにむに掴んで正気に戻した。正気に戻してくれたことはすごくありがたいんだけど、冥雅くんを怒らせちゃだめでしょ…。
「は、話を続けるわよ。最後の街には…。まず、薬屋さんがあったわ」
「薬屋と研究室が一緒に開放なんて…何かモノクマがたくらんでるのかな?」
「そんなことは今はどうでもいい!薬品と研究室!そこで出来ることは一つだろォ?!」
「凄く興奮してるのが伝わってくるよぉ…」
「ま、まぁそのことは後にしましょう。薬屋さんでこんなファイルを見つけたの」
まだ興奮が収まらない羽柴くんを放っておいて、私は薬屋さんで持ってきたファイルを見せる。
明らかに似つかわしくないファイルの色に、一同は驚きを隠せなかったらしい。
「こ、これ…!」
「中身は更衣室で開けるつもりよ。あれとの比較もしたいしね…」
「うん、それがいいよ!」
「じゃあその中身は後で見るとして…。他にはなにか目ぼしいものはあったか?」
「他には…だだっ広いモノクマの城と、機械のパーツショップがあったわ」
「へぇ…。DJキット強化のパーツも置いてあるのかな…」
パーツショップの話をした直後、神崎くんの表情が少しだけ変わった。…そうか、自分でDJキットをいじったりもしてるんだっけ。
「まぁ…今はいいや。パーツはいつでも見に行けるしな」
「それと…店の中でこんなものを見つけたわ」
そう言って、私は写真ファイルの『左右田』と彫られたドライバーを見せる。
他のドライバーとは明らかに違う色に、みんなは動揺を隠せずにいたようだ。
「これは…もしかして、あのデータベースに入ってた…」
「うん。77期生の中『左右田和一』って人がいたわ。恐らくこのドライバーも彼の私物なんでしょう」
「じゃあ、この街にも『左右田和一』って人が住んでいたのかなぁ?」
「いや、それはないよ。街の住居者リストにはそんな名前なんてなかったし」
「破られてただけだから、もしかしたらってのもあるけど…」
『左右田和一』。ここに住んでいた人だったのかしら。いや、彼好みの店があったことから住んでいた可能性は大いになるのだけれど…。あのページを破り取った犯人を今は恨んだ。
「他には…特になかったわね」
「じゃあ、今日はこの辺で…」
「あ!思い出した!!」
はっ、とした表情で急に冥雅くんは立ち上がる。その姿にびっくりして私はしばらく何も言えずにいた。
しばらくの沈黙が続き…………神崎くんの一言でその沈黙は破られた。
「どうしたんだよ、急に立ち上がって」
「研究室の奥に変な扉があったんだよ!ほら、3人がかりでも開かなかったあれ!」
「あぁ、あれね!でも、それがどうしたの?」
「いや…あの奥には何があるのかなぁって、思ってさ」
苦笑いしつつ冥雅くんがそう言うと同時に、悲しそうな目をしてモニャンが会話に割り込んできた。
…もしかして、モニャンなら知ってるんじゃないかしら?一瞬そう思い、彼の返答を待つ。
———そして、彼が導き出した答えは…………予想を大幅に上回る、とんでもない返答だった。
『その奥には…………今まで犠牲になられたクラスメイトの皆様が、眠っておられます』
- chapter05 〜キオクのウタ〜 (非)日常編 ( No.200 )
- 日時: 2014/02/01 17:49
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: Zspe6CcB)
「……へ?」
モニャンの言葉を聞いて、私は変な声で生返事をすることしか出来なかった。…頭で彼の言葉を整理するのに…少し時間がかかってしまった。
———彼は何ていったの?『今まで犠牲になったクラスメイトが眠っている』?…どういうこと…?
