二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ダンガンロンパF 第1章 〜希望の知識と絶望の運命〜 ( No.215 )
- 日時: 2014/02/05 21:13
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: VbOSBaFR)
モニャンによって勇気づけられた(のかは知らないけど)後、私達は自由行動をすることになった。DVDの件の考えを整理したい人、気分を落ち着かせたくて散歩に行った人…。本当に、要件は様々だった。
それで、私はというと…。
「冥雅くん…」
———冥雅くんの部屋の前に立っていた。
アルターエゴに言われた通り、1回冥雅くんと話し合っておこうと決めたのだ。DVDのことも言わなければならないし、それに……。彼に笑顔を取り戻させたい。その気持ちが、私の身体をここまで突き動かしたのだった。
でも…こうして来てみると、いわれのない緊張感が襲う。———今さら何を怖がっているのよ。
意を決してインターホンを押すと、しばらくの沈黙の後『彼』は出てきた。
真実を知った時と変わらない、青白い表情で。
「神谷…」
「一人になりたいって言ってたのにごめんなさい。入っても、いいかしら?」
「で…でも…」
「冥雅くんと話がしたいの。お願い、部屋に入れてもらえないかしら」
私は彼を怖がらせないように、不安な気持ちを胸に抑えて表情を変えるのを最大限防いだ。
———少しの間の後、冥雅くんは俯きながらも私を部屋の中に入れてくれた。
部屋の中は———食堂や花屋から持ってきたのだろう、ハーブティーの茶葉であふれていた。
「冥雅くんらしいわね、ハーブティーに囲まれているなんて」
「閉じ込められてたとはいえ…ハーブティーは美味しいからね…」
「ふふ、そうね」
彼に隠して持ってきたティーポットを見せて、「お茶、入れましょうか」と言ってみる。すると、彼は少し顔を和らげて、黙って頷いた。
私は何も言わず、ただ黙って自分と彼の分のハーブティーを注ぐ。お茶が注がれる度に、香ばしい香りがテーブルの周りを包んだ。
そして、お茶を飲みながら黙って過ごしていると、ふと冥雅くんが口を開く。
「オレ……クラスメイトじゃ…なかったんだね。クラスメイトどころか希望ヶ峰の人間でもなくて…ただのゾンビ、だったんだね…」
「…………」
「ねぇ?オレ、分からないよ。自分のことが何もかも。豊島の事件が起こる前、モノクマがオレ達に『オマエラには1年間失った記憶がある』って言ったことがあったよな?」
「えぇ。言っていたわね」
「…その時から…よく分からないんだけど…。変な感触がオレの頭の中に入ってきてさ…。『お前はクラスメイトじゃない』って、囁くんだ。
違うって否定したさ。だけど…本当だって知った時、もうどうしたらいいか分からなかった。だって…違うってずっと言い続けてきたものが、『本当』だったんだもんな…!
それに…しかも…オレの正体が…ゾンビ…だったなんて…!!」
話しながら、冥雅くんは涙を浮かべていた。…そうか、あの時から…。彼は、ずっと悩まされていたのだ。『自分は私達とは違うのではないか』って。
その涙が、彼の本当の『恐怖』を、映し出している気がした。
「オレ…いないほうがいいのかな…」
「……え……?」
「一回死んで…希望ヶ峰の実験なんかで生き返って…。そんなオレは…みんなといる資格なんかないよ…!!」
「違う!!そんなこと……」
「ないわけないよ!!!」
初めて聞いた、彼の心からの叫び。目を見開き、私の胸倉を掴んで、彼は必死に叫んでいた。
「オレだって死にたくない!!!だけど…!!!オレはみんなとは違う!!!違うんだよ!!!だから…一緒にいる権利なんて…あるはずがないんだ!!!」
「そんなことないわよ!!!」
「だから……!!!オレはここで死ぬべきうんめ………」
パチンッ!!!!!
