二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ダンガンロンパF 第1章 〜希望の知識と絶望の運命〜 ( No.203 )
日時: 2014/02/01 21:32
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: Zspe6CcB)

【コロシアイ職業体験 19日目】


———ついに、ファイルを開ける日がやってきた。


「全員いる?」
「……大丈夫……。……8人……全員いる……」
「モノクマは?」
「しばらくは来なさそうだよ。大丈夫」
「よーし、じゃあ開けようよ!神谷、早く早く!」


19日目、ファイルを開くのは朝食会の後に決まった。そして、今がその時間帯である。モニャンも呼んで、更衣室に全員が集まる。
冥雅くんが「早く、早く!」と催促している。…そんなに急かさなくても開けるわよ。


「…それじゃあ、開けるわよ」


みんなに確認を取った後、私はゆっくりとファイルの封を切る。
……中には、1冊のノートが入っていた。表紙には『絶望再生実験ノート』と書かれている。
『絶望』に関する資料か…。これを読めば、豊島くんがあぁなってしまった理由もわかるのかしら。


「読んでみるわね。気分が悪くなったら、すぐに言って」
「わかった!」


恐る恐る表紙を開く。内容は…どうやらとある研究員が記した日記のようだ。
私は気分を落ち着かせて、全員に聞こえるようにそれを読み上げていった。














【9月12日】

 『狛枝凪斗』という男が、『絶望で人は蘇生できるか』と依頼してきた。
 どうやら『あの方』の命令らしいが、俺にはそんな技術も、それを可能にする方法にも心当たりはなかった。
 しかし、『希望ヶ峰学園』から奪ったプログラムと『絶望』を駆使すれば、それに近いことはできるのではないかと考え、興味もあった俺は彼の依頼を承諾し、実験を開始することに決めた。狛枝には『準備が出来たら連絡するから、協力者を募っておいて』と言われた。どうやら、実験体は狛枝が用意するらしい。




【9月28日】

 これまでの資料と実験を合わせ、絶望は『人から人へと感染していくウイルスのようなもの』だということが分かった。まぁ、気体というよりは概念のようなものだから、当たり前のような結果だったのだが。
 当たり前の結果しかできない俺も、結局は絶望的な気分を味わうんだな。この快感は……他じゃまねできない。




【10月1日】

 狛枝が実験体の死体を連れてきた。
 死体の名前は、『冥雅雪斗』。見た目からして高校生、黒髪と緑の目が特徴的な一般的な学生のようだ。狛枝が言うには、『殺したてホヤホヤだから取扱いには十分に気を付けてね?』とのこと、だそうだ。
 しかし、そこで問題が起こった。彼に『誰の絶望を植え付けるか』という実にくだらないことで喧嘩が起こった。うちの研究チームの『罪木蜜柑』と狛枝が言い争いを起こしたのだ。結局じゃんけんで狛枝が勝利し、彼の絶望を植え付けることになったのだが。




【11月11日】

 冥雅雪斗に絶望を植え付ける準備は整った。後は彼の脳に絶望を流し込み、蘇生するのを待つだけだ。
 『超高校級の外科医』の能力を持つ俺なら、出来ないことはない。…ククク、やってやろうではないか。




【11月23日】

 冥雅雪斗は『蘇生』した。狛枝の絶望で蘇生したからなのか、髪は白く変色し、背も微妙に伸びている気がした。その後、幾つかの実験をしたところ、普通の人間と全く同じ行動ができることが判明した。
 しかし、彼の『記憶』のみはキャンパスを真っ白に塗りたくったかのようになくなっており、彼は自分の名前すら憶えていなかった。




【12月1日】

 『超高校級の記憶学者』と呼ばれる俺の同級生が、冥雅雪斗の記憶をでっち上げてコールドスリープ状態にすることが決まった。
 どうやら、『希望を根絶やしにする真の戦い』の最初の兵士として目覚めさせる予定らしい。
 目覚める時期は…………————が『◆ム■●イ▲ル』として覚醒した時だ。




【12月17日】

 蘇生が成功した、と『あの方』に伝えると、あの方は『来るべき時までに死体を1対でも多く集めろ』と命じてきた。きっと、あの戦いの一般兵として使うのだろうと予測できる。
 あぁ、なんて、絶望的なんだ………。