ふと、考えているうちに一つの考えに行き着く。それは、村上さんが校則違反で殺されて、ホテルに戻った後モニャンと会話した時の言葉がきっかけだった。
「『死体安置所』…。研究室の奥には、それがあるのね?」
「はい。私が死体をすべてそこに移動しているので、間違いありません」
「じゃ、じゃあそこに今まで死んじゃったみんなが…」
「一部の方は形を変えて…ですが、確かに眠っておられます」
モノクマによってコロシアイを命じられ、犠牲になってしまったみんながそこに眠っている。———どうしてだろう、無性に彼らを一目見たくなった。
彼が続けて言葉を言おうとしたそれを、私は自分の声で遮る。『死体安置所』の鍵を開けてくれないか、と。
「…私も、今まさにそれを言おうと思っていたところなのです。どうでしょう、今からでも会いに行きませんか?鍵は私が持っていますので、案内します」
「…私も、東条くんに謝りたいことがあるから、行こうかなぁ…」
「よーし、行ってみよう」
「案内をお願いしてもいいか?モニャン」
「はい。かしこまりました」
———今度は全員で、ホテルの4階、研究室へと向かう。
研究室は報告通り、やや広い間取りで出来ており、並べられた棚の中にはびっしりと科学で使う道具が並べられていた。
…そして、その奥にそびえる細長い扉。それが…『死体安置所』への入り口。
モニャンは黙ってそこまで歩き、ドアに鍵を差し込み、『カチャ』という音を鳴らした。———死んでしまったみんなとの再会を仰ぐ、その音を。
「…この先は寒くなっておりますので、どうかお気を付けください。気分が悪くなられたら、すぐにお戻りくださいね。暖かい飲み物をお持ちして待っていますので」
「あ、ありがとうモニャン。じゃあ———行ってきます」
「いってらっしゃいませ」
意を決して、ドアを勢いよく開ける。
そこに飛び込んできたのは、小さい部屋に冷蔵庫のような扉が幾つもついている光景だった。そして……モニャンの言っていた通り、寒い。
「寒っ!!」
「そりゃそうでしょ…。でも、想像してたより寒いよ…。あまり長居は出来ないよ?」
「そうだね…」
身体をさすりながら、私は端っこまで歩いてみる。———恐らく、この中に今まで犠牲になったみんなが…。試しに、近くにあった扉を開いてみる。
そこでは……見覚えのあるサスペンダースカートが、目に入った。
「……村上、さん」
サスペンダースカートを着用していた同級生なんて、一人しかいない。
『超高校級のリポーター』で、このコロシアイ体験職業の最初の犠牲者となってしまった村上一夜さん。まさに、彼女だった。
「ルールを知る前に、殺されてしまった…。モノクマは、どうしてキミを殺してしまったんでしょうね?殺す理由なんて、なかったのに。守れなくて、ごめんなさい。一緒に…ここを脱出したかったわ」
彼女を助けられなかった後悔と無念を、思わず彼女の亡骸に吐いてしまう。そんなこと言っても彼女は生き返らないのに。そんなこと言っても彼女は、もう固く閉じた瞳を開くことはないのに。
———そう思いながら彼女を見続けていると、ふと何か違和感を頭に感じた。
「(何かしら、この違和感…)」
違和感に気付いたとたん、それは大きくなって私の脳内の後悔と無念をぶち破って覆ってしまう。何かしら?何か、『当初の彼女』とは違うものが…。
……そう思って彼女の髪型を見た時に、何か今まで感じていたものとは違うものを感じた。
「……髪型が、違う……?」
そう。彼女の特徴でもある、あのドリルのポニーテールがなくなっていたのだ。
モニャンがここに閉まった時に取ったつけ毛だったら話はしっくりくるが、どうもそうではない気がする。
彼女は———いったい誰なの?
しばらくその思考に浸っていたせいか、冥雅くんが震える声で私を呼んでいることに気付いていなかった。
「か、か、神谷……。もう戻ろうよ…オレ寒くて死んじゃいそうだよ…」
「あ、え、えっとごめんなさい…も、戻りましょうか…」
振り向いた時の冥雅くんの顔色を、私はしばらく忘れることが出来ないでいた。
———あぁ、後で謝らないと…。ファイルを見るのは明日にしましょう…。
そう自分の考えを整理しながら、モニャンの待つ食堂まで戻っていったのだった。