二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter05 〜キオクのウタ〜 非日常編 ( No.219 )
- 日時: 2014/02/08 18:32
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: .KyU0SCB)
「神谷!!神谷!!」
———冥雅くんの声で、私は現実の世界に引き戻される。
目の前で人が死んでいる。モノクマも「もうコロシアイは起こさない」と言っていた。なのに、なぜ?
目の前で倒れている羽柴くんは、まるで壊れた人形のように動かない。彼が瞳を開くことももうない。
———捜査、しなくては。死体アナウンスが流れたということは…羽柴くんを殺してしまった犯人は、私達の中にいる。
「大丈夫、もう大丈夫よ。捜査を始めましょう」
「あ、あの…そのことなんだけどさ。神谷の手帳、オレに貸してくれないかな。調査が終わったら返すからさ」
「ん?どうして?」
「羽柴が殺されちゃって、検死出来る人いなくなっちゃったじゃん?だから…『超高校級の知識』である神谷の記憶にかけようと思うんだ。検死の方法なら少しは分かるんじゃないの?」
「ま、まぁ分かるけれど…。実用的なレベルじゃないけど、いいの?」
「情報を得られるならなんでもいいよ。だから、今回は代わりにオレが神谷のやることを全部やる。こう見えてもオレ、体力には自信あるからさ!多分出来るよ!」
「体力とは関係ないと思うけれど…。いいわ。はい」
私は冥雅くんのお願いを承諾し、いつも学級裁判で使っている手帳を彼に渡した。
———そう。今回の私の役目は、『羽柴くんの死体を調べ、情報を得ること』。なら……やってやろうじゃないの!
話し合いの結果、今回の見張りは私と白戸さんに決定した。
いつものように登場したモノクマからファイルを貰い、捜査を始める…のだけれど、どことなく今回のモノクマ、上機嫌だったような…。まぁ、いいわ。
〜冥雅 side〜
〜ホテル 内 食堂 羽柴ノ死体 前〜
「えーと、まずはモノクマファイルから…だよね」
「そうね」
よーし、まずはモノクマファイルを見てみよう。
……あれ?今回なんかすごくまとめ方が大雑把な気がする…。
被害者:「超高校級の科学部」羽柴陸斗
死因:不明
死亡時刻:不明
死体発見場所:イチノマチ内ホテル「食堂」内
備考:ロープで身体を縛られている。
「情報抜けが多いなぁ…。モノクマのやつ何を企んでんだよ」
「…もしかしたら、今回モノクマが事件に関わっているのかも。一応、手帳に書き込んでおいてもらえないかしら」
『モノクマファイル5』いつもより情報が少ない。モノクマが今回の事件に関わっている可能性がある。
羽柴の死体は神谷が調べてくれてるし、先に厨房について調べておこうかな。
ブレーカーが落ちた原因も調べておきたいし…。秦野がアナウンスの後にすぐに駆けつけて、ブレーカーを調べてくれてるはずだから、話を聞きに行こう。
オレはそのことを神谷に伝えて、厨房へと足を踏み入れた。
焦げ臭い匂いはもう残っていないが、真っ黒に燃え尽きたモニャンの死骸が、現実の残酷さを物語っている。
…とりあえず、先にモニャンを調べておこうかな。とはいっても、真っ黒でなにも分からないんだけど…。
考え込んでいると、ブレーカーを調べていた秦野がオレに話しかけてきた。
「……モニャン……中に自爆装置……つけられていたみたい……」
「自爆装置?!」
「……モノクマに……つけられたんだと思う……。……凄く……小さかったから……、本人でも……気づかなかった……」
「あの警戒心丸出しのモニャンが、自爆装置をつけられるスキなんてあったのかな?」
「……違う……。……多分……、元々入ってた……」
「元々、か…」
『自爆装置』モニャンにつけられていたもの。彼が爆発した理由はこの自爆装置によるもの、らしい。
……でも、おかしいな。最初に村上を殺したモノクマは、動かなくなった後にすぐ別のが出てきた。でも、モニャンはそうじゃない。同じぬいぐるみじゃないってことなのかな…。
『スペアの存在』モニャンにはスペアがない可能性がある。
あ、そうだ。秦野に一応アリバイと、ブレーカーについて調べなくちゃ。そう思って彼のもとへ歩き出した…んだけど…。
