二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter05 〜キオクのウタ〜 (非)日常編 ( No.213 )
- 日時: 2014/02/04 18:25
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: lqhOUyMm)
【コロシアイ職業体験 20日目】
『希望ヶ峰学園職業体験実行委員会がお知らせします。オマエラ、おはようございます。朝です。朝ですよー!今日もはりきっていきましょー!』
「朝…か…。結局そのまま寝ちゃってたな…」
私が目を覚ますと、カーテン越しに窓からの光が視界を襲う。そう、あの恐怖の夜を越えたのだ。
…とは言っても、あの映像を忘れられた、というわけではない。しかし、無理やり寝たおかげか多少は冷静な判断が出来るようになっていた。…あの時、思考をシャットダウンして正解だったのかもしれない。
…とりあえず、朝食会に参加しないとね。冥雅くんの様子も見たいし…。
相変わらず残った頭の中のしこりを抱えながら、支度を整え食堂へと向かった。
「おはよう。神谷」
「よゥ。おはようさん」
「おはよう神崎くん、羽柴くん。今は2人だけなの?」
「あぁ。そうみたいなんだ。冥雅については…部屋に行ったんだけど、今日の朝食会はパスだって。やっぱり昨日の今日じゃ整理つかないよな…」
「仕方ねェさ。もしかしたら…俺達みんな揃ッてそうなのかもしれねェしな」
「…どういうことだ?」
「みんな来てからの方がいいんじゃねェか?」
「そ…そうね」
羽柴くん、今変なこと言わなかったかしら。『俺達みんな揃って』…。どういう、ことなのかしら?
彼の言葉の意味を考えながら食堂で待っていると、残りの生き残りメンバーも続々起きてきた。今回は珍しく、秦野くんも食堂に顔を出していた。
…何か、みんな浮かない顔をしているのは気のせいだろうか。
「おはよう、みんな」
「…おはよう…」
「ど、どうしたの?」
「…ううん、なんでもない」
試しに安西さんに尋ねてみるが、元気のない声でそう、返ってくるだけだった。そういえば…ポーカーフェイスで隠してはいるけれど、神崎くんと羽柴くんも、どことなく覇気のない顔をしている。
…うーん、昨晩何かあったのかしら…。ま、まさか、ね…。
「…ご飯、食べよっか」 そう言う星野くんの提案で、いつもとは少し違う朝食会が始まるのだった。
その途中で、ふと白戸さんがこう呟く。
「私の思い込みだったらいいんだけど…。みんな、昨日変なDVD渡されなかった?」
「…まさか、白戸さんも?!」
「みんなも?!実は、わたしもなんだけど…」
「え……?」
白戸さんの言葉を皮切りに、一同が自分も、と賛同を始めた。…ど、どういうこと…?
