二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter05 〜キオクのウタ〜 (非)日常編 ( No.211 )
- 日時: 2014/02/03 20:43
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: UVjUraNP)
聞きなれたノイズがしばらく続いた後、少しの砂嵐とともに、映像は開始された。
そこは———私が夢で見た、見覚えのある『あの場所』だった。
そこでは、今と全く同じ服装をしている私、それから紫のストールを巻いた男性(恐らく田中くんなのだろう)、それと初めて見る白い学ランが特徴的な青年、執事服の男性が写っていた。
「これは…夢の続き、の映像なのかしら…」
思わず映像に見とれていると、映像の中の人物が会話を始めた。
『眼蛇夢…』
『田中くん!正気を取り戻したまえ!』
会話から、白学ランの青年と執事服の男性も、私と知り合いだということが分かった。ということは、ここにいる人は全員『希望ヶ峰学園』の生徒だということになる。とりあえず、私は覚えている限りのデータベースの中身と映像の人物の条件を当てはめてみる。
執事服の方は分からなかったが、白学ランの方には明らかに一致する項目があった。彼は———『石丸清多夏』。『超高校級の風紀委員』として学園に入学してきたはずの人、だったはず。
『正気、だと…?フフ、フフフ、フハハハハハハハ!!!!!
実に滑稽で低俗な物言いだな!!俺様は真の俺様に生まれ変わっただけだ。何が正気だ。正気だというのならこちらが正気、なのではないのか?!』
『おかしいぞ!!動物を…動物をあんなに大切にしていた君が、大事な存在を使って人を殺すなど…僕には到底信じられない!!今の君は狂っている…!!』
映像の限りだと、田中くんと石丸くん、それから執事服の人は敵対しているようだ。…説得の仕方からして、田中くんが豹変してしまう前、石丸くんと田中くんは物凄く仲が良かったのね…。
『私…やっぱり信じたくない。今の眼蛇夢が本当の眼蛇夢なの?
ううん…そんなの違う。眼蛇夢は……優しい人。私達を再会させてくれた、優しい人なのよ!!』
『そうだ。俺達双子を守ってくれた…優しい奴じゃないか!!』
『…………』
執事服の人が田中くんに向かってそう言う。…ちょっと待って。今なんて言ったの?『双子』……?
この映像が本当なら…私と映像の彼は、双子ってことになるの?確かに、髪の色や目の色、顔つきなんかは似ているけれど…。私に双子が、いたの?だったら…希望ヶ峰学園だけの記憶を奪われている私が、『忘れている』はずがない。だって…産まれた時から一緒だった、『双子』なんだから。———ううん、そんなはずないわ。私と彼は別人。そう———思っておくことにしましょう。
頭の中で会話を整理している間にも、映像は止まるところを知らずに進み……そして、変わった。
次に目に入ってきたのは——————
私と石丸くんが血まみれで倒れているシーン。田中くんは何やら涙を流しながら何とも言えない表情になってナイフを持っている。その近くには黒いロングヘアーの男性。そして…彼に向って怒声を浴びせている執事服の人と、リーゼントの髪が特徴的な黒い学ランの男性が写っていた。彼はバイクに乗っている。
『お前……!!どうして春子と石丸先輩を!!!』
『ツマラナイ…実にツマラナイやり取りでしたよ。田中クンも脆い。そしてツマラナイ…。少し刺激を与えてあげればすぐにこうですから』
『お前——————!!!!』
『今の俺達の実力じゃこいつらには叶わねぇ!!……スミレのほうも駄目だった、兄弟達を連れて逃げんぞ!!』
『でも!!!』
『今のそいつに俺達を刺す気力は感じねぇ!!逃げるチャンスは今しかねぇんだよ!!!早く乗れ、白取!!!』
『……分かった』
そして、傷ついた私と石丸くんを素早く乗せて、バイクは逃げ去った。…映像は、不意にそこで途切れる。最後に残ったのは…………うぷぷぷぷ、と奇妙な笑い声を続ける、モノクマの声だけだった。
「な……に……これ……」
目の前の私。血まみれの私。助かったかどうかなんて分からない。学ランの男性が『スミレ』やら『白取』やら言っていたけど、今はそんなことを考えられる状況じゃなかった。
あの映像が本物じゃないというのなら、まだ話は分かる。だけど、冥雅くんの正体がわかってしまってた今、『否定』という考えに私が至る経緯は、どこにもなかった。………私も?………私もなの?
まさか——————まさかまさかまさか——————
「私も、冥雅くんと……同じなの……?」
ううん、それは違う。私には彼と決定的に違うことがある。
『希望ヶ峰学園』の記憶がなくなった違和感があるということ。
それが、私が冥雅くんとは違う存在だということを認識する唯一の柱だった。
———でも、どうしてだろう。とてつもない不安が、憎悪が、悪寒が、私の全身を駆け巡る。もうどうにでもなってしまえ、というように、圧倒的な絶望感が五感を奪っていく。
「寝ましょう。そして…明日、モノクマに問いただしましょう」
私は無理やりベッドへと潜り込み、掛け布団を無理やり全身に被り思考をシャットダウンした。
———そうでもしないと、もう冷静な判断が、出来そうになかったから…。
『うぷぷぷ、真実ってさ……残酷だよね。ありもしない考えに、オマエラは勝手に導かれるんだから……』
私が深い眠りに落ちた後、モノクマは部屋の前でそう、呟いたらしい…。