…足元がなんか冷たいような…。
「み、水たまり?!」
オレが違和感を感じて下を見てみると、床に水たまりが出来ていた。モニャンが水でもひっくり返したのかな…。いや、でもあのモニャンがそんなドジをするはずないよ。これも事件に関係しているのかも…。
『水たまり』不自然にたまった水たまり。
「……俺を……疑ってるんだろ……?」
「あ、いや、そういうわけじゃなくて…」
「……仕方ない……ブレーカーを調べられるのは俺だけだし……いじれるのも俺だけ……。……疑われるのも無理ない……」
「あははは…。一応、アリバイを聞かせてもらえるかな」
「……昨日はいつも通り……アルターエゴの強化をしてたんだ……。……途中でモノクマが来て……神谷と冥雅のことを愚痴って行っちゃったけど……、就寝のために部屋に戻った以外は……更衣室以外の場所には行ってない……」
「じゃあ、アルターエゴが今回も証人になってくれるんだね」
「……うん……」
『秦野の証言』昨日、秦野はずっと更衣室にいた。途中でモノクマが来たが、愚痴をこぼして去って行った。
眠るために自室に戻った以外は別の場所に行っていない。
「……それと……ブレーカーのことなんだけど……」
「あ、そうだった、それもだったよ!で、どうだった?」
「……いじらされた形跡がないんだ……。……食堂には電気の消費が高いものは置いてあった……けど、電源は入ってなかったし……。
……多分、誰も……いじってない……」
「じゃあ…停電は事件に関係ないのかな…」
「……分からない……ごめん……」
「あ、いやいや!調べてくれてありがとう、秦野!」
「……うん……」
『ブレーカーと停電』秦野曰く、ブレーカーをいじった者は誰もいないらしい。それと、電気の消費が高いものは何も使われていなかった。
「……俺が出来るのはここまで……。……捜査、頑張ろう……」
「うん。秦野も頑張ってね!」
「……リア充……爆発……」
「え?」
厨房から去っていく秦野が何やら変なこと口走ってたけど…何だろう?ま、まぁいいや。
……そろそろ神谷の検死も終わった頃だろうし、戻ってみようかな。
そう思って、オレは厨房を後にした。
- chapter05 〜キオクのウタ〜 非日常編 ( No.220 )
- 日時: 2014/02/09 13:18
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: dzOOPrh1)
〜ホテル 内 食堂 羽柴ノ死体 前〜
食堂に戻ってみると、神谷がテーブルに座って、どこからか持ってきた紙に情報をまとめていた。恐らく、羽柴の検死結果をまとめているんだろう。
……マメだなぁ。そう思いながら、オレは神谷に話しかけた。
「神谷、検死終わった?」
「えぇ、なんとか。羽柴くんみたいに正確には出来ないところが多かったから、こうして紙に書いてまとめてたのよ」
「オレが手帳取っちゃったからだね…ごめん…」
「ううん、多分私一人だったらここまで情報を引き出せなかった。協力してくれて感謝するわ。それじゃあ…検死結果をざっと言うわね」
そう言って、神谷はペンを走らせるのを止め、オレに向きなおって検死の結果を教えてくれた。
「…まず、不自然なんだけど…羽柴くんの死体、微妙に温かかったのよ。多分…死んでから時間が立ってないんじゃないかしら」
「じゃあ、羽柴が殺された時間帯は…」
「恐らく『私達が死体を発見した前後』だと、思うわ…」
『神谷の検死結果1』死体が微妙に温かかった。恐らく死んでから時間がたっていないものと思われる。
「次に、羽柴くんの後頭部に『何かで殴られた跡』があったわ。食堂には鈍器になりそうなものは沢山あるけど、殴った形跡はどこにもなさそうなの。…後で、彼の自室も調べたほうがよさそうね」
「犯人はなんで羽柴を殴ったんだろう…」
『神谷の検死結果2』羽柴の後頭部に何かで殴られた跡があった。
「次が最後よ。羽柴くんの死体が、『濡れていた』わ」
「濡れていた?!」
「えぇ。調べようと思って服を触ってみたんだけど、ものの見事に濡れていたわ。…恐らく、犯人に濡らされたのでしょう…」
「……それじゃあ、あの水たまりももしかして…」
「厨房に水たまりがあったの?」
「うん。水道の真下の床だけに、不自然にね。もしかしたら、犯人はそこで羽柴を濡らしたのかなぁ…」