あまりのことに頭が混乱している。すると、神崎くんが何かを悟ったようにこう言い始めた。
「内容、覚えてるか?」
「……内容が酷すぎたから……忘れられるはずがない……」
「あれも、モノクマの嘘なのかなぁ…」
「いや、嘘だったら…。冥雅くんのノートを見た直後に用意するはずないわよ。恐らく…本物だわ」
「そう…だよね…」
「1人ずつ、話してみない?…いや辛いとは思うが…。そこから、何か見えてくるんじゃないかな」
「『見える』…?」
「あぁ。一人だけならともかく、全員に同じことが起こるなんておかしいだろ?だから、情報を共有して何かモノクマの意図を考えるんだよ」
「…分かった。それじゃ、私から話すわね」
———私はゆっくりと、深く深呼吸をする。そして……昨日の夜に見たDVDの内容を、はっきりと口に出した。
…『白い学ランの青年と、執事服の男性。それから、紫色のストールの青年が出てきて、私と白い学ランの青年を刺した』と…。
話し終えて周りを見てみると、神崎くんは何かを真剣に考えている様子だった。何やら、思い当たることがあるらしい。
……そして、仲間は次々と自分の見たDVDの内容を話していくのだった。
『アイドルのように可愛い顔をした女子高生と自分が、お姫様のような雰囲気の女の人に襲われて血まみれになった』 と、白戸さん。
『厨房に包丁ではりつけにされた自分が、ぽっちゃりした料理人に人間を調理している光景を見せつけられた』 と、安西さん。
『どこかのサーバールームで、アルターエゴの作成者と一緒に、自分は黄色い繋ぎを着た派手めの男性に襲われた』 と、秦野くん。
『会議室のような場所で、自分が着物を着た女の人に首を絞められ吊るされていた』 と、星野くん。
『冷凍庫のような部屋で、大量の死体と一緒に閉じ込められていた』 と、羽柴くん。
『大量の死体の上で、エプロン姿の少女に首を掴まれている血まみれの自分がいた』 と、神崎くん。
———どれも、聞いていて恐ろしいものばかりだった。
みんな…私と同じような映像を見せられていたのだ。自分が危険な目に合う、恐ろしい映像を。
- chapter05 〜キオクのウタ〜 (非)日常編 ( No.214 )
- 日時: 2014/02/04 18:27
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: lqhOUyMm)
そんな中、みんなの話を聞いて何かを考えていた神崎くんがこう切り出す。
「そっか…。その映像…共通点があるな」
「どういうこと?」
「ほら、映像の中の俺達はみんな『誰かに』襲われて、『自分が瀕死』になっていたんだろ?」
「そういえばそうだ!でも…どうしてそんなことが…?」
「……多分……この映像の出来事は……全部近い時期に行われてる……そう思う……」
「それによォ…。映像に映っていた奴ら、みーんなデータベースに載っていた奴らばかりだったぜェ?あれは…えっと、恐らく『77期生』のメンツだッたな」
———みんなの意見を合わせると…。みんなが見た映像の中には、『瀕死の状態の私達』、それから『自分達を襲っている77期生』が映っていた。秦野くんの言うとおり、一連の出来事は『ほぼ同じ時期』に起こったことと考えていいだろう。
…でも、あれが本当だったら…。今いる私達は何者なのかしら。どうやらみんなも同じことを思っていたらしい。
「ねぇ、じゃあ今の僕達何なんだろう。怪我もないし、ピンピンしてるよね…」
「…まさか…私たちも冥雅くんと一緒で…あの映像で死んで、絶望で生き返ったのかなぁ…」
「そう…かもしれない…。そうじゃなきゃ…記憶の説明もつかないし…」
…自分も『絶望』で生き返った存在。冥雅くんと同じような存在なのかもしれない。それしかなかった。私達が行き着く答えは……、そこしかなかったのだ。
———しかし、偶然にも現れた『執事』は、それを否定しにかかる。
「違います」
「モニャン!話聞いてたの…?」
「はい。貴方様がたは…絶対に、絶望で生き返るなどという恐ろしい実験には参加されていません。
…大丈夫、本人様です。貴方様がたは貴方様がたです」
「で、でも…」
「確証はどこにもありません。しかし…気付いているはずです。貴方様がたと、冥雅様との『決定的な違い』を…。それを、信じてください」
「『決定的な違い』…」
確証はない。だけれど、彼の目は真剣そのものだった。嘘など———ついて、いなかった。
私達と冥雅くんとの決定的な違い———『学園生活の空いた記憶に、違和感があるかないか』という違い、か…。
でも、私もそう思っていた。自分達が絶望にかかっていたのなら、その記憶さえもまっさらになっているはずなのだ。
そして……『彼』は、私達にこう言ってのけるのだった。
『大丈夫です。神谷様達は…必ずや、私が救い出してみせます』
———そう言った一瞬の出来事だった。私には…モニャンがいつも通りの猫の姿には見えなかった。
私と同じ、髪をした…執事服の男性……そんな風に見えたのだった。