「…………え?」
「冥雅…」
「ねぇ…どういう…こと?オレは…『死んでた』?」
「嘘、だよね?!だってこれが本当だったら…冥雅くんは『わたし達のクラスメイトじゃなかった』ってことになるんだよ?!」


———書いていた内容。それは、『絶望での人体蘇生』というものだった。そこまでは良かった(良くないけど)。
…どうして…どうして…この本に『冥雅雪斗』の名前があるの?…どういう、こと?
当の本人の顔を見てみると———彼は、私が想像していた以上に青ざめ、震えていた。
そりゃそうだ、『これが本当』ならば、私達の目の前にいる『冥雅雪斗』は何者なんだ、って話になるのだから。


「………………」
「嘘だって!これもきっとモノクマのでっち上げなんだよ!」
「…星野。多分これは…本物だよ。このノートも、この実験が行われたことも」
「違う!!違うよ!!!神崎くんはこんなでたらめ信じるの?!」
「俺だって信じたくないよ!!!」


また、神崎くんが声を荒げる。星野くんを説得する彼の目には…見たことのない、涙が溢れていた。
当たり前だ。彼も、この真実を『信じたくない』。私達と一緒の考えなんだから。


「でも…後ろのモノクマの供述…。あれで…核心したんだ。この日記が『本物』だってことが…!!」
「記述…?」
「……これ……じゃないかな……」


背表紙に書かれた汚い文字を、秦野くんが指差す。
恐怖心を胸におぼえながらも、私はそれを一字一句ゆっくりと読み解いていく。
———そこには、私達の信じたくない、残酷な言葉が、書かれていた。




『冥雅クンはクラスメイトではありません。
 だから、彼が過去のことを覚えていないのも、何の不思議もないのです。
 だって…彼は、一度死を体験した【ゾンビ】なんだからさ。
 ぷひゃひゃひゃひゃ、笑えるよね!!!!これは最高傑作だよね!!!
 アーーーッハッハッハッハッハ!!!!』










「オレは…………死んでたんだね…………。神谷達と一緒…………じゃ、なかったんだね…………!!」
「冥雅、くん……」
「うあ、うああああああ、うあああああああああ…………!!!!!」









床に屈して泣き叫ぶ彼の姿を、諌めるものは誰もいなかった。いや、諌めることなど誰もできなかったのだ。
———彼を襲う『残酷な現実』に、誰もが…口を閉ざしていた。こんな現実、私だって…認めたくないわよ!!
私が心の中で叫んでも、誰も———答えてくれる人はいなかった。





真実を知った更衣室には、冥雅くんが泣き叫ぶ声だけが、ただただこだましていた。

chapter05 〜キオクのウタ〜 (非)日常編 ( No.204 )
日時: 2014/02/02 21:38
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 5Hbj4fpw)

———これは何かの間違い。今は、そう思いたかった。だけれど……本当だとしか信じられない事実を突き付けられ、彼の心は絶望に堕ちてしまった。
なんて言葉をかけてやればいいのだろう。なんて慰めてあげればいいのだろう。
私は冥雅くんに沢山助けてもらってるのに、私は何もできない。胸の中は既に後悔と無念で埋め尽くされていた。何もできない自分に……非常に腹が立った。


「…ねぇ、これがモノクマの出した『動機』じゃないのかしら?」
「え?」
「でももうモノクマは僕たちにはコロシアイはさせないって…!!」
「そう…思ったほうが気持ちが楽になると思って言ったんだけど…」


気休めにもならなかった。でも、今はこの『残酷な事実』を受けた今、全ての責任をモノクマに擦り付けることでしか、平常心を保っていられなかった。
このままだったら…私も…あいつと戦う勇気を、失ってしまいそうだったから。
しばらく力ない会話が続き、ついに冥雅くんがゆらりと更衣室の扉に手をつけた。


「ごめん…慰めて、くれたんだろ?でも…ごめん。今は…一人にさせてほしい」


冥雅くんは私達に向かって精一杯の作り笑顔を浮かべ、更衣室を後にした。
…でも、そんな彼の顔を見て…私は…何とも言えない気持ちを抑えきれなかった。だってそうじゃない。彼の目には大量の涙…。彼が一番辛いはずなのに、私達に気を遣って…。彼は、本当に心の優しい人だ。
更衣室にいても聞こえてくるすすり泣きの声にが小さくなりやがて聞こえなくなるまで、私達は無言を貫いていた。
———そして、しばらくした後。思い場の雰囲気を、『彼』はゆっくりと解いていく。