「厨房の床は吸水性がなかったはず。恐らくそれで間違いなさそうね」
『神谷の検死結果3』羽柴の死体が濡れていた。
【コトダマアップデート!】
『水たまり』不自然にたまった水たまり。恐らく、犯人は厨房で羽柴を濡らしたのだろう。
「…検死はこんなところかしらね」
「凄いね、神谷。羽柴と同じくらい正確にわかってた気がするよ」
「それ、褒めてるの?」
「うん、もちろん!」
…もちろん、褒めてるよ?だって、オレには出来ないことなんだもん。神谷がいるだけで、オレは頑張っていける。今はそんな気がした。……今は、そう思っておいたほうがいいかな。
神谷の検死も終わったことだし、手帳は神谷に返しておこう。…汚い字だからちゃんと読めるかは心配だけど…。心配を胸に隠し、オレは神谷に手帳を返した。
−−−−−−−−−−−−−
———冥雅くんが分かりやすく書いてくれていたおかげで、厨房で何があったのかが分かった。
なるほど、ブレーカーは秦野くん以外にいじることは出来ない、そして彼はずっと更衣室にいたから犯行は無理、と。アルターエゴが証人ならこれは本当でしょうね。
…そういえば、羽柴くんはどうしてロープに縛られていたのかしら。どうも、今回の犯人の意図が読めないわ…。
そう思って、私はまじまじと羽柴くんに巻いてあるロープを見る。
……しばらく見ていると、ある『異変』に気が付いた。
「…あら?ロープの切れ端が…焦げている?」
「あ、ほんとだ。でもおかしいな…羽柴はオレ達が食堂に来たときにはいなかった。それで、厨房でモニャンが爆発して、それを見に行った後に羽柴の死体が現れた。羽柴の死体はいつ現れたんだろう?」
「私達が厨房にいる間に死体が置かれた、って可能性が高いけど…」
「それなら、羽柴の死体の血はどう説明するのさ?死体の血まで一緒に持ってくることは出来ないでしょ?」
「……うーん……」
考えれば考えるほど訳が分からなくなってきた。
ま、まぁとりあえず分かったことを手帳に記入しておきましょう。
『焦げたロープ』羽柴を縛っていたロープ。切れ端が焦げている。
『死体の出現時間』羽柴の死体は、神谷達が厨房に様子を見に行っている間に用意された?
———ここで調べられることは、ここまでかしら。
後は…羽柴くんの部屋に行って、とりあえず他のみんなにもアリバイを聞いておかなくちゃ。
——————本当に、誰がこんな酷いことを…。
- chapter05 〜キオクのウタ〜 非日常編 ( No.221 )
- 日時: 2014/02/09 16:26
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: dzOOPrh1)
〜ホテル 内 羽柴ノ部屋〜
「と、言うわけで羽柴の部屋までやって来たけど…」
「何か手がかりがあるかもしれない。立花さんの事件も、シオンくんの事件も、被害者の部屋に行ったから真実が見えたの。だから…今回も、そうなんじゃないかな」
「うん…それじゃ…行ってみよう」
意を決し、羽柴くんの部屋のドアを開ける。
羽柴くんの部屋の中は大量の薬学品と薬品で溢れかえっていた。…まぁ、『超高校級の科学部』なんだから当たり前なんだろうとは思うけど。
……部屋の中を調べていると、何やらベッドの近くに血痕を発見した。
「これ…血痕?」
「待ってよ!これにも血痕ついてる!」
冥雅くんはそう言って私に目覚まし時計を見せてきた。……あら?これは……。よく見てみると、目覚まし時計の隅っこにも血痕が残っていた。
「それじゃあ…羽柴くんは部屋で襲われたのかしら」
「うん。恐らく、この目覚まし時計で羽柴を殴ったんだろうね」
「羽柴くんはここで殺されたのかしら…。でも…死因が分かってないから、まだ決め打ちをするのは早いわね…」
「新しい発見が見つかる度に謎が複雑になっている気がするよ…」
『羽柴の部屋の状況』ベッドの近くの床に血痕があった。恐らく、羽柴は部屋で襲われた。
【コトダマアップデート!】
『神谷の検死結果2』羽柴の後頭部に何かで殴られた跡があった。羽柴の部屋にあった目覚まし時計で襲われた可能性が高い。
「…とりあえず、見つけられたのはこれくらいね」
「それじゃあ、みんなに話を聞いてみようよ。でも…残りの時間はあまりなさそうだから、男子はオレ、女子は神谷で手分けして話をしよう!