自分でも分からなかった。無意識の中で、私は冥雅くんの頬を平手打ちしていた。そして、自分が目に涙を浮かべていたことに気付く。
彼はそれに気付いて、私の服を離す。
———死ぬって、言っちゃダメ。ダメ、なんだから…………。
「…神谷…」
「冥雅くんの正体がなんであれ、冥雅くんは冥雅くんよ。たとえ私達の記憶にキミがいなくても…今こうして一緒に過ごしている冥雅くんは、れっきとした『私のクラスメイト』。そうでしょ…?」
「う…うう…いいのか…?オレは…みんなと一緒にここを出て…いい…のか…?」
「当たり前じゃない。キミは確かに一回死んでしまった。だけど、今ここにこうして立っているじゃない。こうして、私に本音を話してくれたじゃない。
一緒に、出ていきましょ。こんな、ふざけた街から…」
そう言って、私は精一杯の笑顔で彼に手を差し伸べる。当たり前じゃない、彼もれっきとした『クラスメイトの一員』なんだから。
そう思って手を差し伸べると……、彼は、今まで抑えていた涙を流し、自分がそこにいるを確かめるかのように……大きな声で泣いたのだった。
- chapter05 〜キオクのウタ〜 (非)日常編 ( No.216 )
- 日時: 2014/02/05 21:30
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: VbOSBaFR)
……しばらくして。彼は落ち着きを取り戻し、声もいつもの調子に戻る。
よかった。これで…もう大丈夫ね。そう思って私はほっと胸を撫で下ろす。
———そう、思ったのが間違いだったのかもしれない。
急に視界が暗くなり、耳の近くで『彼』の優しい声が響いてきた。
——————ぎゅ
「……めめめめめ冥雅くん?!こ、これは何」
「…ありがとう。オレ、頑張るから。もう…『死ぬ』なんて言わないから」
「近い近い近い近い近い!!」
「……神谷。オレ……お前のことが好きだ」
———一瞬、思考が真っ白になる。そして、戻ってきた記憶に混乱を深める。
彼は何を言ったの?わ、私に『好き』って言ったの?……え?これは?ま、まさか?
……こく、はく……?!
頭から煙が上っていたようで、冥雅くんは慌てて私から離れる。
「あ、あのさ…。今じゃないと伝えられないと思って…。こ、困らせたならごめん!」
「急に言われたからびっくりしたわよ…。あ、もしかして…冥雅くん、私のこと驚かそうとしたの?」
「オレは本気だよっ!!神谷にこうやって伝えるのも…勇気がいることだったし…。でも、結局は出来事の力借りちゃったし…」
「本気…なのね…」
冥雅くんは顔が赤くなり、目をそらしつつそう答える。
———その一瞬が、かっこよく見えたのは気のせいだろうか。
……いや、気のせいではない。…そっか、私も彼に『惚れていた』んだ…。
コロシアイ職業体験の場でなければ、最高の告白のタイミング。でも、そのコロシアイでなければ、言われることもなかったであろう言葉———。
自分でも彼を思う気持ちに気付き、思わず手を胸にあてる。
「…振られることは前提だから…さ、気持ちだけでも伝えたくて…」
「今分かったの。私も…キミに惚れていた、ってことがね。記憶がなくても一生懸命なキミに惹かれてたんだって。
こんなふざけた街から出たら…お付き合い、してもいいわよ?」
「…本当?!」
赤くなりながらも返答を求める彼に、私も笑顔で頷いて返す。冥雅くんは緊張の糸が解れたように、やった、やったと繰り返していた。
———あぁー、顔が熱い。きっと…これが『恋』なんだわ。
そう思った途端、彼を無性に抱きしめたくなった。
そして。
「…か、神谷?!」
びっくりする冥雅くんの胸の中で。彼に気づかれないような小さな声で。
私は確かに、自分の気持ちを伝えたのだった。
『———大好きだよ、雪斗くん。』