『冥雅君…ずっと泣いてたよねぇ?自分の正体を知って、ショックだったんだよねぇ?』
「…えぇ。でも…私は彼じゃない。だから…冥雅くんに何て言ったらいいかわからないの」
「わたしもそうだよ…。冥雅くんには沢山助けてもらったのに…。冥雅くんには何もしてあげられない。わたし、わたしが許せない!」
「でも…今俺達に出来ることなんてよォ…」
「とりあえず、今日は解散しようよ。各自…気持ちの整理をつけてから、また話し合いを続けよう」


星野くんの提案に全員賛成し、今日は解散することになった。でも———私はしばらく、その場を動けずにいた。
ふと、その場に一緒に残って作業をしていた秦野くんが話しかけてくる。


「……神谷……。……辛い……。……俺も辛いよ……」
「……。私、何をすればよかったのかしら…」
「……分かってたら……きっとこんな気持ちにはならない……」


沈黙が続く。


『え、えっとぉ…。僕も冥雅君じゃないから彼の思うことは分からないけどぉ…。こんな時だからこそ、話し合うのが大事なんじゃないのかなぁ』


暗い顔をしている私達に気付いたのか、アルターエゴが心配そうに話しかけてくれる。
…分かってる。それは分かってるんだけど…。


『話しかけられないのは僕も分かるよ。だけど…このままじゃ駄目だよぉ!』
「……え?」
『冥雅君の正体が何だって、神谷さん達と一緒にここまで頑張ってきたのは【冥雅雪斗】君でしょ?みんなが知ってる、冥雅君でしょ?
 冥雅君の正体が絶望の実験台だったからって、みんなは冥雅君を見離すのぉ?』
「そんなことないわよ!」


思わず、アルターエゴに叫んでしまう。アルターエゴは私の声に反応してビクッと身体をうならせ涙目の表情になった。


『ぼ、僕がそんなこと言う資格無いの分かってるよぉ?だけど…冥雅君は冥雅君、なんだよ。
 だから…僕だったら冥雅君に会いに行くよぉ』


涙で声が出なくなりつつも、彼女ははっきりとそう言った。
———冥雅くんは冥雅くん。正体が何であれ、『私達の仲間』。一緒にここを出て、未来を共に歩んでいく仲間なのだ。


「……冥雅は仲間……。……当たり前……だよ……」
「冥雅くんがクラスメイトでなくたって、今は私達と一緒に頑張ってる『仲間』なのよね。彼がいなくなっていいわけがない」
「……伝えてきて……俺らの分まで……。……今じゃ、なくてもいい……。……神谷の気持ちが落ち着いたら、でいいから……」
『ぼ、僕の気持ちも伝えてよぉ!』
「…分かったわ」


———そう言って彼らを再び見る私の目は…もう暗い影など、落ちていなかった。
その後、しばらく秦野くんやアルターエゴと談笑をして、改めて『仲間』の大切さを教えてもらった気がする。
———そういえば、アルターエゴ、私が喋っていた言葉を認識していたみたいだけど…。どうやら、彼パーツショップから発見してきた部品を応用してアルターエゴに『音声認識機能』を追加したみたいなの。……人間離れしてるわ…。


そして、その夜。


「さて、と。そろそろ寝ましょうか…」


もうすぐ夜10時。明日も早いだろうし、早く寝ようとベッドに入ろうとした、その時だった。









——————ガサゴソ——————







「な、何…?」


扉のほうで何かガサゴソ音がした。気になって扉を開けてみたんだけど…誰もいない。しかし、扉の前に、DVDとDVDプレイヤーが置かれてあった。
あの、立花さんの事件の動機となったDVDプレイヤーと同じもののようだ。しかし———DVDには名前が書いていない。しかも、最初に流したのとは色も違う。


「何かしら…」


こんな時間に何かを仕掛けてくるなんて十中八九モノクマしかいない。恐らく、私達を惑わすための罠に決まってるわ。
———見ないほうが良かったんじゃないか、とは思った。だけど……わざわざここに置いて行った、ってことは……『私達に関わる重要な情報』だという可能性が大いにある。
そう確信した私は素早くそれを部屋内に持っていき、恐る恐るDVDをプレイヤーに入れる。そして、再生ボタンを静かに押した。






—————その後、すぐに後悔する羽目になるのは知らなかったんだけど…。