えっと…集合場所はロビーでいい?」
「えぇ。いいわよ」
私が頷くと、冥雅くんはこちらに笑顔を向けた後、聞き込みを開始しに向こうへ走って行った。
よーし、私もアリバイを聞きに出発しましょう。
—————そして、数分後。
聞き込み調査を終えた私は、冥雅くんと合流するためにロビーへと向かった。
ロビーへと着くと、そこには冥雅くんと神崎くんがいた。
どうやら、ちょうど神崎くんにアリバイを聞いていたらしい。
「よっ、神谷」
「また…殺人が起こってしまったわね…」
「あぁ…。モノクマの奴、何考えてんだか」
「でも、目の前の事件に立ち向かっていかなきゃ…羽柴を殺した犯人だけが生き残っちゃう…。本当は誰も犠牲にしたくないけど…」
「ま、そうだな。こんなこと…許しちゃいけないんだ」
「………?」
……なんだろう、神崎くんの表情が一瞬おかしく見えたような気が…。ううん、気のせいよね。ま、まさか神崎くんが今回のクロ…?ううん、そんなはずはない。今までだってずっと捜査に協力してくれたし、事件を解決に導いてくれた。
そんな彼が…殺人を犯すはずなんてないのよ。
「どうした?」
「う、ううん。ちょっと考え込んでいただけよ。アリバイを教えてもらえないかしら?」
「うん、分かった」
冥雅くんの情報と私の情報を合わせて、アリバイ帳を作成する。…そういえば、アリバイ帳を作成するのは2回目ね。
……1回目の時より、人数が減ってしまったけど。それでも、あきらめるわけにはいかない。
<事件前日(夜)のアリバイ>
神谷:冥雅と一緒に行動していた。
冥雅:神谷と一緒に行動していた。
神崎:ロビーでモノクマと話していた。
白戸:自室で安西と話をしていた。
秦野:更衣室でアルターエゴの強化をしていた。
安西:白戸の部屋で白戸と話をしていた。
星野:自室の掃除をしていた。
「アリバイが証明できないのは神崎くんと星野くんか…」
「あ、でも星野が自室にいたのはオレ見てるよ。手つきがとんでもなかった」
「…となると、アリバイがないのは俺だけ、なんだけど…。今のモノクマなら嘘つかないだろ。学級裁判が始まったら、あいつに聞くといいさ」
「……うん」
ピーンポーンパーンポーン…
『うぷぷぷ。ついに来ました最終局面。最後の学級裁判を行いたいと思います。
それでは、ボクは裁判場で待ってるからね。みんなの絶望を想像しながら、ね。うぷぷぷぷ〜!!』
ぷつり。
「時間切れ…の、ようだな」
「あーもう、なんでいっつもいっつもタイミングが悪すぎるんだよー!!」
「モノクマも必死…なんだろうか」
「さぁ、な。だけど…罪を犯してない人間を裁くのは駄目だよ。俺は…最後まであいつと戦う。そして…散ってやるさ」
「神崎くん?」
「早く行こうよ。みんなきっと待ってる」
5度目の学級裁判を知らせる、アナウンス。
神崎くんの言葉が胸に詰まるけど、今はそんなことを思っている暇はない。
羽柴くんを殺した犯人を暴かなければ、みんなが死んでしまう。
だけれど、今回の殺人…。用意したのは、本当にこの中の誰かなのかしら…。
違和感を胸に覚えたまま、私は仲間とともにイチノマチへと足を踏み入れた。